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【イベントレポ】ゴミを出さない、顧客が楽しめるイベントモデルを考える

近年、長期的な持続可能性を追求するため、企業や政府はリニアエコノミー(直線経済)からサーキュラーエコノミー(循環経済)へ転換させ、環境への負荷を低減しようという動いています。従来のリニアエコノミーでは「生産・消費・廃棄」という直線的なプロセスに基づいており、廃棄も多く発生しますが、サーキュラーエコノミーでは循環的なアプローチを追求し、素材や製品を経済システムに投入する最初の段階から廃棄や汚染が出ない設計を行い、それらをできる限り高い価値を維持したまま循環させ続けることにより自然の再生を目指しています。

しかし、これまでリニアエコノミーに慣れ親しんできた企業・消費者にとって、サーキュラーエコノミーへの転換は簡単なことではありません。「製品の耐久性を高めるための複合素材の接合がリサイクル可能性を下げてしまう」「経済合理性を担保することの難しさ」など、さまざまな課題があります。これらの課題を解決し、サーキュラーエコノミーを実現するためには、既存の考え方にとらわれない、新しい発想や創造性が求められます。そこで役立つのがサーキュラーデザインアイデア創出ツール「Circularity DECK(サーキュラリティデッキ)*1」です。

*1 Circularity DECK の特徴
それぞれのカードにはサーキュラーエコノミーの原則をもとにした5つの資源戦略と3つの階層をかけあわせたアイデアや視点、事例が書かれており、資源調達から製造、利用、回収、再資源化まで一貫した循環型ビジネスモデルとシステムの創出をサポートしてくれる作りになっています。メーカーや小売業、金融など業界を問わず、新規事業開発や社内研修などで活用されています。詳細はこちらからご確認ください。

サーキュラーエコノミー実現のためのツール「Circularity DECK」とは?

Circularity DECKは、オランダ・マートリヒト大学で開発されたツールで、サーキュラーエコノミーの原則をもとにした5つの資源戦略と3つの階層をかけあわせたアイデアや視点、事例が書かれています。企業はこのデッキを使うことで、自身のビジネスモデルを評価し、持続可能性の観点から改善するための具体的なアクションを見つけることができます。

今回は、このCircularity DECKを活用して創造的な循環型ビジネスモデルを短時間で発案する「サーキュラーデザインワークショップ」を開催しましたので、その模様をレポートします!

「次世代型のサステナブルなイベント」を51の切り口から考える

今回のワークショップでは、「次世代型のサステナブルなイベント」をテーマに、参加者は3つのグループに分かれ、「ゴミを出さない、顧客が楽しめるイベントモデル」を考えました。

まず、参加者は机の上に用意された「Narrow」「Slow」「Close」「Regenerate」「Inform」に分かれたカードの理解を深めていきます。カードに書かれた循環を考えるうえでのポイントと下部に書いてある事例を読み、自分たちの身の回りに似たような事例はないか、グループごとに話し合いました。はじめは、参加者の中には「自分の考えやアイデアがどのカードに結びつくのかわからない」といった声もありましたが、参加者同士で意見を交換し、事例を共有していくうちに、徐々にイメージが明確になっていったようです。

続いて、実際に開催されたイベントの先行事例を、Circularity DECKを用いて分析しました。今回、事例として紹介したのは、アムステルダムの音楽フェス「DGTL(デジタル)*2」。「家で寝て過ごすよりサステナブル」が合言葉のこのフェスでは、参加者はもちろん、イベント運営におけるパートナーたちや企業、行政も巻き込み、環境負荷と廃棄を限りなく抑えることで、サーキュラーエコノミーの実現を目指しています。たとえば、DGTLではデポジットのハードカップでのドリンク提供や細かな分別や食事の残飯を集約するリサイクルハブの設置、再生可能エネルギーでインフラを整えるなど、多くの施策が考案されています。グループワークでは、これらの施策がどのカードに当てはまるのかを考え、どのような観点で仕組みが作られているのか考えました。

先行事例を分析した後は、グループごとにテーマを決め、どのような内容のイベントにするかを考えました。そして、5つの資源戦略・3つの原則、51の戦術が書かれたカードの観点をもとにサステナブルなイベントで活用できるアイデアを次々と出していきます。
「再生可能エネルギーでの運営の実現可能性は?」「なるべく環境に負荷がかからないようにするためにはどんな来場方法がよいか?」など、日常ではあまり考えないような視点でディスカッションを展開していきました。

あるグループの模造紙

こちらのグループでは「環境負荷を減らすため、移動手段としては電車を利用してほしい」といった願いから“都心で開催するサステナブルなフードフェス”を設定し、アイデア出しを行いました。参加者は、現在のフードフェスにおけるさまざまな課題を挙げ、それに替わるアイデアを出していきます。「Narrow」や「Close」といった観点から、現在は使い捨てが多いカトラリーの素材や耐久性について考え直したり、「Slow」の「製品をサービスとして提供する」一例として、フェスで出品した料理をオンラインでの定期便としてサービス化し、ファンを生み出す、といったアイデアも生まれました。

「資源を循環させるだけでいうと、すべてのカードを使い切るくらい意外とアイデアが出てくる…!」といった声もありました。そんななかで課題として挙がったのが「どう儲けるか」です。サーキュラーエコノミーというと、どうしても「サーキュラー(循環)」の部分に注目してしまいがちですが、「エコノミー(経済)」も忘れてはなりません。地球を良くしながら利益を出し、そのなかでどう消費者を巻き込んでいけるのかがカギとなります。

あるグループのディスカッションの様子

さいごに、ディスカッションを得て3つに分かれた各グループから、それぞれのアイデアブレストを経て辿り着いたアイデアを発表。「夏祭り」「フードフェス」「島での物産展」など、同じ“イベント”というテーマでも、グループごとに異なった次世代型の「サステナブルなイベント」が提案されました。

グループごとの発表の様子

*2 参考
“ごみゼロ”を達成したアムステルダムの音楽フェスが描く「循環型都市」の設計図
https://wired.jp/article/dgtl-2022-sustainability/

サーキュラーデザインワークショップを振り返って

今回のワークショップを体験した参加者からは、「アイデアを考える時の視点を知れて良かった」「新たな価値ある取組をはじめるにあたり、アイデア出しにすごく活かせそう」といった意見のほか、「実際に持続可能エネルギーやサステナブルなプロダクトを利用するとなった時にコストがどれくらい掛かるかの知見が無いため、難しいと感じた」といった持続可能性と経済成長や収益性のバランスをとることの難しさを語る声もあがりました。

新しいアイデアやビジネスモデルをゲーム感覚で生み出せるCircularity DECK。サーキュラーエコノミー実現に向けた施策のチェックリストとして機能することも実感できるはずです。

気になる方は、下記よりぜひお気軽にお問い合わせください!

ライター:齋藤 由莉
2023年メンバーズ新卒入社。
大学ではマーケティングや経営について学ぶ。入社後はデータ領域を経験し、現在は企業のBtoBマーケティングを担当している。循環経済ラボでも活動中。

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