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サステナビリティ業務におけるAI活用の可能性

サステナブル・脱炭素推進業務におけるデータの収集・分析は脱炭素経営において最も重要な業務の一つです。
その一方で、知識の専門性が求められるが故に属人的になったり、また、常に新しいデータ項目の収集に追われてしまうといった課題をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

今回は脱炭素経営とAI活用の観点をもつ有識者とともに、サステナブル・脱炭素推進業務における、AI(含む生成AI)活用の可能性についてお話しましたので、その内容をダイジェスト版としてnoteにてお届けします。

登壇者のご紹介
株式会社メンバーズ顧問 生成AI/ChatGPT研究家
池田 朋弘氏(以下、池田氏)

株式会社メンバーズ AI Reachカンパニー社長
秋元 幸太郎(以下、秋元)

株式会社メンバーズ 執行役員
原 裕(以下、原)

▼セミナー動画


脱炭素・サステナビリティ分野におけるAI活用のトレンドとは?

原:脱炭素化が加速するなか、企業では環境やサプライヤーについての情報を収集、分析、レポーティングし、ビジネスに活用しなければならなくなっています。

しかし、サステナビリティ関連の業務が多岐にわたる、業務が複雑化している、 専門的になり属人化している、など苦労されているという声もうかがいます。

そこで、AIの出番かと思っているのですが、最近ではどのように活用をされているのでしょうか?

池田:文章・メール・画像・動画などの非構造化データ、いわゆる生データはこれまでの技術やツールでは整理がしづらく、定量化するために人間の手が入り、手間がかかっていました。

しかし、生成AIを活用することで、計測しやすい変換を人間と同じレベルで実施可能であり、自動化・半自動化できるため、計測・可視化の文脈では有意義だと思います。

原:実際にお客さまからはどのようなご要望があるのでしょうか?

秋元:かなり二極化していますね。業務に組み込みたいお客さまもいれば、AIの知見がなくて会社としてどう利用するか判断がつかない、というお客さまもいます。ただし、だんだんと前者が増えているとは感じています。

2024年4月にOpen AIから日本語に特化したGP-4の公開もあったように、今後は企業単位で利用し、特定の用途にあわせて使うという動きが加速すると考えています。

原:使う使わないの議論より、どう使っていくかが重要になっているのですね。
ちなみに、Open AIの日本語版が公開された背景として何があるのでしょうか?

池田:「日本語版」の生成AIというよりは、「日本語にチューニングした」生成AIというほうが正しいかもしれません。日本語の出力精度や対応精度が高いカスタムモデルという感じかと思います。

また、日本語は言語としても特殊ですが、日本のChatGPTのユーザーも人口に対して多く、GDP4位と市場規模があるため、「特化してやる価値がある」「需要は高まる」という期待もあるのだと思います。

原:日本経済の見通しが明るくないなか、よく日本市場に投資していただいたなと思います(笑)
私たちもこういったツールをきちんと活用していくことが、経済成長の切り口となりそうですね。

擬人化されたAIが虫眼鏡で何かを覗き込む画像

AIに対する誤解

原:AIに関する池田さんへの相談内容というのは変わってきていますか?

池田:使い方が分からないのでまずは研修などで使い方を知りたい、という相談が多いですね。業界や業務のどこで適応するかはまだ迷われている企業が担当者が多いですし、どのツールで何ができるか、というのを理解している人もまだ少ない印象です。

ただ、一言で「AIを使う」といっても、計測系のAI、認識系のAI、生成AIなど特性の異なるAIがあります。また、AIだけではなく、NLPやRPAもあるなかで、なんとなく「生成AIで全部できそう」という期待があるんですよね。

例えば、生成AIを導入した企業から私に相談が来た場合、まずやりたいことのリストを作っていただきます。そうすると、55個くらい案が出るのですが、実際にできそうなことは10個くらいで、あとは生成AIは関係なかったりします(笑)

しかし、生成AIだけを活用しなければならないわけではなく、メンバーズで支援したベネッセ様の事例のように、業務フローを整理することで、生成AIやその他のツールも利用して業務効率化することがポイントなのかと思います。改善したい内容に対し、AIとAIでないものも含め、どのツールを利用するかを適切に判断して利用できると付加価値がさらに高まるのではないかと思います。

▼ベネッセの事例

原:生成AIならなんでもできる、と思われている節はありますよね(笑)前からある「AI」の認知度を上げたのはChatGPTを始めとした生成AIですが、生成AIの土台にAIがあることに対する理解はまだ浅いかもしれないですね。

