「“脱炭素DX”でピンチをチャンスに」 メンバーズ書籍出版特別インタビュー
noteアカウント「Members+」を運営する株式会社メンバーズから、2021年9月30日に書籍『脱炭素DX すべてのDXは脱炭素社会実現のために』を出版しました。おかげさまで、発売以来Amazonの「企業経営一般関連書籍」カテゴリや大型書店の週間総合ランキングで1位を獲得するなど、多くの方に手に取っていただいています。
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本記事では、株式会社メンバーズ EMCカンパニー カンパニー社長である西澤直樹に、なぜ脱炭素化に取り組む必要があるのか・書籍のテーマである「脱炭素DX」とは何か・どのような書籍であるのかを取材しました。
-近頃、「脱炭素」という言葉を頻繁に聞くようになりました。なぜ注目されているのでしょうか?
西澤:ニュースなどでも取り上げられる機会が増えましたね。特に2020年の冬以降、「脱炭素」は注目ワードになっています。GoogleTrendsで検索ボリュームを見ると、その注目度は明らかです。
脱炭素化に向けた取り組みが求められるのは、脱炭素化が「地球温暖化」をこれ以上進めないための重要なアクションだからです。
「脱炭素社会とは何か?」「なぜ2050年までに実質ゼロにすべきか?」「世界の動向」については、noteの記事で詳しくご紹介しています。
脱炭素社会とはなにか?なぜ2050年までに実現すべきか?>
日本は、2050年までに脱炭素社会を実現すると宣言しましたが、2018年度時点では12億4000万トンの温室効果ガスが排出されており、達成するためには政府だけではなく企業や生活者が意識改革し取り組むことが不可欠なんです。
-企業は脱炭素化に対して、どのように捉えているのでしょうか?
西澤:日本でも炭素税が導入されればコスト増大、積極的に脱炭素化に取り組まないことに対する消費者からのネガティブイメージ、投資家のESG視点による企業評価やダイベストメント(投資撤退)対象となるなど、さまざまなリスクが見込まれます。また、2022年4月の東京証券取引所の市場再編により、新たに誕生する「プライム市場」では、上場企業へ気候変動に対する企業の取り組みや情報の開示が求められることも相まって、直ちに取り組むべき経営課題と捉えられています。
ただ、本音の部分として、脱炭素化は設備投資など多くのコストを要するものであり、CSR(企業の社会的責任)の一環やSDGsへの対応として、渋々取り組まなくてはならないことと捉えている企業も少なくないです。
けれど、メンバーズでは企業が脱炭素化に取り組むことはコストではなく、むしろビジネス機会になりうると考えています。
-なぜビジネス機会といえるのでしょうか?
西澤:それは、既に欧米の諸企業が脱炭素化への対応を新しいビジネス機会と捉え、投資を強化する先進的な取り組みが少しずつ結実しており、炭素排出量の削減と経済成長を実現する「デカップリング・モデル」の事例が散見されているからです。企業のみならず、アメリカのバイデン政権により「グリーン・ニューディール※」とよばれる政策が大規模に推進され、注目を集めています。
※自然エネルギーや地球温暖化対策に公共投資することで、新たな雇用や経済成長を生み出そうとする政策
実際に、下記のグラフを見ていただくと、欧米諸国のGDP(赤線)は伸び、CO2の排出量(緑線)は減少する分離現象が起きていることが分かると思います。日本は残念ながら、GDPも伸び悩み、CO2排出量も削減できていない状況です。
デカップリング・モデルのKPIとして、「炭素生産性」という考え方があります。GDPや企業・産業が生み出す付加価値をCO2排出量で割った数値のことで、この数値が増えるほど良いとされています。
-炭素生産性を高めるためには、どうしたらいいのでしょうか?
