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気候変動対策=我慢?

みなさんは気候変動対策に、どんな印象をお持ちですか?「サステナビリティ商品・サービス・キャンペーンはそうでないものに比べコストがかかる」と思っている方や実際に経験された方もいるのではないでしょうか?今回のSignals for futureでは、気候変動に対する日本人の考え方を見つめ、今後の気候変動対策のヒントとなるものを探求していきます。

気候変動対策はネガティブなもの?

日本で気候変動対策の話題が出ると、「節電=我慢」「今の生活がなくなってしまう」といったネガティブな反応になりがちではないでしょうか?

実際に、世界各地から市民が100人ずつ集まる「世界市民会議」の質問の一つに「あなたにとって気候変動対策はどのようなものか」という問いがありました。
世界平均だと「生活の質を高める」と答えた人が3分の2であったのに対し、日本では「生活の質を脅かす」と答えた人が3分の2でした。
一方、「気候変動がどれぐらい深刻な問題だと思うか」という質問に対しては、日本は世界平均よりも「すごく深刻だ」と答えた人が少ないという結果でした。(※1)
日本では、「気候変動問題は大変だが、今の生活を崩したくない」「気候変動対策をして、自分の生活に良いこととして跳ね返ってくる」という保守的思考が気候変動対策をネガティブに捉えさせているのかもしれません。

日本で気候変動対策はネガティブに捉えられていることが、自分事化し積極的にアクションを起こす人が少ない原因の1つなのではないでしょうか。

雷が落ちている様子

なぜ日本人はネガティブにとらえるのか

日本人が世界に比べて気候変動対策をネガティブに捉えている理由は、自分事化できていない、知識が不足しているなど、さまざまだと思います。しかし、取り組みに参加することで生活の質を落してしまう、家計に響く、と思っている面がまだ強いのかもしれません。

電通の実施した第10回「カーボンニュートラルに関する生活者調査」によると、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが必要と感じている人が7割!さらに、カーボンニュートラルのために少し価格が上がった場合も、ファッション・家具・化粧品のカテゴリなどでは価格許容度は7割越えと高い結果が出ました!しかし、生活に直結する医療費・インターネット接続料・通信費などの価格上乗せを許容できると回答した人は6割にとどまりました(※2)。

地球のため、私たちの未来のためとはいえ、やはり家計に影響がでるのは避けたいと思うのが普通でしょう。しかし、そもそも気候変動対策はユーザーや消費者の一方的な支出で賄われるべきなのでしょうか?こういった対策が地球や社会を良くするために使われているのは分かっていても、自分の生活に直接影響しない場合もあります。

では、生活に還元する形にするにはどうしたらよいのでしょうか?「My エコものさし」は1つのヒントになるかもしれません。エコ食材のECアプリ「My エコものさし」は、購入時にスタンプがもらえ、月のスタンプ数が多い人は抽選でエコ食材がもらえる仕組みをつくっています(※3)。少し高いエコ食材を買っても、リターンがあるかもしれないと思うとモチベーションも上がるのではないでしょうか?このようにリターンのある仕組みをつくっている事例が他にもあるのでご紹介します。

お金で悩んでいる男性

報酬はカギとなるか

消費者が環境に負担が少ない購買行動をとればとるほど報酬を得られる仕組みを作ろうとしているのが、カナダのブロックチェーン企業『CarbonX』です。

CarbonXの仕組みは、まずCarbonXがCO2排出権を購入し、それを「CxT」と呼ばれる換金可能なトークン(暗号通貨)へと転換し、小売企業やメーカーなどに販売します。
消費者は、通常の家電製品ではなく、よりエネルギー効率の高い家電製品を購入するなど、環境に負担が少ない商品やサービスを購入することでCxTトークンを手にできます。また、手に入れたCxTトークンはまた別の商品の購入に利用することもできるほか、CarbonX上のプラットフォームで取引もできるし、その他の暗号通貨に交換することも可能です。(※4)

より環境に負担が少ない商品やサービスを購入することで報酬を得られるとなれば、消費者は自ら進んでよりエコな選択をするのではないでしょうか。また、そうした製品がよく売れるようになれば、企業としてもより環境性能の高い製品やサービスを開発する動機につながり双方向に良い結果をもたらします。

オンライン上で取引が行われている様子

ここから見えるシグナル

気候変動対策に取り組もうとすると、自分の生活に制限が必要になったり、よりコストがかかったりすることがあります。そのため、このような対策は「我慢をしなければならない」といった、ネガティブな印象を受けてしまいがちです。

しかしCarbonXのような取り組みは、単に環境負荷が小さい行動を求められるのではなく、行動したことに対して「報酬」という形で成果が得られる仕組みが作られています。
自分の行動したことが可視化され、報酬が得られる仕組みは人々の行動のハードルを下げていると言えるでしょう。

このように、環境負荷を減らす行動に対して我慢よりも報酬(成果)を増やすことで、気候変動対策を今よりもポジティブな印象に変え、社会課題の解決をする人々も増やせるのではないでしょうか。

ユーザや消費者に行動求めるだけではなく、そこに付加価値やリターンをつけることが今後の社会課題解決において重要な視点となってきそうです。

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【引用】
※1 気候変動対策「我慢じゃない」って本当? 日本がネガティブな理由
※2 電通、第10回「カーボンニュートラルに関する生活者調査」を実施 - News(ニュース)
※3 Myエコものさし
※4 気候変動にブロックチェーンで立ち向かう。エコな消費をすると報酬がもらえる「CarbonX」 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

ライター情報:
水戸結衣
日本大学 商学部卒。大学ではマーケティングについて研究。2023年にメンバーズに新卒入社し、サスティナブル推進の一環として社内のインスタグラム運用を担当。
梶原実乃梨
法政大学 人間環境学部卒。大学では地方創生や農業について研究し、長期インターンではSNS運用を経験。SDGs達成に向けた学生団体で活動。2023年にメンバーズに新卒入社し、プロモーション領域を経験しながら、社内のインスタグラム運用を担当。

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