Webサイトも脱炭素化が必要!?「サステナブルWebデザイン」とは
サステナブルWebデザインが必要な理由:CO2排出削減だけでなくユーザビリティー向上にも
エネルギー業界や自動車業界のような、わかりやすくCO2を排出している分野では脱炭素化の動きが加速しています。しかし、一見エコに思えるインターネットの利用も大量のCO2が排出されています。パソコンもスマートフォンもWebサイトを表示するためのサーバーも、すべてにおいて電力が必要となるため、ネット利用での全世界のCO2排出量は、世界のCO2排出量の約2%にあたり、航空業界が生み出すのと同じ割合になるそうです。
デバイスの性能や通信速度が向上するにつれWebサイトやアプリはますますリッチなデザインとなり、情報量が増える一方となっています。そして、そのようなWebサイトやアプリを利用する側の電力消費量や通信量も増大していき、結果として排出されるCO2は増え続けています(かつてはhtmlのみで作成された装飾のないテキストサイトが多数存在していましたが、現代では非常に珍しいものとなりました)。
WebサイトのCO2排出量を減らすには、もちろんデバイスの充電やホスティングサーバーで使用される電力を再生可能エネルギーで賄うことも必要です。しかし、Webサイトそのもののデータの使用量を減らすことでも、CO2排出削減に貢献できます。
さらに、データの使用量を減らすことは、結果としてサイトの表示速度の向上にもつながりユーザビリティー向上に貢献するため、ビジネス目的のWebサイトであればビジネス成果にもつながることが期待できます。単なる「地球に良いこと」ではなく、ユーザーにとっても使いやすいWebサイトを作ることができるのが「サステナブルWebデザイン」なのです。
サステナブルWebデザイン実現のためのポイント
ではどのようにすればCO2排出量が削減できるのでしょうか。基本的には「サイトの軽量化、表示スピードの向上」を意識することが重要となりますが、その際の改善ポイントとしてはいくつかあります。
①UXの向上
ユーザーが目的の情報を得るためにページを行ったり来たりするようなサイトでは、ページローディングのためのデータ通信が発生します。できるだけ画面遷移を少なくしつつユーザーがすぐに目的を達成できるサイトにすることが、ユーザーにとっても使いやすくCO2削減にもつながります。
②画像の軽量化
不要なアイキャッチの掲載や、不適切な画像フォーマット・サイズの掲載はデータ容量増加につながります。圧縮ツールの利用や、トリミング、写真であれば見せたい対象以外の背景等をぼかすなどの加工をすることでファイルサイズの削減が可能です。
③効率的なプログラミング
ポルトガルの研究チームによると、最もエネルギー消費量の少ないプログラミング言語はC、Rust、C++の3つ、最もエネルギー消費量の多いのはPerl、Python、Rubyの3つであり、その言語の使用を吟味する必要があります。また、トラッキングコードや広告スクリプトの取捨選択・コードの圧縮・CMSのページ生成回数を抑えるなどの対策によってデータ通信量の削減につながります。
サステナブルWebデザインの事例
海外のサステナブルWebデザインの事例をご紹介します。
・フォルクスワーゲン社「A more sustainable site for a more sustainable future」
アスキーアートを使って車体を表現している美しいデザインのWebサイトです。画像での表現ではなく文字情報での表現によって軽量化が実現できています。
・イギリスの小売チェーンのJohn Lewis & Partners社「John Lewis & Partners」
グローバルナビゲーションのサブカテゴリー内にすべての下層ページへのリンクを入れ込むことで、ユーザーのページ遷移回数を削減しています。
まずは、自分が関わるWebサイトのCO2排出量を計測することから
ここまでサステナブルWebデザインの手法についてご紹介しましたが、取り組みを始めるうえで、まずはご自身の関わるWebサイトの現状のCO2排出量を計測してみましょう。
今回は、2つの計測ツールをご紹介します。改善の前後で計測することにより、施策によってどれだけの排出量削減に貢献できたのかがわかります。
①https://www.websitecarbon.com
イギリスのWholegrain Digital社が運営するサイトです。
②https://www.carbonneutral-web.org/
一般社団法人 カーボンニュートラルウェブが運営するサイトです。
まとめ:サステナブルWebデザインは単なる軽量化ではなく、Webデザインの新しい挑戦
今回は「サイト制作時におけるCO2排出量削減」についてフォーカスしましたが、ホスティングサーバーを再生可能エネルギーによって稼働しているサーバーにするなど、電力源そのもののクリーン化も併せて行うのが理想的でしょう。
しかし、「Webサイトのデザイン」という小さな行動でもCO2削減に貢献できるということは重要な視点ではないでしょうか。単なる軽量化の話ではなく、いかに魅力的なデザインにしつつも無駄なく適切に情報を伝えるか、という新しい挑戦が「サステナブルWebデザイン」なのだと思います。
よりサステナブルWebデザインについて詳しく知りたい方へ
本記事の執筆にあたって参考にした書籍です。英語版のみですが電子書籍は15ドルで購入可能です。
Tom Greenwood『SUSTAINABLE WEB DESIGN』
株式会社メンバーズでも、自社サイトをサステナブルなサイトに改善するチャレンジをしています。
自社ページのパフォーマンス改善したら脱炭素につながった話
ライター:佐藤静
2016年入社。Webサイト運用ディレクション業務、新卒採用業務を経験し、現在は広報を担当。脱炭素社会の到来に向けたDXとは何か模索中。
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