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プラスチック資源循環促進法とは ~施行の背景と私たちが目指す社会~

2022年4月からの施行が予定される「プラスチック資源循環促進法」(以下、プラスチック新法)。持続可能な社会に向けて、欧米諸国を中心に脱プラスチックが進められていますが、我が国の法律施行を理解する上で、日本がどのような戦略にもとづき、将来何を目指しているのかを把握しておく必要があります。プラスチック新法で何が変わるのか、事業者や生活者に何が求められていくのかをみていきましょう。

日本のプラスチック戦略と目指す社会を知る

日本の目指す社会を知るカギとなるのが、2019年5月に策定された「プラスチック資源循環戦略」 となります。その戦略によれば、今後重要となる施策は、3R(リデュース・リユース・リサイクル)に加え、リニューアブル(再生可能)であり、2035年までに、以下のマイルストーンを掲げています。

◇2025年まで
・リユース・リサイクル可能なデザインに(リユース・リサイクル)

◇2030年まで
・ワンウェイプラスチックを累計25%排出抑制(リデュース)
・容器包装の6割をリユース・リサイクル(リユース・リサイクル)
・再生利用を倍増(再生利用・バイオマスプラスチック)
・バイオマスプラスチックを約200万トン導入(再生利用・バイオマスプラスチック)

◇2035年まで
・使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により、有効利用

そして、これらの取り組みは、気候変動や海洋プラスチックなどの環境問題の解決に加えて、経済成長や雇用創出の他、技術的なイノベーションの創発や生活者のライフスタイルの変革を導くものとすることが戦略として明記されています。

つまり、脱プラスチックを不便で対応に多くのコストが求められるものと捉えるのではなく、制約をイノベーションの源泉とし、ビジネス成果にもつなげようという強い意志を感じとることができます。

2020年7月からスタートしたレジ袋の有料化は、この重点戦略に基づくものと言えるでしょう。レジ袋の有料化はCO2排出量削減の観点からその効果は決して大きくはありませんが、海洋プラスチックゴミ問題やマイクロプラスチックの存在を私たち生活者の意識に根付かせた功績は大きいと言えます。

さらに、日本政府が掲げた、2050年を目標とするカーボンニュートラルに加え、2019年のG20サミットで共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」(2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す)の達成にも貢献するものであることを忘れてはなりません。

社会変革をもたらすサーキュラーエコノミー浸透のためのプラスチック新法

では、2022年4月から施行されるプラスチック新法とはどのような意義を持つのでしょうか?

プラスチック新法の狙いは、プラスチック資源の循環を促すことで、資源の使用を抑え、廃棄を削減し、持続可能な社会をつくること。そして、資源の循環を促すことで、経済成長やイノベーション創出などのビジネス成果に加え、私たちのライフスタイルの変革をもたらそうとしていることは、まさに「プラスチック資源循環戦略」の一環である施策と言えます。

そして、プラスチック新法には、サーキュラーエコノミーのコンセプトが基本となっていることがその意義として挙げられます。

従来のリサイクル法(家電リサイクル法、小型家電リサイクル法、建設リサイクル法、自動車リサイクル法、パソコンリサイクル法など)は、それぞれの製品を対象に使用済み製品の回収やリサイクルを行うことが求められています。

しかし、プラスチック新法では、設計・製造、販売・提供、排出・回収・リサイクルといった、プラスチック製品のライフサイクル全体に対して措置を講じることを掲げている点が、従来のリサイクル法とは異なるポイントとなります。それはまさに、サーキュラーエコノミーの考え方と合致していると言っていいでしょう。

プラスチック新法で事業者が求められること

プラスチック新法では、国が定めた「プラスチック製の特定商品」を提供する「特定事業者」に「使用の合理化」が求められています。ここからは、スーパーやコンビニなどの小売業、レストランやカフェなどの飲食業、ホテル、クリーニング店などの特定事業者に、何の商品に対してどのような対応が求められているのか、そのポイントをお伝えします。

◇プラスチック製の特定商品とは?
12品目:フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、くし、剃刀、シャワー用キャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣類用カバー

◇特定事業者とは?(上記特定商品の年間使用量5トン以上)
商品・飲食料品小売業、無店舗小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業、洗濯業

◇使用の合理化とは?
・生活者に有償で提供する
・生活者に要・不要の意思確認を行う。
・生活者が不要とした場合、ポイント還元などを行う
・生活者が繰り返し使うことができる商品を提供する
・生活者に繰り返し使うよう促す
・生活者に環境配慮、持続可能な商品を提供する
・生活者に商品やサービスに適したサイズの商品を提供する

これらの取り組みが著しく不十分であったり、多くのプラスチックを提供する事業者に対しては、主務大臣による勧告、公表、命令が行われることになります。

プラスチック新法で私たちの行動も問われる

国連環境計画の調査によれば、現在、世界で生産されるプラスチックの量は約4億トン。その36%が包装などのパッケージとして使用され、生産されたプラスチックの実に8割近くが地中へと埋められています。

また、日本人一人当たりのプラスチックゴミの廃棄量はアメリカに次ぐ世界第2位で、その量は、年間で32kgにもなるそうです。

SDGsでは、「つくる責任つかう責任」が目標12として掲げられています。企業・生活者共にこれからは、「つくる・つかう」に加えて、販売・提供する、回収する、廃棄する、そして、サーキュラーする責任が問われることになるでしょう。

日本国内では80%を超えるリサイクル率と言われるプラスチック。しかし、その半数以上は燃やすことによって発生した熱やエネルギーを回収する「サーマル・リサイクル」とされています。しかし、サーマル・リサイクルは欧米ではリサイクルとして認められていないのが実態です。

リユースやリサイクル、リニューアブルを進めることはもちろん重要ですが、今求められるのは、サーキュラーエコノミーの推進と、プラスチックの利用をできるだけ抑えるリデュースの取り組みであると言えます。私たちの意識やライフスタイルに変化を起こすことで、私たちに商品を提供する企業をも動かすことを信じて。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月よりメンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長を務める。

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