「患者さまの満足を第一に考えること、それが使命である」 エーザイ:Social Good Company #71
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「患者さまの満足を第一に考えること、それが使命である」 エーザイ:Social Good Company #71

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メンバーズでは、2018年よりこれまで、Social Goodな企業や団体などを対象に、社会課題解決型のビジネスや取り組みを紹介するインタビューコンテンツを発信しています。今後は、noteコンテンツとして掲載しますので、よろしくお願いします。

過去のインタビューコンテンツはこちらをご覧ください。
https://blog.members.co.jp/article/tag/social-good-company       また、定期的に発行している冊子のPDF版無料ダウンロードおよび、一部冊子の購入(オンデマンド出版)も可能です。
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いち早くパーパス経営を実践し、社会課題の解決と企業価値創造の両立に取り組む、日本を代表する製薬会社「エーザイ」。脱炭素社会の実現にも、野心的目標を掲げ積極的に取り組んでいます。なぜ社会課題の解決に注力するのか?その原動力は何か?エーザイのお二人にインタビューの機会をいただきました。

・患者さまの満足の増大を使命とするヒューマン・ヘルスケア(hhc)活動はビジネスそのものである
・目標時期の先延ばしは何の解決にも繋がらない
・ビジネスは地球環境の持続性が確保されてこそ

エーザイ●TOP

<インタビューにご協力いただいた方々>
エーザイ株式会社
右:サステナビリティ部 部長 德永 文 氏
左:総務・環境安全部 環境・安全・人権グループ グループ長 種村 義信 氏

<プロフィール>
德永氏:
エーザイ入社後、PR・IR業務におけるメディア・投資家との対話を通して経営に興味を持ち、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBA取得。その後、人事で採用、人材育成、ダイバーシティ推進を経て、現在は、医薬品アクセス向上を含むESG、SDGsを推進し企業価値向上をめざす。

種村氏:
エーザイ入社後、岐阜県にある川島工場でビタミンEの製造からキャリアをスタート。その後、本社にて、人事、経営監査、コンプライアンス等を担当し、現在は、環境保全、安全衛生、人権啓発、グループ会社の業務支援等を担当。2040年までのカーボンニュートラル達成に向けて取り組む。

●御社は以前よりパーパス経営を実践していますが、積極的に進める、その原動力は何ですか?

德永氏:私たちが製薬会社として直接やり取りをする相手は、医師や薬剤師、つまり医療関係者です。しかし、私たちが開発した薬を服用されるのは患者さまです。エーザイの顧客である患者さまとそのご家族の満足を第一に考えようという使命を、約30年前に現在のCEO内藤晴夫が定めました。

社員はもちろん株主の皆さまも企業理念を共有することが重要と考え、定款に含めたのは2005年です。患者さまに貢献することを社員全員が共有し、実践しています。

エーザイ株式会社 定款 第2条 より抜粋
本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフット向上に貢献することを企業理念として定め、この企業理念のもとヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業をめざす。
②本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考える。

また、私たちは患者さまと一緒に過ごす時間を「共同化」と呼び大切にしています。患者さまの言葉にならない想いなど、喜怒哀楽を理解し、イノベーション実現につなげようとしているのです。企業理念の全社的な推進を担う知創部が中心となって、そうした活動をヒューマン・ヘルスケア(以下、hhc)活動として世界中で進めています。世界中でこのような活動は600を超えます。お互いのベストプラクティスを発表する場もあり、それぞれの組織で得た「知」を学び、共有する機会としています。これによって、グローバルな知識共有が積極的に推進され、パーパス経営を行う企業文化が醸成されています。

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●hhc活動とパーパス経営が直結する実践例にはどのような取り組みがありますか?

德永氏:主に開発途上国では、衛生状態が悪く、寄生虫や細菌などが原因となって、顧みられない熱帯病と呼ばれる感染症が蔓延しています。感染症により働くこともできず、貧困状態から抜け出せないという状況も生まれています。リンパ系フィラリア症もそうした感染症の一つです。蚊を媒介とし、現在、約5千万人が感染し、感染の恐れがある人は10億人とも言われています。

感染者の足は大きく腫れ上がり、歩くことも難しくなったり、差別の対象となったりすることもあります。以前からいくつかの薬がありましたが、安定的に製造している企業がなく、薬は世界的に不足していました。WHO(世界保健機関)がグローバルな制圧プログラムを開始するにあたり、弊社は、高品質な薬を安定的につくることが製薬会社の役割であると考え、2010年にDEC(ジエチルカルバマジン)錠を無償提供する契約をWHOと締結しました。

しかし、私たちが薬をつくっても、医療環境が整備されていなければ、患者さまに薬は届きません。薬を服用することの重要性が理解されていない地域も世界には多くあります。そこで、2012年に私たちは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団やWHO、米英政府や世界銀行、疾病が蔓延する開発途上国の政府、そして、他製薬会社などと、物流や医薬品供給などで協力する世界的なパートナーシップ「ロンドン宣言」を発表し、顧みられない熱帯病制圧を掲げました。薬を必要とする人に薬が届けられる仕組みを作ることをめざし、日本の製薬会社としては唯一、エーザイが参加しました。

その後、DEC錠についてWHOからの品質保証を受け、2013年に私たちのインドの工場から供給をスタートさせました。今では、29ヵ国に20.5億錠を無償提供しています。

●こうした活動がどう企業価値につながっていると考えていますか?