池田:生成AIも活用方法がいろいろあり、例えば、メール返信におけるRPA(※)から見た利用方法だけでも3つあります。どこでどう生成AIを適用するか分け、かつ他のツールの活用を検討したうえで、業務効率化「何でAIを活用するか」の判断能力は求められそうです。

※RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)…人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組みです。

日本RPA協会より http://rpa-japan.com
RPAにおける生成AI活用を表すイラスト
RPAにおける生成AI活用

秋元:確かにそうですね。AI Reach カンパニーでも相談を受け、仕分けるという作業を行っています。一方で、自然言語で使える生成AIによってみんな同じスタートラインに立てるようになり、AI活用のアイデアがたくさん出るのは良いことだと思っています。
仕分けをし活用していくなかで、ナレッジが積み重なり、AIをどこで活用するべきか分かってくるとは思うので、今はイマジネーションを広げていくことが必要な段階なのかなと思っています。

AIについてのよくある疑問

原:生成AIを利用するうえで、セキュリティを気にされる企業も多いですが、どう思われますか?

池田:一定の規模の企業であったらセキュリティは必須です。多くの企業がMicrosoftのAzure上で導入してますが、GPTにこだわらなければAWS(アマゾン ウェブ サービス)やGoogle上で利用しても問題ないと思います。つまり、これまで使用していたセキュリティの高いクラウドサービスの範囲でAIを利用すれば、実装コストも抑えられますし、セキュリティもなんとかなります。

しかし、AIも間違えることがあります。そこで、企業では今、RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)の導入が流行っています。社内情報しかインプットされていないAIだと知らない情報があるので、検索結果の情報も取り入れることで、より正確な回答を出すことができます。このように、RAGを利用することで、AIの問題を解消する動きも現れています。

RAGの仕組みを表した図
RAGの仕組み

また、AIに対する期待値を高めすぎたり広めすぎたりすると、必要なデータも大きくなってしまうので、利用しづらく、AIの精度が落ちる可能性があります。そのため、限定してあげたほうが、利用しやすく、精度も高まります。

秋元:結局、AIの万能感が先行してしまっているんですよね。AIなので、当然100%というのはありません。

しかし、用途にあわせて考える必要はあると思います。例えば、精度が50%のAIでもフォローの仕組みができており、コストカットや属人化解消という目的が達成できているのであれば、問題ないと思います。もちろん、精度が高いほうがいいですが、AIは万能ではなく、あくまでも道具なので。

今後のAI活用

原:2024年にOpen AIの日本オフィスが開設されるなど、生成AIに関する動向も様々ありますが、池田さんはこの1〜2年でどうなっていくと思われますか?

池田:まず、企業でAIを利用する人が増えるかと思います。そして、利用する層は3層に分かれていると考えています。
1つ目は、エクセルのようにChatGPTなどのツールとしてAIを利用する層。
2つ目は、特定の業務プロセスの中で仕組みに組み込む層。
3つ目は、お客さまのサービスにAIを活用していくという層です。
今回の脱炭素DXのソリューションは、2つ目の人手が必要だった業務プロセスを自動化・半自動化するという文脈かと思います。そして、AI利用に対する動きは加速するかと思います。

AIを利用する層の予想図
AIを利用する層の予想

AI×LCA算定

原&秋元より:
冒頭でもあったように、サステナビリティや脱炭素の推進は業務が多岐にわたり、システムの変化の対応や属人化など、課題が多いかと思います。

弊社の「LCA算定AIシステム」では、LCA実施における課題を解決すべく、生成AIを活用し、スピードアップ&低コストを実現します。特に、作業効率が悪い「原単位選定・計算」及び、それ以降のタスクに対して生成AIを活用することで、大幅な時間短縮につながり、結果的にLCAのイベントリ分析において作業工数を約6割削減することができます。

AI活用におけるロードマップのイメージ図
AI活用におけるロードマップのイメージ

💡AIを活用するメリット

  • 工数削減によるスピードアップ

  • 複数の算定対象の工数削減によるコストダウン効果

  • 属人化の解消や精度の向上

▼サービスリリース

詳細についてご興味のある方は、ぜひお問い合せください。

▼お問い合わせ

ライター情報:
倉岡美亜
早稲田大学 国際教養学部卒。大学ではマイノリティなどについて研究。小学2年生からガールスカウトとして活動。2022年に株式会社メンバーズに新卒入社し、社内外のサステナブル推進を担う。

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