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「たくさんの”ひとり”が力を合わせることで世界は変わる」 チェンジ・ザ・ワールド:Social Good Company #66

メンバーズでは、2018年よりこれまで、Social Goodな企業や団体などを対象に、社会課題解決型のビジネスや取り組みを紹介するインタビューコンテンツを発信しています。今後は、noteコンテンツとして掲載しますので、よろしくお願いします。

過去のインタビューコンテンツはこちらをご覧ください。
https://blog.members.co.jp/article/tag/social-good-company       また、定期的に発行している冊子のPDF版無料ダウンロードおよび、一部冊子の購入(オンデマンド出版)も可能です。
●PDF版 無料ダウンロード
●オンデマンド出版購入(実費をご負担いただきます)

2050年のカーボンニュートラル社会の実現には、国だけではなく、全ての企業や個人が一体となって、エネルギーや社会システムの転換を図る必要があります。そうした中、個人でもわずかな金額で手軽に再生可能エネルギーの普及に参加できるシステムを提供するチェンジ・ザ・ワールドにインタビューの機会をいただきました。

・事業スタートのきっかけは、東日本大震災により顕在化したエネルギー問題の解決
・事業の成長は、社会の環境価値への興味・関心が高まっていることの証
・脱炭素社会に向けて、荒唐無稽と思われても、高い目標を掲げて進める

チェンジ・ザ・ワールド

<インタビューにご協力いただいた方>
株式会社チェンジ・ザ・ワールド
取締役 CTO 玉置 龍範 氏

<プロフィール>
東京都出身。ジュピターショップチャンネル株式会社にてコールセンターシステムのアーキテクトを担当。2006年に株式会社シェアリングスをチェンジ・ザ・ワールド 現代表取締役 池田と共同創業、その後アプリカティブ株式会社を設立。2016年チェンジ・ザ・ワールドに参画。取締役CTOとして社内システムの開発指揮を執る。

主な事業の紹介からお願いします。

当社は2014年に創業し、太陽光発電所の販売がメインの事業です。「CHANGE(チェンジ)」というWebサービスで、太陽光発電所を1wから、誰でも簡単にスマホで購入、投資できるサービスを提供しています。販売する電力は、自社の太陽光発電所でつくったり、他社から調達をしています。

個人で太陽光パネルを設置するには多額の投資を必要とします。しかし、個人のお客さまがわずかな金額から小口投資できるのが特徴になっています。すでに、「CHANGE(チェンジ)」のお客さまは1万名を超え、総販売額は10億円を突破しました。

「CHANGE(チェンジ)」へ投資するお客さまの投資金額は、数万円から数千万円まで様々です。しかし、数万円のお客さまにとっては、あまり投資という意識はないのではないかと感じています。環境への貢献に参加したいという気持ちで購入いただいているお客さまも多いのではないでしょうか。

●会社のミッションに、“より良いカタチに「世界を変える」”とあり、ビジョンの中で、「グリーンエネルギーの発展」を掲げています。世界を変える手段として、エネルギーを掲げる理由は何ですか?

2011年の東日本大震災が、エネルギー問題を考えるきっかけになりました。自然災害の多い日本では、災害時に不安の残る発電方式や国外からの輸入に頼る化石燃料への偏重は大きなリスクになると感じたのです。電子力や火力発電を減らし、太陽光での発電量をもっと増やす必要があると考え、創業当初から、グリーンエネルギーの発展をビジョンに盛り込んでいます。

世の中を変える手段は他にもありますが、軸がぶれないようにグリーンエネルギーを中心に据えています。

●他の先進国と比べ、日本には、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を増やす上で、太陽光発電はパネルを設置する土地が不足しているといった報道も目にします。実態はいかがですか?

日本は平地が少なく、新しい土地を確保するのは難しいと言えます。しかし、日本には、多くの耕作放棄地があります。そういう意味では、太陽光発電所を設置するポテンシャルは高いのではないでしょうか。

2~3年もの間放棄された土地は、農業用地として回復させるまで10年を要する場合もあります。それを解決し、農業を持続可能なものとする方法として、ソーラーシェアリングという仕組みが活用できます。ソーラーシェアリングとは農地に太陽光発電設備等の発電設備を設置し、農業と発電事業を同時に行うことです。

農業の担い手が不足し放棄されている農地と、農業に関わりたいという若者とをマッチングさせ、ソーラーシェアリングにより、地域活性化に貢献できると考えていますし、すでに多くの雇用が生まれています。


●東日本大震災以降、国内でも固定価格買取制度が整備され、再エネの電源量も増え、最近では、2050年の脱炭素目標も掲げられました。現在の状況をどのように捉えていますか?

