生まれ変わる野菜たち
未来の兆しとなる事例を紹介する「Signals for future」シリーズ。
第1弾である「循環する食とは?」に続き、今回は「野菜」という切り口で事例と未来の兆しをご紹介!野菜は料理だけでなく、実はファッションや代替製品、燃料など、循環経済や脱炭素の実現に貢献するポテンシャルを持っていることを知っていますか?
ファッションブランド×菌糸
皆さんも一度は耳にしたことがある、ラグジュアリーブランドの「バレンシアガ」。そんな世界的にも有名なブランドが、なんとキノコの菌糸から作られるマッシュルームレザー「エッファ」を用いたマキシフーデッドコートを発売しました!なんと、お値段は143万9900円で、全世界23点の限定もの(※1)。値段や数も驚きの「エッファ」ですが、すごいのはマッシュルームレザーの弱点を克服したことです!
キノコ類の菌糸をもとに作られたマッシュルームレザーは、皮革の代替素材として世界中で開発が進んでいますが、マッシュルームレザーは乾燥すると硬くなり亀裂が入るという課題がありました。そのため、マッシュルームレザーの多くが「石油由来の合成物質」を加えて柔軟性を出しています。加えて、生産で欠かせない菌糸体の品質を一定に保つのが困難という課題もありました(※1)。
そんななか「バレンシアガ」は独自の発酵プロセスによって、色や厚みなどが均一のマッシュルームレザー「エッファ」の開発に成功!さらに、レザーの品質を上げただけでなく、毒性の物質を使用せず、農産工業残留物を活用するなど、非常にエシカルな過程で生産しています(※1)。
ファッションの潮流を生み出すラグジュアリーブランドが、「サステナブル」を価値として見いだし商品の開発・販売を行うことは、ほかのブランドにも大きな影響を与えることでしょう。
代替プラパッケージ×野菜の皮
スープ、揚げ物、カレーなどあらゆる料理に使われ、なくてはならない食材である玉ねぎ。しかし、そんな人気食材だからこそ、皮や根などの廃棄物も多いのは知っていましたか?
皮もベジブロスに使う方もいらっしゃるかもしれませんが、文部科学省によると玉ねぎひとつに対して約6%が廃棄されます(※2)。たとえばイギリスでは、1年間で66,000トンもの玉ねぎの廃棄物が発生しており、約40億円の処理費用がかかっているそうです(※3)!
そんな玉ねぎの廃棄問題を解決するアイデアを生み出したのが、テキスタイルデザイナーのRenuka Ramanujamさん。彼女はオランダ語で「玉ねぎの皮」を意味する「HUID」と名付けたプラスチックパッケージの代替品を開発しました。
「HUID」は玉ねぎの皮を煮て、その後、乳製品の廃棄物に由来する接着剤で結合させることで完成します。つまり、100%自然由来であり、土に還る素材。そのため、「玉ねぎを育てる→食べる→皮からパッケージをつくる→使ったら堆肥化する→堆肥で玉ねぎを育てる」という循環サイクルの中に商品が組み込まれているのです!また、HUIDの生産に伴う副産物は、織物の染料や栄養野菜ストックのベースとして地域で再利用するなど、地球や地域に還元する商品・ビジネスモデルともなっています。
エネルギー×食品廃棄物
料理の時間を短縮したいとき、ちょっとだけ野菜がほしいとき、皆さんもお世話になったことがあるだろうカット野菜。利便性の高さから年々需要が伸びていますが、生産の増加とともに廃棄物も増加しています。
大和川食産は、根菜類、特にごぼうの加工・販売を中心に手がけ、業績を伸ばしている企業。しかし、業績を伸ばしている反面、「食品残さ」の増加が課題になっていました。それもそのはず、1日約40〜50トンの野菜を加工しており、そのうちの皮やヘタの部分である約25%、つまり約10トンが食品残さが出ていました(※4)。
はじめは、家畜用の飼料としてリサイクルしていたものの、食品残さの増加で処理費用もかさんだため、エンジンメーカー大手でもあり、畜産や食品系廃棄物から発生するバイオガスを用いたコージェネレーションシステムの開発に取り組む「ヤンマー」と協力し、バイオガス発電に踏み切りました(※4)。
結果として、廃棄物の処理費が10分の1、売電収入が年間1250万円に!そして現在は、発酵後の発酵残さを有機肥料として、野菜の栽培に活用する試みも進めています。
大和川食産の社長が「良いものは、みんなで分かち合いたいですから」という言葉からも、こういった価値観や姿勢が食品残さという課題解決や利益創出になったことはこの事例から知れることでしょう。環境問題に個人、企業、国というひとつの単位だけでなく、共創や共有など、一緒に課題に取り組もうとする姿勢は、企業としてのあるべき姿を見せてくれるようです。
ここから見えるシグナル
実は、上記の事例が掲載されていた記事で「脱炭素」というワードが共通して見られました。また、商品開発者・エネルギー生産者はそろって環境配慮型の商品開発・ビジネスにしようと努力していることが伺えました。
自然のものから、最小限の資源でCO2排出量も環境負荷が少ない衣類を作り出せるのであれば…
野菜の余りを利用する商品から地域での循環を生み出せるのなら…
お金を払って処理をしていたものをエネルギーという新たなモノやお金に変えられるのなら…
近年はサステナブルなモノ・サービスを求める一般消費者の声が強くなっていますが、商品は高額だったり、商品のバリエーションが限られていたりなど、需要とミスマッチな側面もあるのが現実です。しかし、企業側も環境配慮型ビジネス・商品への転換の重要性や、環境問題への共感が高まっています。
ゆえに、将来的にはますます環境に対する消費者や生産者の需要と供給がマッチしていき、脱炭素社会、循環経済の実現に貢献するでしょう。
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