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企業が目指すべき環境貢献の新指標「削減貢献量」とは?

皆さんこんにちは。
メンバーズの「GX人材」による本マガジン。「脱炭素経営」を目指すために必要なプロセスや手法について、読者の皆さんとともに学びを深め、ともに歩んでいきます。
今回は、削減貢献量についてご紹介します。

はじめに

気候変動が急速に進む中、企業は環境負荷の低い製品やサービスを販売することが必要になっています。そんな商品・サービスをどうアピールすれば良いのでしょうか。
「削減貢献量」に注目が集まっています。

削減貢献量とは

日本LCA学会のガイドラインでは
「環境負荷の削減効果を発揮する製品等の、原材料調達から廃棄・リサイクルまでの、ライフサイクル全体での温室効果ガス排出量をベースラインと比較して得られる排出削減分のうち、当該製品の貢献分を定量化したもの」と定義されています。

簡単に言うと、製品やサービスの提供によって社会全体で削減された温室効果ガスの量を定量化したものです。

削減貢献量は経済産業省が2018年にガイドラインを作り、第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)でアピールした背景もあり、かねてから日本が普及につとめてきた考え方です。
国際的な基準は定められていませんが、国内でもいくつかのガイドラインが作成されています。(※1)

GHGプロトコル(Scope1〜3)と何が違うの?

商品・サービスの開発を行い、排出量を削減した環境負荷の低い商品を販売した場合、Scope1〜3が削減されます。しかし、その商品をたくさん販売した場合、どうなるでしょうか?
Scope1〜3の数値は商品が売れるほど増加していきます。
そこで使うことができる概念が「削減貢献量」です。
たとえば、企業Aが従来販売していた掃除機の年間CO2排出量は10t、新しい掃除機は8tだったとします。従来の掃除機は年間で3万台、新しい掃除機が年間で5万台売れたとすると、従来の掃除機だと排出量は30万t、新しい掃除機は40万tとなります。つまり、新しい掃除機の販売によってScope3が10t増加することになります。
一方で、新しい掃除機は従来の掃除機と比較して、製品単体で2tのCO2削減に貢献しており、従来の掃除機にかわって5万台普及した場合、10万tを削減貢献量として主張できます。

つまり、Scope1~3の算定・開示は、自社とサプライチェーンの温室効果ガス排出量を把握する指標であるのに対して、削減貢献量は、自社の製品・サービスが社会全体の排出量の削減にどれだけ貢献したかを評価する指標、ということです。

最近の動き

2023年3月に「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」が国際的な指針を初めてまとめました。(※2)
そこでは、削減貢献量を温室効果ガス排出ゼロに向けた3つの柱の1つとして位置づけ、削減貢献を謳う資格があるか否かの適格基準である3つのGateや算定方法について言及しています。
今後WBCSDの指針を基準として議論が進んでいくと思われます。

課題

課題の一つとしてよく挙げられるのが、「寄与率」の計算方法が確立されていないことです。一つの商品を製造するのに様々な素材を使っており、多くの企業が関わっています。削減効果をどのように配分するかを定めていないとダブルカウントが起きてしまいます。
このように、算定方法や設定によって数値が異なったり、計算方法が確立されていない部分も多く、グリーンウォッシングの懸念も拭えません。
WBCSDのガイドラインにも、グリーンウォッシングにならないよう、まずはスコープ1~3の削減計画を立て、そのうえで削減貢献量の主張をするとともに、削減貢献量の開示をする際には第三者機関による確認を受けているか言及するように促しています。
削減貢献量を開示する企業は、算定過程を公表したりと、グリーンウォッシュにつながらないように注意をする必要があります。

まとめ

削減貢献量は、基準が定まっていなく、議論する部分がまだ多く残っています。
しかし、消費者や投資家へアピールするための手法として利用することで、環境負荷の低い製品やサービスを開発・販売している企業が評価されるようになります。
脱炭素と経済成長との両立を図るために重要な指標として、今後も多くの企業が取り入れていくのではないでしょうか。

メンバーズでは、脱炭素と経済成長との両立を目指して、企業の支援をしています。脱炭素推進を検討されている企業は、お気軽にお問い合わせください。

※1 日本 LCA 学会 ガイドライン 
   経済産業省 ガイドライン
※2 持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)Guidance on Avoided Emissions

参考

環境省 削減貢献量について
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SC_syousai_Option1_20230301.pdf

ライター情報:瀧澤 玲子
株式会社メンバーズ CSV本部所属の脱炭素DXクリエイター。大学でマーケティングや消費者心理を研究。2022年にメンバーズに入社し、営業を経験したのち、現在は脱炭素DXの推進を担う。社内ラボに所属し、気候変動の学習やイベントを開催。

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