德永氏:私たちは、こうした取り組みをインプット・アウトプット・アウトカムとして整理しています。つまり、薬の無償提供がどのような結果に繋がるかということですが、我々は長期投資として取り組んでいるのです。疾病をなくすことによって、その地域で働ける人が増え、中間所得層が拡大し、経済も発展します。さらに将来はその国にも医薬品の市場が生まれると考えています。また、こうしたグローバルヘルス分野での取り組みにより、WHOやゲイツ財団などとの新しい協働のネットワークが生まれ、コーポレートブランドの価値向上にも寄与しています。

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エーザイ資料より

インドはリンパ系フィラリア症が蔓延する国の一つです。エーザイの工場周辺の村にも多くの患者さまがいますが、一緒に時を過ごすという「共同化」を実践することで、感染症は遺伝や祟りが原因であると考える患者さまも多いことに気付くことになります。インド工場の社員は、疾病啓発のキャンペーンを行ったり、媒介する蚊が発生しないよう衛生環境の改善などに積極的に関与し、社員のやりがいにもつながっています。結果的に社員の離職率の低下や工場の稼働率向上にも結び付いています。

薬の無償提供を通して患者さまの満足の増大を得ることは、将来的な医薬品市場につながると考えており、“プライスゼロ“ビジネスと呼んでいます。

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インドでのリンパ系フィラリア症患者さまとの交流

●企業理念の社員への浸透で他に実践されていることはありますか?

德永氏:常に経営層が率先して企業理念の実現に取り組むこと、そしてその重要性を語りかけていることが挙げられます。コロナ禍において、患者さまと共に時間を過ごす機会は減ってしまいました。このような状況下、CEO自らがhhc理念の創発からその実現の足跡などを冊子にまとめ、社員に配布しています。

こうしたパーパス経営は株主の皆さまからも理解を得ています。22億錠の無償提供を決めた時も株主からは温かい拍手で迎えていただきました。このようにステークホルダーの方々ともパーパスを共有できていると実感しています。社会貢献ではなく、ビジネスとして取り組むマインドセットが重要であると実感しています。

●脱炭素や再生可能エネルギー(以下、再エネ)導入も積極的に進めています。製薬会社として取り組む意義は何ですか?

種村氏:気候変動問題は科学的にも解明され、世界的にも解決すべき重要な課題です。また、これまでお伝えしている企業理念に加え、私たちは、持続可能な経済成長と社会的課題の解決に資する事業活動を展開する、という企業行動憲章を定めています。その憲章の一つに、地球環境の保護を重視した事業活動を行い、環境保全に努めることを掲げています。また環境に対しては、2021年4月に環境方針を刷新しました。

また、現在進行中の中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においては、患者さまだけでなく一般生活者の皆さまを含めた方々へ医薬品やソリューションをお届けし、その憂慮を取り除くことをめざしています。すなわち、私たちはより多くの方々に貢献していくことが求められています。これらのことから、カーボンニュートラル宣言やRE100目標を掲げることは当然の流れと言えます。そして、社会的課題の解決を企業として取り組むことは重要なことですので、積極的に取り組んでいます。高い目標を掲げ、達成していくことで、社会からの信頼を得ることが企業価値の向上に繋がると考えています。

日本政府は2050年のカーボンニュートラル宣言を行いましたが、私たちはもっと早くその目標を達成できないかを議論してきました。その結果、2030年 再エネ使用率100%、2040年 カーボンニュートラル達成を中長期目標として設定しています。

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●製薬には大量の蒸気を必要とし、それには化石燃料由来のエネルギーが求められると聞いています。そうした課題はどのようにお考えですか?

種村氏:未だその課題は解決されていません。しかし、課題のために目標時期を先延ばししても何の解決にもなりません。課題を解決しようという意志をもって取り組むことが重要です。近い将来、技術の進歩により、そうした課題も解決されているでしょう。

●日本政府の再エネ導入も前倒しで進めて欲しいですね

種村氏:全くその通りです。自社で再エネ電源を確保するには限界があります。大手の電力会社にもっと多くの再エネのメニューを提供していただく必要があり、経済界全体で積極的に進めていくことが必要です。気候変動対応に積極的な国や地域では、私たちの工場も、すでに再エネ100%を達成していますので、国の政策はとても重要です。

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インド バイザッグ工場 電力調達先

●最後に、将来のカーボンニュートラル社会に向けてメッセージをお願いします。

種村氏:すでに120以上の国と地域が、2050年のカーボンニュートラルを目標として掲げています。達成するのは簡単ではありませんが、あらゆる手段により達成するものと確信しています。将来の新しい社会に向けて、夢や希望を持って取り組むことが重要であると考えています。

德永氏:私たちはパーパス経営を掲げ、患者さまの満足を最も重視しています。地球環境の持続性なしに、ビジネスや企業活動はできません。製薬業界は、環境負荷のインパクトが大きな産業ではありません。しかし、私たちはこの危機を自分事として捉え、これからも積極的に取り組み、自らが掲げる目標を達成したいと考えています。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月よりメンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長を務める。

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