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循環を意識したエンタメって?

秋といえば「芸術の秋」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。現在、東京国際映画祭や上野の森美術館「モネ 連作の情景」など、さまざまな芸術イベントが開催されています。

その中でも映画や舞台などの世界では、セットや小物、衣装などのひとつ一つが、作品を生み出す上で欠かせない存在といえます。そんな芸術に関わるものという観点から、サステナブルな社会を目指すために、どのようなヒントが隠れているのかを一緒に考えてみませんか。

寿命が短い廃棄物

ライトがきらめくブロードウェイ劇場の入口

作られてから捨てられるまでの期間が一番短い産業廃棄物といえば何を思い浮かべますか?
実は、舞台芸術に使われる舞台装置や衣装、小物などはその中の一つとしてあげられます。

SDGsに配慮した舞台美術の製作に注力する舞台美術家・大島広子氏によると、使われた舞台芸術は千秋楽の夜には撤去され、業者によって廃棄されることがほとんどだそう。作品の保管場所や費用、著作権の問題などの観点から、再利用は一部しか使用できないことと、新製品を作った方がより安く制作できるということから、こういった廃棄が生じているようです。

そんな廃棄の道へ進んでしまうことが多い、舞台芸術をサステナブルにするためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか?今回はそんな舞台芸術で行われている、サステナブルな事例を紹介します。

「廃棄」の選択肢を減らすために

劇場内で行われているライブリハーサルの様子

イベント・エンタメ業界の製造→廃棄という一方通行なシステムを、地元で解決できないか、という問いから活動している非営利団体があります。それが英国スコットランドに拠点を置く「Re-Set Scenery」です。彼らの地元であるグラスゴーから、国全体のエンターテインメント業界を「循環」させることを目的に活動しています。

「Re-Set Scenery」は地元にある倉庫で、イベントや舞台装置のレンタルサービスを開始しました。装置を一から製造するとコストがかかりますが、このレンタルサービスを使用することで45%ほど安い価格で購入できます。また、「Re-Set Scenery」はイベント後の会場撤収のサポートもしており、装置やアイテムを再利用、回収、または素材を分解するなど廃棄にならないような工夫をしています。

ほかにも「Re-Set Scenery」では、以下のような環境負荷を意識させる活動にも注力しています(※1)。

  • 次世代のアーティスト育成
    小規模なコミュニティや学校のグループがRe-Set Sceneryの資源を最大限に活用できるよう、工具の使用、建設技術、舞台の基礎などに関するトレーニングを提供する。

  • イベントによって排出されるカーボンの計測
    既存のセットがどれほどのCO2を排出しているかを計算。よりサステナブルな材料調達ができるように支援する。

共同設立者いわく、レンタルサービスの導入前と比較し、舞台美術廃棄量の約70%の削減に貢献しており、業界の常識を変えるような取り組みになっていることが伺えます。

映画やドラマなど世界観を生み出すのに欠かせない舞台芸術ですが、こういった取り組みが現実でもより良い世界を描いてくれるのかもしれません。

また使うからこそ、味が出る

江戸の町のオープンセット

先ほどは英国の例でしたが、日本の映画業界でも循環した舞台セットづくりを行なっています。それが今年4月28日に公開された「せかいのおきく」。

「せかいのおきく」は、江戸末期に生きる人の生活、恋、人生観、生活感を描いた映画です。「サーキュラーエコノミー」や「自然との共生」などのテーマを含んでおり、楽しみながら環境問題に触れることができます。

そんな環境について考えさせる映画は、現場でも環境に配慮した取り組みが行われました。映画の企画・プロデューサー・美術監督である原田満生の指揮のもと、美術セットや小道具、衣装など、舞台に出てくるものは、全て新しいものを使用せずに作られました。
たとえば、主人公が住む長屋のセットは東映京都撮影所にあるオープンセットをリユースして作られています。また、他の建物も新材ではなく、古材が使用されています。

江戸時代の循環型社会を映画の中で描くだけでなく、実際に使われたセットも循環したものを使用することで、映画に込められたメッセージがより伝わってきます。

ここから見えるシグナル

ひとつ一つ新しい舞台セットを作成した方が、作品の雰囲気や世界観を再現するためには簡単といえるかもしれません。しかし、使われた資材の良さを生かしつつ作成することで、新たなものを作るよりも風合いも出て統一感がでるメリットがあると「せかいのおきく」の美術監督の原田氏は語っています。

資源は有限であり、新しく作れば作るほど廃棄物も増えることを考えると、これからは使用済みのセットに価値を見出す、生まれ変わらせることも必要です。今あるものをいかに新たな芸術に昇華させるか、限られた資源の可能性を広げるクリエイティビティが試され、アーティストとしての挑戦にもなるでしょう。

舞台セットのような、一見環境問題やサスティナビリティに関係なさそうに感じるものも、実は地球の環境負荷を減らすヒントが隠されているかもしれません。

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引用:
※1 舞台セットをごみにしない。英国で「循環するエンタメ」を模索する“Re-Set Scenery”

ライター情報:
梶原実乃梨
法政大学 人間環境学部卒。大学では地方創生や農業について研究し、長期インターンではSNS運用を経験。SDGs達成に向けた学生団体で活動。2023年にメンバーズに新卒入社し、プロモーション領域を経験しながら、社内のInstagram運用を担当。

倉岡美亜
早稲田大学 国際教養学部卒。大学ではマイノリティなどについて研究。小学2年生からガールスカウトとして活動。2022年にメンバーズ新卒入社し、社内外のサステナブル推進を担う。

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