西澤:炭素生産性を高める方法として、メンバーズが有効だと考えるのが「脱炭素DX」です。今回出版した書籍タイトルにもなっているワードですが、「企業がDXを通じて持続可能なビジネス成長と脱炭素社会創造を同時に実現すること」と我々は定義をしています。
DX推進により、業務プロセス・企業と顧客の関係性・ビジネスモデルを変革することで、脱炭素化と企業の持続的な成長を同時実現することが可能です。
また、メンバーズでは、デカップリング・モデルや炭素生産性の考え方に共感・賛同いただいている国内大手上場企業の経営層の方々と「ゼロカーボンマーケティング研究会」を発足し、セミナーやディスカッションを通じて、どうしたら脱炭素と企業の持続的な成長が両立できるのか日々議論しています。
現在進行形の研究のため、確実な答えを明示する段階に至っていませんが、研究会を通じて生まれた議論や事例などをもとに「企業はなぜ脱炭素DXに取り組むのか、どのように取り組むべきなのか」を書籍内でまとめていますので、お役立ていただける嬉しいです。
ー書籍では、具体的にどんな内容を掲載していますか?
西澤:以下の6章構成でまとめています。
第1章では、本記事でもご紹介した「脱炭素化」に取り組むべき理由を丁寧に解説します。第3章では、トヨタ・味の素・ANAが実施したDXを推進するための意識改革と、炭素生産性を高める7つの要素をご紹介します。そして、第6章では経済学の専門家であり当社のアドバイザリーも務める京都大学院 諸富 徹教授に特別寄稿いただきました。
【目次】
第1章/先進企業がこぞって「脱炭素化」するワケ
第2章/これからの生活者に選ばれるには
第3章/「脱炭素DX」でピンチをチャンスに
第4章/一挙公開! 3社の取り組み事例
第5章/あなたの企業の存在意義は?
第6章/変貌するキャピタリズム(京都大学大学院 諸富 徹 教授 特別寄稿)書籍の詳細はこちら>
ー最後に、デジタルビジネス支援事業を行うメンバーズが、なぜここまで脱炭素化に注力するのか教えてください。
西澤:確かに企業のデジタルマーケティングをご支援するメンバーズが、なぜ脱炭素に取り組むのか不思議に感じている方もいらっしゃると思います。しかし、脱炭素化に取り組む理由は明快で、「人が住めなくなった地球には企業も社会も経済も存在できないから」です。
十数年前に、当社は短期的な利益追求の結果、大口顧客を失い倒産の危機に直面しました。その経験から、経営の羅針盤を「いま」ではなく「未来」に向け、持続可能な企業になるためにCSV経営への大転換を行いました。
メンバーズ自身、多くの炭素を排出するビジネスモデルではないですが、自分たちができることからやっていこうと、2030年の目指す姿を示した「VISION2030」にて、本業を通じて社会課題解決(特に気候変動問題・人口減少問題)に貢献することを発表しました。
その後、再エネ100宣言RE Action、気候変動リーダーズパートナーシップ(JCLP)へ加盟し、自分たちで太陽光発電をする会社「メンバーズエナジー」も設立しています。また、社員が使う電力や事業で使う電力をオフセットする取り組みをはじめ、今年の6月には再エネ100%を達成しました。
あわせて、我々が支援している企業さまと共に脱炭素社会の実現を行っていくために、企業活動と炭素排出削減、生活者への利便性の3つを両立させるCSV事例の創出や、先ほどご紹介した「ゼロカーボンマーケティング研究会」の活動、京都大学院の諸富 徹教授とアドバイザリー契約を結び、実践と理論の両輪から脱炭素化に向けて取り組んでいます。
そして、多くの企業が賛同者となり脱炭素DXを推進することで、カーボンニュートラルな社会を実現させ、人々が心豊かな暮らしを送ることができる脱炭素社会の創造を目指しています。
ー欧米諸国のようなデカップリング・モデルを実現させるべく、メンバーズが国内企業へ「脱炭素DX」にまつわる積極的な情報提供やご支援をしていきたいですね。西澤さん、ありがとうございました。
当社の脱炭素DXに関する考え方・取り組みを取材いただきました。あわせてご覧ください。
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