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サステナビリティ業務のExcel利用やめませんか?

サステナブル・脱炭素推進業務におけるデータの収集・分析は、脱炭素経営において最も重要な業務の一つです。

その一方で、知識の専門性が求められるが故に業務が属人的になったり、常に新しいデータ項目の収集に追われてしまうといった課題をお持ちの方も多いのではないでしょうか。特にScope3算定やLCAの算定といった集計業務は、Excelを使用している企業も多く、そういった悩みに陥りやすい傾向にあります。

今回は、サステナビリティ業務におけるExcel集計の問題点をはじめ、業務が複雑化・属人化してしまう状況を解決するための有効なツールとしてノーコード・ローコードシステムについてお話ししましたので、その内容をダイジェスト版としてnoteにお届けします。



登壇者のご紹介

株式会社メンバーズ Rapid Scaleカンパニー社長
木村 壮介(以下、木村)

​​約20年のエンジニア経験を経て、2023年にローコード・ノーコード開発に特化した伴走支援を行うカンパニーをメンバーズ内で設立。
アジャイルやUX/UIデザインにコミットメントが高く、内製開発に必要な継続的な改善プロセスとともに、よりよい開発体制づくりを目指して活動中。

株式会社メンバーズ 執行役員
原 裕(以下、原)

1984年アメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社に入社、外資系広告代理店を経て1999年よりデジタル・マーケティング支援会社メンバーズ(2005年より執行役員)において、大手企業のデジタル・マーケティング支援を行なっている。
現在は脱炭素DX業務で企業の脱炭素化を推進中。

サステナビリティ業務に求められる「はかる」「集める」

:そもそも、サステナビリティ関連業務にはなぜDXが求められているのでしょうか。ここで参考になるのが、2022年の「伊藤レポート3.0」を基に作成された、経済産業省の「サステナビリティ関連データの効率的な収集及び戦略的活用に関する報告書(中間整理)」です。

サステナビリティ経営の重要性
経済産業省「サステナビリティ関連データの効率的収集と戦略的活用に関するワーキング・グループ 中間整理」(2024年7月18日)

こちらのレポートでは気候変動や人権問題など、事業環境が急速に変化する状況の中で、企業はサステナビリティへの対応を経営に織り込み、企業価値を向上していくことが重要だと述べています。つまり、今後は従来のCSR部門のような慈善活動とは異なり、サステナビリティの取り組みを「義務」から「ビジネスの機会・リスク」として捉え、「SX(Sustainabirity Transformation)経営」にしていくことが求められているということです。その流れで、欧州を中心に規制や情報開示が進み、企業のSX化が顕著に進んでいる傾向があります。

このように、環境データを把握してリスク要因として捉えたり、あるいは ビジネスの機会として活用することが経営において重要だということが説かれている中で、今回の中間整理報告書では企業のサステナビリティ業務の中でも関連データの「はかる」や「集める」について主な課題が5つ取り上げられています。

サステナブル関連データの「はかる」「集める」に関する主な課題
1. 連結子会社(海外拠点を含む)からのデータ収集における課題
2. バリューチェーンに関するデータ収集における課題
3. 収集ツール(ITシステム等)の未整備
4. 業務プロセスの未確立
5. 人材不足

サステナビリティ関連データの「収集」に関する課題と対応の方向性
経済産業省「サステナビリティ関連データの効率的収集と戦略的活用に関するワーキング・グループ 中間整理」(2024年7月18日)

サプライチェーンやバリューチェーンにおけるデータ収集は多くの企業において課題となっていますが、最近では温室効果ガス排出量のような気候変動に関わる情報だけではなく、生物多様性や人権問題への開示要求も高まっています。そのように、収集するべきデータが多く、かつ複雑になっている中で、企業の取り組みを表明していくには、効率的に正確なデータを収集する必要があります。

今回は、上記のサステナビリティ業務の「はかる」「集める」における主な課題のうち、3番目に挙げられている「収集ツール(ITシステム等)の未整備」の課題をトピックにお話ししていきたいと思います。

具体的な課題として「Excel中心の非効率的な収集」と「一元的なITシステムが未整備」と挙げられていますが、企業の方でもExcelファイルを関係者に共有し、設けられた項目にデータを入力している方が多いのではないでしょうか。この方法は、大きなコストをかけずに対応できる一方で、以下のような課題があります。

▼ サステナブル関連データ収集におけるExcel使用の課題

  • データの一貫性と正確性の欠如
    Excelでは、データ入力の際に人為的なミスが生じやすく、これがデータの一貫性と正確性を損なう原因となります。

  • スケーラビリティの問題
    大規模なデータセットや多数のユーザーが同時にデータにアクセスする場合、Excelはそのようなニーズに対応するのに適していない可能性があります。

  • データ共有とコラボレーションの難しさ
    Excekフィアイルをメールで送信したり、ネットワークドライブに保存したりすることは、バージョン管理やアクセス権限の管理が難しくなり、効率的な共同作業を妨げます。

