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サプライヤーエンゲージメントとScope3削減~CDP評価視点から考える~|脱炭素DX研究所レポート#06

サステナビリティは、現代のビジネスにおいてもはや不可欠な要素であり、取り組まないことがリスクとなるそんな時代が到来しました。企業は、自社の経営活動による環境への影響を最小限に抑えるために、Scope1およびScope2の削減策を実施してきました。しかし、持続可能なビジネスを実現するためには、Scope3の削減とサプライヤーエンゲージメントは欠かせないものであり、むしろ温室効果ガス(以下、GHG)削減の観点やその排出量の割合からも、最も重要な取組みであるといえるでしょう。今回は、Scope3削減とCDP評価の観点からサプライヤーエンゲージメントの重要性についてお伝えします。

Scope3はGHG排出量の大半を占める

Scope3とは、企業の供給チェーンや製品のライフサイクルに関連するGHG排出量のことを指します。全15カテゴリーに区分されるScope3の削減は、企業のサステナビリティ戦略の一環として取り組むべき重要な課題です。通常、企業のScope3排出量は、自社の直接的な活動であるScope1およびScope2の排出量をはるかに上回ります。日経225を対象とした弊社の独自調査でも、GHG排出量全体のうち、実に約91%をScope3が占める結果となりました。

製品のライフサイクル全体を見ると、原材料調達、製造、物流、使用、廃棄などの過程で多くの温室効果ガスが排出され、特にScope3のカテゴリー1、カテゴリー11での排出が突出しています。そして、こうしたGHG排出量を削減することは、企業の環境への貢献を示す重要な指標となり、持続可能なビジネスを実現するための重要なステップとなります。

Scope3削減の重要性

Scope3の削減は、企業の環境への貢献度を示す指標であり、持続可能なビジネスを実現するための重要なステップです。Scope1およびScope2の削減に取り組むことは重要ですが、それだけでは不十分です。企業は、自社の供給チェーン全体で排出される温室効果ガスを削減する必要があります。
Scope3削減は、企業のブランド価値向上や市場競争力の強化にもつながります。消費者は、環境への配慮がある企業を支持する傾向があり、持続可能なビジネスを重視する傾向が強まっています。企業がScope3削減に取り組むことで、環境への貢献度を高め、消費者の信頼を得ることができます。

Scope3削減のためのサプライヤーエンゲージメントの意義

では、Scope3を削減する上での重要な鍵は何か?その答えは、サプライヤーエンゲージメントであるといえます。ここでは改めて、サプライヤーエンゲージメントの定義をお伝えしましょう。サプライヤーエンゲージメントとは、企業のサプライチェーンを形成するさまざまな取引先との良好な関係を構築すること、そして、企業はそれら取引先と協働でサステナビリティに関する共通の目標達成に向けた取組みとなります。

企業のサプライチェーンは、Scope3排出量の主要な源、つまり冒頭でお伝えした通り、企業のGHGの大半を占めており、Scope3の削減なしに、脱炭素社会の実現は困難であると言い切ってよいでしょう。サプライヤーエンゲージメントの具体的な活動には、サプライヤーとの定期的な対話やワークショップ、サプライヤー評価などがあげられます。また、再生可能エネルギーの導入の観点からは、サプライヤーに対する資金面の支援など導入向けた支援メニューの整備が求められます。これらの活動を通じて、企業はサプライヤーとのパートナーシップを築き、協働でサステナブルな目標を達成するための取り組みを進めることができます。

CDPにおけるサプライヤーエンゲージメントの評価

では、なぜ今回のコンテンツのテーマにサプライヤーエンゲージメントを取り上げたのか?それは前述のとおり、サプライチェーン全体で環境保全に取組み、サステナブルな目標達成に向けてステークホルダー同士が協働で取組む必要があることはもちろんですが、CDPの評価ポイントにもサプライヤーエンゲージメントが明記されていることも要因の一つと言えます。

CDPとは、2000年にイギリスで設立された世界各国で活動するNGOです。企業や自治体に質問書を送付し、回答を評価することで企業の環境に関する情報開示を促し、環境問題の解決に貢献することを目的としています。
設立時は、Carbon Disclosure Projecが正式名称でしたが、当初の気候変動に加え、現在では、水セキュリティ、フォレストも評価対象にしているため、現在はCDPを正式名称としています。

気候変動、水セキュリティ、森林の3つの分野について、AからD-までの8段階で評価が行われていますが、CDPの評価結果は、投資家や金融機関などによって参考にされており、サステナブルな経営を進める企業にとって、重要な指標となっています。そして、サプライヤーエンゲージメントは、CDPの評価ポイントの一部として挙げられています。つまり、サプライヤーエンゲージメントに取り組む企業は、CDPの評価ポイントで高い評価を得られるということです。

そして、ESGやサステナブル経営が重視される時代において、サプライヤーエンゲージメントに取り組むことには、多くの利点があります。

まず、企業の環境への貢献度を高めその姿勢を社会に示すことが可能となるでしょう。サプライチェーン全体のサステナビリティを向上させることは、「企業は社会の公器」という松下幸之助の言葉を体現する行動であるといえます。
また、サプライヤーとのパートナーシップを築くことで、新たなビジネス機会の創出やイノベーションを生み出す原動力にもなると考えています。気候変動という全人類の共通かつ、喫緊の解決すべき課題に立ち向かうためには、企業単独でできることは限られています。今こそ、NPOやNGO、自治体や地域社会、そしてサプライチェーンを形成する取引先との協働、つまり、サプライヤーエンゲージメントの重要性が高まっているということです。
さらに、ESG経営の観点から、CDPで高い評価を受けることで、企業のブランド価値や市場競争力を向上させることが期待できるでしょう。弊社の同時調査でも、環境に配慮した商品やサービスを生活者が選択することは、もはやスタンダートな購買行動となっています。

気候変動下における生活者意識や購買行動に関しては、以下の 『第8回「気候変動と商品・サービスの購入に関する生活者意識調査」結果』 のコンテンツをご覧ください。

価格や機能が商品選択の重要な要素であるように、将来はCDPの評価結果が、生活者の購買行動にも影響を与えることになるでしょう。

脱炭素社会とサステナブル経営実現のためのDX人材

脱炭素社会を目指し、サステナブルなビジネスを実現するためには、Scope3の削減とサプライヤーエンゲージメントは不可欠な要素です。企業は、地球環境のため、そして、サプライチェーン全体のサステナビリティ向上のために、積極的に取り組む必要があります。Scope3削減のためのサプライヤーエンゲージメントの取組みは、企業にとっての基本行動の一つであり、サプライチェーン全体で取り組むことで、脱炭素社会とサステナブル経営の未来を築く一歩になることでしょう。

私たちメンバーズでは、サプライヤーエンゲージメント実行のためのサポートそして、それを進めるための起点となる、社内外を対象としたマインドセットつまり、社内外向け意識改革を含めて支援しています。
そして、これらの施策を進めるためには、人的リソースが必要であり、それを担うのは脱炭素DXカンパニーが提供する、カーボンリテラシーとデジタルスキルを併せ持った「脱炭素DX人材」であると確信しています。
ご興味のある方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月メンバーズ入社。脱炭素DX研究所所属。
さまざまなCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長、2022年度からは、アースデイジャパンネットワークの共同代表を務める。

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