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サーキュラーエコノミー実現ツール「サーキュラリティデッキ」とは?

近年、持続可能性の重要性がますます高まり、企業や政府はリニア経済からサーキュラーエコノミーへの移行を模索しています。この移行は、資源の有効活用、廃棄物の削減、環境への負荷の軽減などを通じて、経済的な繁栄と環境保護を両立させることを目指しています。

しかし、これまでリニア経済に慣れ親しんできた企業・消費者が、サーキュラーエコノミーに転換することは簡単なことではありません。 
サーキュラーエコノミー先進国である欧州連合でも、サーキュラーエコノミーへの移行が大きな課題となっており、そのための具体的なツール開発が求められてきました。

この課題に取り組むため、マートリヒト大学サステナビリティ研究所の研究チームが循環型ビジネスモデルのイノベーションに関する研究に従事するJan Konietzko(ヤン・コニエツコ)教授が開発したツールが登場しました。その名も、「Circularity DECK(サーキュラリティデッキ)」です。

Circularity DECKは、企業がサーキュラーエコノミーへのシフトを実現するための革新的なツールです。このデッキは、企業の持続可能性に関する戦略的な意思決定を支援し、循環型ビジネスモデルの導入や実践に役立つ手法や手順を提供します。

Circularity DECKは、ビジネスプロフェッショナルや経営者によって使用されることを想定しています。デッキには、サーキュラーエコノミーの原則や戦略に関する情報が含まれており、それらを実践するためのフレームワークやツールが提供されています。企業は自身のビジネスモデルを評価し、持続可能性の観点から改善するための具体的なアクションを見つけることができます。

特長

「Circularity DECK」は、サーキュラーエコノミーの原則を理解し、企業内での共通理解や言語化、サーキュラーエコノミーに向けた新しいアイデアや取り組むべきアクションを特定するフレームワークをカードデッキにしたものです。

1. 学術的裏打ち

マーストリヒト大学・持続可能性研究所ヤン・コニエツコ教授が2年の月日を重ねて開発
数百の企業を分析し開発したメソドロジーを基礎に開発

2. シンプル化、体系化、構造化されたカード・ツール

EU/欧州研究会議(ERC)が資金提供する野心的な研究プロジェクトにも採用
5戦略×3原則=51戦術にシンプル化、体系化、構造化されている汎用性ツール

3. 時間軸、ビジネス規模軸を加えた分析手法

AsIs(現在)、AsIs+(手の届く現実像)、ToBe(近未来)軸での51戦術
市場ニーズやビジネス可能性を踏まえたアイデアの見える化に便利

4. ワークショップを通じた意識改革とアイデア源泉

ワークショップを通じて参加者の意識改革を図れるツール
社内で埋没しがちなアイデアを発掘できるツール

概要

デッキは5つの資源戦略と3つの階層をかけ合わせた、51枚のカードで構成されています。

Circularity Deck構成

たとえば、「Slow(よりゆっくり使い延命させる)× BusinessModel層」で構成されるデッキは、次のようなものがあります。

Slow x BusinessModel 1:既製品や部品の再利用化を目指す
Slow x BusinessModel 2:ユーザーによる製品の保守・修理を可能とする
Slow x BusinessModel 3:無条件の生涯保証を提供する
Slow x BusinessModel 4:不要な購入を控えるよう促す
Slow x BusinessModel 5:保守・修理をサービスとして提供する
Slow x BusinessModel 6:既製品や部品の別用途利用を目指す
Slow x BusinessModel 7:アップグレードやお直しを提供する
Slow x BusinessModel 8:製品をサービスとして提供する

Slow×BusinessModelで構成される8枚のデッキを見渡せば、従来のリニア経済型ビジネスモデルからサーキュラーエコノミー型へと意識改革する上でのヒントに気づくことでしょう。

「ユーザーによる製品の保守・修理を可能とする」という戦術について説明してみましょう。たとえばスマホが壊れても、パーツを買ってきて自分で直せるならもっと長く使えるという視点です。これは「修理する権利」として呼ばれ、EUでは2021年3月から修理する権利(Right to repair)に関する規則が履行され、アメリカでも2021年7月、FTC(連邦取引委員会)はメーカーや販売者に対して「修理方法に制限を課すことがないように」とのステートメントを発表しています。

このようなサーキュラーエコノミー先進国の事例・規制を網羅的に体系化し、5つの資源戦略と3つの階層で構成されている51枚のデッキは、サーキュラーエコノミーへ移行していくために便利なツールといえます。

自社が持つプロダクトやビジネスモデルを見直し、「より少なく使うには?」、「より閉じた環境で使うには?」、「データを活用したら?」と、各デッキの施策を照らし合わせることで、比較的容易に新しい移行アイデアを生み出すことができるでしょう。

さらに注目なのがエコシステム。業種・業界規模、サプライチェーン単位、近接地域全体など、企業の枠を超えた連携がサーキュラーエコノミーには必要となってきていますが、その部分に着目したアイデアを生みだすこともできます。

サーキュラリティデッキを用いたワークショップ

このサーキュラリティデッキを使ったワークショップは、さまざまなバリエーションで利用できます。

【テーマ例】
すでにある商品のサーキュラーエコノミーモデルを考える
すでにあるビジネスモデルのサーキュラーエコノミー化を検討する
サーキュラーエコノミーを前提にした新規事業モデルを考える
Scope123の削減に必要なアイデアを考える
ごみゼロを目指したサーキュラーエコノミー施策
サステナビリティをテーマにした集客プロモーション施策検討

新しいアイデアやビジネスモデルが生まれる面白いワークショップになることは間違いありません。また、サーキュラーエコノミー実現に向けた施策のチェックリストとしても機能することを実感できるはずです。

次章では、サーキュラリティデッキの5つの戦略についてそれぞれ解説していきます。

*この記事の情報は 2023年5月メンバーズコラム掲載当時のものです。

ライター:数藤雅紀
株式会社メンバーズ 脱炭素DXカンパニー
循環経済&サスティナビリティ推進 ラボ所長
ケンブリッジ大学経営大学院循環経済プログラム修了
Global Compact Network Japan サーキュラーエコノミー分科会共同幹事
もと山一證券。金融・デジタル・DX・循環経済を得意とする。
Note:https://note.com/suto410
Facebook:https://www.facebook.com/Sutoh/

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