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企業で温室効果ガス排出量の見える化が進むワケ

日本でも2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)を表明されたことで、企業でも脱炭素に向けた取り組みが進められています。その取り組みの1つとして注目されているのが、「温室効果ガス排出量の見える化」です。

商品の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品・サービスに分かりやすく表示する「カーボンフットプリント」と呼ばれる仕組みを使い、可視化に対応する企業が増えています。

本記事では、カーボンフットプリントの明示を表明する企業やCO2排出量の計測アプリを開発している企業の事例をご紹介します。

企業がカーボンフットプリントを導入するメリット

企業がカーボンフットプリントを導入することで、企業としては以下のようなメリットが考えられます。
・ライフサイクル全体のCO2排出量を算出する過程で、CO2排出量のホットスポットの把握につながる
・本業での真摯な温暖化対策の取り組みをステークホルダーに伝えることができる
・消費者の環境意識が高まる中で、カーボンフットプリントを導入する企業への信頼感・好感度の向上が期待できる
・カーボンフットプリントに対応していない企業との差別化となる

ゆくゆくは、多くの商品にカーボンフットプリントが標準的に表記され、より少ないCO2排出量に抑えた商品であるかが購入の判断軸になることが期待されますが、他社に先駆けて導入することは企業経営やマーケティングの面でも有効です。

あらゆる企業でカーボンフットプリントの明示が宣言される

すでにカーボンフットプリントの明示を宣言している企業が存在するので、ご紹介します。

事例① 全製品のカーボンフットプリントを算出

ドイツに本社を構える世界最大の総合化学メーカーBASFは、約45,000にも及ぶ全製品のカーボンフットプリント排出量のデータ提供をすると発表しました。

事例② サプライチェーン全体でのCO2排出量削減のため、取引先にカーボンフットプリントの表記を求める
2039年までにサプライチェーン全体でCO2排出量の実質ゼロを目指すユニリーバでは、CO2の排出削減に積極的な企業との取引を優先するため、取引先に対して請求書にカーボンフットプリント排出量の記載を求めています。また、将来的にあらゆる製品にカーボンフットプリントを明示することを発表しています。

事例③日本においては「CFPマーク」の取得する方法も
日本では、事業者がカーボンフットプリントの認証マーク「CFPマーク」の使用を申請し、第3者認証機関により検証され、合格した製品のみが認証マークを使用することが可能です。

2021年6月30日時点で、宣言登録累計数は1,829件、登録企業推計数は日本ハム・味の素・キャノン・富士フイルムなどを含む212社になっています。

企業によるCO2排出量測定アプリやキットの登場

他にも、企業がカーボンフットプリントを算出するアプリやキットを開発しています。

事例① マスターカード:消費者が自身の消費によってどれほどの二酸化炭素が排出されているのかを計算できるアプリを発表

マスターカードは、消費者が購入した特定の商品ではなく、プロダクトやサービスのカテゴリの二酸化炭素排出を計算するアプリを発表しました。正確ではないものの、消費にかかる大まかな二酸化炭素排出量を算出することができ、消費者はその環境インパクトを数値で知ることができるアプリとなっています。

数値化に使われている「Aland Index」と呼ばれる指数は、スウェーデンのフィンテック企業Doconomyが開発したものでAPIとして提供され、マスターカード以外の金融会社もAland Indexを活用した二酸化炭素計算機の提供を始めています。

事例② Allbirds:「カーボンフットプリント算出キット」を開発、公開

スニーカーを中心としたアパレルのD2CブランドのAllbirdsは、「カーボンフットプリント算出キット」を一般公開しています。Allbirdsでも実際にカーボンフットプリントの算出に使っているライフサイクルアセスメント(LCA)ツールやカーボンフットプリントのラベルなどを無償で提供しています。
このキットを用いて、ファッション業界の企業に向けてカーボンフットプリントの表示をすることを積極的に呼びかけています。

また、Allbirdsは競合他社であるアディダスとコラボして、史上初めてカーボンフットプリント(CO2換算排出量)3Kg以下のシューズをつくったこともニュースになりました。

まとめ

カーボンフットプリントの表記を進める企業も増えてきており、リーディングカンパニーがCO2排出量の算出ツールを開発・提供する動きも出始めています。

これまで多くの企業では製品を作って販売して終わりという性質があったように思いますが、カーボンフットプリントは製品の廃棄・リサイクルを含めたCO2排出量を算出します。カーボンフットプリント表記の標準化により、廃棄・リサイクルに関しても企業が責任をもち、企業間でいかに低い排出量を実現できるか切磋琢磨されることを期待したいです。

ライター:鈴木萌果
2015年にメンバーズへ新卒入社。ソーシャルメディア運用・広告ディレクション業務を経験し、現在はEMCカンパニーの広報・マーケティングを担当。社内のサービス・取り組みを発信する『EMCライター』という社内唯一の職務をせっせと遂行中!

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