将来の目標達成に向けて、太陽光発電などの再エネは今後も増やす必要があります。しかし、日本政府として、どう増やすのか明確な道筋はなかなか見えてきません。

こうした中、海外では、環境貢献への価値を数値化したり、クレジット化してやりとりされていますし、これからもその流れは大きくなるでしょう。企業に置き換えると、こうした取り組みを行っているかどうかが投資対象としての判断基準になるでしょう。今はその転換期にあります。

そして、それを実現するのが、2021年7月からサービスを開始した「グリーンワット」です。1口 500円から購入できる太陽光発電所で、購入した発電所の発電量やCO2排出削減量に応じた環境貢献度が「環境価値」として購入者に還元されます。いつでも購入額と同額で売却が可能ですが、売電収入は発生しません。

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チェンジ・ザ・ワールド Webサイトより

固定価格買取制度の買取価格低下により、再エネ設備建設のペースは年々減少傾向にあります。 再エネの普及を更に進めるためには、新たな打ち手が必要です。多くの個人が力を合わせることで世界を変えることができると信じています。

●CHANGE(チェンジ)のように、「グリーンワット」の購入による金銭的なリターンはありませんね。

「グリーンワット」購入者には、発電量やCO2削減量に応じた環境貢献度を数値化したものをクレジットとして提供しています。現在は、金銭的な価値はありません。

従来、環境価値をクレジット化し取引するには、多くの再エネ設備による発電が必要になります。現在は取引できる規模までには至っていませんが、小規模発電所のクレジットとして拾い上げることで、たくさんの“ひとり”の力でクレジットの価値を拡げていきたいと思います。

クレジットの量が増えれば、取引可能な規模になり、将来は経済的な価値を生む可能性があると信じて進めています。

●7月の発売開始後、「グリーンワット」は、即完売しています。なぜここまで反響が大きかったのでしょう?

現時点では金銭的なリターンはありませんので、クレジットへの将来性や、環境価値への興味や関心が高まっていることの証と言えます。

CHANGE(チェンジ)のサービスを開始して、4年が経過していますが、これまでのお客さまとの信頼関係を築くことができています。手軽に参加できる仕組みを提供し、既存のお客さまに共感をいただき、購入いただいていることも要因の1つと言えるでしょう。

「グリーンワット」のお客さまのほとんどは、CHANGE(チェンジ)のお客さまで占められています。CHANGE(チェンジ)も投資商品とは言っても、もともとエネルギー問題や地球環境にある程度関心を持っている層と考えていますが、さらなる環境価値貢献へのアクションの受け皿として受け入れられているのだと思います。

●事業を開始した時期と比べて、お客さまの意識の変化を感じることはありますか?

販売当初からこれまで、お子さまがいらっしゃる方から「子どもの名義で買えるのか?」、中学生や高校生の方から「自分も買えるのか?」といったお問い合わせを一定数いただいています。

また、お客さまとの信頼関係の構築を重視していますので、全ての問い合わせに真摯に対応しています。対応させていただく中で、お客さまに応援していただいていることをとても実感しています。

●お客さまとのそうした関係性を築くことができているのは、どのようなことが要因と考えますか?

事業そのものが地球環境に貢献していること、そして、その内容を信頼していただいているからだと考えています。太陽光発電システムにトラブルがあった際にも、自らが透明性の高い情報を積極的に発信することを重視しています。

また、お客さまとの距離を縮める努力をしています。そうしたことが積み重なった結果だと思います。

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●お客さまとの距離を縮める努力とは、具体的にどのようなことですか?

不定期ではありますが、一定量の電力に投資していただいているロイヤルカスタマーのお客さま 「キロワッターズ」の皆さんに対して、ソーラーシェアリングにより収穫した農作物をプレゼントしています。

私たちは、創業当初から、「ひとり1kW運動」をスローガンとして掲げています。日本の全国民が、ひとり1kwhの電力を持つことになれば、国内の原発分の電力は全てカバーできることになります。

そうした背景から、1kwh以上の電力に投資いただいているお客さまを 「キロワッターズ」として組織化し、コミュニケーションを深めています。

●最後に、将来の脱炭素社会に向けて、目指す社会とメッセージをお願いします。

世界の主要国が温室効果ガスの削減目標を掲げていますが、このままでは、将来のカーボンニュートラル社会や1.5度目標の達成は難しいと言われています。

私たちは、将来のカーボンニュートラル社会実現に向け、必要な電力をできるだけ多く提供したいと考えています。そのためには、現在のサービスを拡大し、世界展開を果たし、お客さまを世界中に増やしたいと考えています。

これからも「CHANGE(チェンジ)」と「グリーンワット」の認知度を高め、ひとりでも多くの人が環境アクションに参加できるプラットフォームを目指していきたいと思います。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月よりメンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長を務める。

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