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各国の再生可能エネルギー比率は?日本は20%、再エネ比率65%以上の国も

2015年に採択されたパリ協定によって、世界各国が脱炭素化へと舵を切りました。脱炭素化を進める上で、地球温暖化の原因となっている化石燃料から脱却し、再生可能エネルギーを活用することは、重要な取り組みの一つとなっています。

脱炭素化に向けた取り組みとして、

①温室効果ガス(以下、GHG)の排出量削減
②エネルギー消費量の削減
③どうしても出てしまうGHGについては排出量に見合った削減活動への投資(カーボンオフセット

が、世界的に求められています。再生可能エネルギーはこのうち、①のGHGの排出量削減に関わる施策です。

では、各国は2021年現在、どの程度の比率で再生可能エネルギーを活用しているのでしょうか。また、脱炭素化に向けた再生可能エネルギー活用に関して、日本はどのような現状にあるのでしょうか。

再生可能エネルギーの活用割合

そもそも、世界の発電電力量については、石炭火力が最も高い割合を占めています。水力、バイオエネルギー、地熱、太陽光、風力をあわせた再生可能エネルギーは、2015年頃からシェアを伸ばして、天然ガスと同等の規模となっています。

しかし全体的に見ると、まだまだ再生可能エネルギーの割合は大きくありません。それは、再生可能エネルギーが伸びるスピードよりも、各国の電力消費自体が伸びるスピードが大きく上回っているためです。1990年代以降、先進国に加えて新興国の経済が成長し始め、世界的にエネルギーのニーズが高まっていきました。その結果、石炭火力と再生可能エネルギー、そして天然ガスがいずれも伸びを見せて、結果的としてGHG排出量が増え続けてきた実情があります。

2019年時点で、世界の発電電力量については石炭火力が36.4%、再生可能エネルギーが26.0%、原子力が10.4%となっています。

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再生可能エネルギーの活用割合は、国際エネルギー機関(IEA)が月次データを算出しています。これをもとに2019年の電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を示したのが以下の表です。

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カナダやスウェーデン、デンマークでは、すでに65%以上の電力を再生可能エネルギーでまかなっています。これに対し、日本の再生可能エネルギー活用は20%程度にとどまっています。近年、脱炭素化への動きが活発な中国でも27%、アメリカにいたっては日本より低い18%となっています。

他方で、チリやアイルランドでは電力消費量の40%前後に再生エネルギーが活用され、イギリスやフランスなどをしのぐ高さとなっています。このように、発電量や電力消費量が多く、技術開発の進んでいる先進国だからといって、再生可能エネルギーの活用が進んでいるとは限らないのが現状です。

全体としては、政策的な後押しもあり、欧州各国が比較的高い割合で再生可能エネルギーを活用できていると言えるでしょう。

しかし、再生可能エネルギーのうち太陽光発電の活用割合は、日本が世界的に見て高い割合となっています。実際、IEAの太陽光発電システム研究協力プログラムが2020年に発表した報告書では、日本の太陽光発電による人口1人あたりの発電量はドイツ、オーストラリアに次ぐ3位です。また、2019年の太陽光発電システム年間導入量および累積導入量でも、中米印に次ぐ4位となっています。

このことから、再生可能エネルギーの活用全体では、世界的に見て割合は高くないものの、太陽光発電に関しては世界トップクラスにあることがわかります。なお、これに加えて日本の脱炭素化には、火力発電からの脱却に伴う洋上風力発電の技術開発が重要だとの指摘もあります。

再生可能エネルギー活用に向けて世界はどう変化しているのか

では、世界はどのように再生可能エネルギーの活用に向けて変化しているのでしょうか。2018年にインペリアル・カレッジ・ロンドンなどが共同発表したレポートから見てみましょう。

このレポートでは、2008年から2017年の脱炭素化に向けたエネルギー利用の推移が報告されています。人口1人あたりの再生可能エネルギーによる発電量の増加量を比較してみると、再生可能エネルギーによる発電量では、日本がアメリカや中国よりも増加しています。ここから、日本で再生可能エネルギーの活用が着実に進んでいることがわかります。

しかし、二酸化炭素の排出量で比較すると、異なる状況が見えてきます。EU諸国やアメリカ、中国では脱炭素化が大きく進んでいる一方、韓国、ブラジル、インド、日本、インドネシアといった国々ではエネルギー消費量あたりの二酸化炭素の排出量がむしろ増加しています。世界的に見ると、日本は脱炭素化には遅れをとっているのです。

日本の脱炭素化には課題が山積しています。マサチューセッツ工科大学(MIT)傘下のメディア企業が運営するMIT Technology Reviewが発表した、Green Future Indexというランキングでは、北欧とヨーロッパが上位を占める中、日本は総合ランクで76カ国中60位で、

「2050年までにカーボンニュートラルになることを約束した日本は、エネルギー移行のために控えめな目標を設定しています。再生可能エネルギーの目標は、2030年までに総発電量のわずか24%です。」

と、目標設定の低さを指摘されています。また個別の指標を見てみると、産業・経済規模に対する炭素排出量の低さこそ11位ですが、再生可能エネルギーへの転換は58位、社会のエネルギー効率化と国土の緑化は48位、クリーンエネルギーに関するイノベーションは63位、そして気候政策は55位と、軒並み低い評価となっています。

まとめ

以上で見てきたように、世界的に見て、日本は再生可能エネルギーの活用割合がまださほど大きくありません。また、脱炭素化にはエネルギー転換や社会のエネルギー効率化と国土の緑化、クリーンエネルギーに関するイノベーション、そして気候政策と複数の課題を抱えています。他方で、太陽光発電の導入が世界的に見て進んでいることや、火力発電からの脱却に伴う洋上風力発電の技術開発といった可能性もうかがえます。

ライター:徳安慧一
早稲田大学文学部卒業後、一橋大学大学院社会学研究科にて修士号・博士号を取得。専門は社会調査・ジェンダー研究。

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