  • セキュリティとバックアップの問題
    ファイルベースのアプローチでは、データのセキュリティやバックアップが不十分になるリスクがあります。

  • 分析機能の限界
    Excelでは、高度な統計分析やデータビジュアライゼーションが必要な場合、機能的な限界に直面することがあります。

上記に5つあげていますが、関係者数やデータ項目の規模が拡大し複雑化していくにつれ、よりこのような課題が生じるリスクが大きくなってしまいます。また、収集した数値を改善していくために分析を行うことが重要な一方で、Excel単体では自由度や簡易化に制限があり、高度なレポーティングには限界があります。

そういったExcel単体では難しいデータの収集やレポート化のような課題を解決する手法としてローコード・ノーコード開発というものがあります。今回はメンバーズでも専門にサービスを提供しているRapidScaleのカンパニー長である木村さんにお話を伺っていきます。

ローコード・ノーコード開発とは?

:ローコード・ノーコード開発といえば、難しいプログラムを組まずに開発でき、非常に注目を浴びているシステムかと思います。詳しく教えていただけますか?

木村:おっしゃる通りで、少ないコーディングでアプリケーション開発ができる環境や手法のことです。従来の開発手法はプロコード開発と呼ばれ、専門的な知識が必要でした。一方、ローコード・ノーコード開発は少ないコーディングでアプリケーション開発ができるため、市民開発がしやすいという特徴があります。今回のように特定の業務に活用したい際に非常に向いているツールになるかと思います。

:一言で表すと「安くて早く業務改善ができ、みんなで使えますよ」ということですね。できることに限りはありそうですが、Excel業務の効率化はここから行うといいんでしょうね。

木村:ローコード・ノーコード開発といっても実際には市民開発向けのものからプロユース向けのものまで、様々なツールがあります。今回のようにExcel業務を効率化するためのツールとしてはMicrosoft Power AppsやGoogle App Scriptのような市民開発向けのものを活用するのが良いと思います。

サステナビリティ業務におけるローコード・ノーコード開発の活用

木村:実際に簡易的な例を以下に載せています。拠点ごとに部品情報を管理するExcelをPower Appsでアプリケーション化した場合です。このように、入力や編集もアプリケーションにアップし、リアルタイムで集計することができます。

:グローバル企業がサステナビリティ関連データを収集する際、膨大なデータに対してチェック項目が400〜500あることもあります。それを100箇所以上の拠点に連携し、現場にチェックしてもらっているという現状です。そういったファイルのやり取りをアプリケーション化するとなると、通常であれば相当な時間やお金がかかりますね。

木村:そうですね。しかし、ローコード・ノーコード開発を使えばゼロから動きを設定する必要がなく、比較的短時間で作成できるため、結果的にコストも抑えられます。また、お客様と業務要件の整理をしながらインターフェースで開発をしていくことで、その後の運用もすごく楽になるとのお声もいただいています。例えばパートナーが増えるなど、軽微な追加修正が必要になった際に、事業部さんの方で簡単に対応できるということです。

今後の動向や活用のメリットとは?

:もう少し深掘りしてお聞きしていきたいと思います。まず、ローコード・ノーコード開発といったシステムは今後も普及していくと思いますか?

木村:今後もどんどん活用する人が増加すると思います。プロコード開発が減るというよりは、どちらかというとローコード・ノーコード開発が普及することで、そういったシステムやアプリケーションを活用する人が増えていくため、母数が増えていく印象です。

:感覚的な意見ですが、一般業務の人でもExcelが使えるなら簡単に開発できますよね。

木村:インターフェース上にあるいろんな要素を紐付けていくイメージなので、ビジュアルで分かりやすく試しやすいといったこともあると思います。

:データの安全性におけるメリットは大きいですか?

木村:Excelなど、システムを介さずに複数で一つのファイルを操作すると問題が起きることも多いと思います。関数が崩れてしまうと原因を探さないといけないし、バージョン管理や権限の付与など、データの安全性が担保されているとは言えないのではないでしょうか。その点では、ファイルを複数で開く必要のないアプリケーションを開発してしまった方が安全だと言えます。

:運用面ではいかがでしょうか。

木村:アプリケーションは作って終わりではなく、業務の改善とともにうまく活用することが重要です。分かりやすく、安全性の高いローコード・ノーコード開発なら、簡単な改善であれば充分事業部側で対応することができます。特に日々流動し、複雑化しているサステナビリティ業務においては、メリットが大きいのではないでしょうか。

:今回は企業がSX経営を求められる背景から、サステナビリティ関連データにおける「はかる」「集める」の課題、特にExcelを使用する問題点を取り上げました。また、サステナビリティ業務を効率化する上で効果的な、ローコード・ノーコード開発についてご紹介しました。

サステナビリティ経営や脱炭素経営におけるデータ活用、ローコード・ノーコード開発を中心にお悩みをお持ちの方やもっと知りたい方は以下のURLよりご相談ください。

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ライター情報:小塚蓉子
株式会社メンバーズCSV本部所属。大学ではアメリカ文化を中心に映画史を研究。2023年メンバーズに新卒入社。現在、脱炭素DX研究所メンバーとして、脱炭素DXの推進やマーケティングに携わる。


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