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住む人と訪れる人で共創する未来

今年も残すところわずかとなりました。
冬休みや年末年始に旅行を計画している方もきっと多いはずです。

アフターコロナで旅行業界が活気を取り戻す中、ゴミ問題やオーバーツーリズムなど観光地では課題が残されているのも事実です。
訪れる人が楽しむだけではなく、観光地の自然や住民の暮らしを損なわないためにはどのようにすればよいのでしょうか。

今回は、それらを解決するヒントとなる、新たな旅行の在り方をご紹介します。

“責任”ある観光とは

山の上から湖や街を見渡す人々

「責任ある観光」という意味のレスポンシブル・ツーリズム。
観光客が自身を「ツーリズムを構成する重要要素の一つ」と捉え、責任ある観光を通じて、よりよい観光地をつくり上げようとする動きです。

似た言葉に、サステナブル・ツーリズムやエコツーリズムもあるため、それぞれの違いを確認してみましょう。

  • レスポンシブル・ツーリズム(※1):観光に携わるすべての人が、その土地の環境や文化などに与える影響に責任を持つべきであるという考えのもと、より良い観光地をつくる動きのこと。サステナブル・ツーリズムと共通する部分も多いが、「責任ある観光」はより旅行者に持続可能性を意識してもらうことを重視している。

  • サステナブル・ツーリズム(※2):自然・文化・社会・政治などの全ての分野において持続可能であるだけでなく、観光産業としても経済的に成り立っている観光のこと。住民と協力して地域の特色を活かし、地域環境を後世に残せるような観光に発展させていくことを目指す。

  • エコツーリズム(※3):自然・歴史・文化など地域固有の資源を生かした観光を成立させながら、観光によってそれらの資源が損なわれることがないよう、適切な管理に基づく保護・保全を図る観光。地域資源について学びながら環境保護への意識を高めることを目的としているため、専門のガイドや解説員がいることが望ましい。

レスポンシブル・ツーリズムで重要な点は”責任”です。サステナブル・ツーリズムやエコツーリズムの取り組みは地域や自治体単位で行われていますが、レスポンシブル・ツーリズムでは私たち観光客にも理解や取り組みの責任が求められています。しかもその”責任”は旅行客である私たちにも求められています。

レスポンシブル・ツーリズムの最前線

夕焼けと椰子の木のシルエット

世界中から多くの観光客が訪れるハワイ。
人口約140万人に対し、州外からの観光客数は年間1,000万人規模に上ります。
2023年7月のハワイへの渡航者は合計93万2713人と、 29 か月連続で前年比増加を記録しており、コロナ禍の収束によって急増したことがうかがえます(※4)。

絶滅危惧種の自然や生物が多く生息し、その土地や歴史ある文化を大切にする地域社会がある一方、多くの人が訪れることで、住民の生活環境が破壊されたり環境汚染が進むなどの問題も出てくるようになりました。

そこでハワイ語で「思いやりの心」を意味する「マラマハワイ」のスローガンのもと、訪れる人もハワイの自然環境、伝統・文化を守っていくことの重要性を発信。
SDGsを基準に、ハワイ州のゴールを設定した特別プログラム「アロハプラスチャレンジ」を用意し、官民一体となり経済・社会・環境の側面から持続可能な社会を目指しています。

  • アロハプラスチャレンジの例(※5)

    • 地元産の食材供給

      • 2030年までに、地元産の食料コストや価格を削減すると同時に、食料廃棄物が大幅に削減され、その消費の便益が最大限となるように確保する

    • 天然資源の管理

      • 2030年までに、河川流域の森林の30%を保全する

      • 2030年までに、管理下にあるハワイの絶滅危惧種の割合を増やす

上記のように州全体として取り組んでいるのはもちろん、ハワイの4つの島もそれぞれの行動指針を提案し、州民と観光客参加型の達成目標を公開しています。

美しい楽園ハワイは、永遠ではありません。
レスポンシブル・ツーリズムは、思いやりの心を旅の中で実践していく、新しい観光の在り方です。
ハワイが何十年後も、何百年後も、素晴らしい楽園であるよう、旅行者である私たちにもできることが多くあるのではないでしょうか。

地域が観光客を選ぶ時代(事例2)

白川郷の雪景色

オーバー・ツーリズムは何も海外で起きている現象ではありません。
日本でも人気な観光地である京都や奈良、岐阜県の白川郷でもまた、オーバー・ツーリズムが問題となっています。特に白川郷の場合は限られた地域に多くの観光客が訪れることが問題視されており、2019年には住民の数を大きく上回る215万人もの観光客が来訪したことで、車による渋滞の発生や環境破壊が課題となっていました。

そこで2019年にはバスの予約制、駐車台数削減、などの交通を制限対策を実施。一見、観光客を制限すると売上が下がるように思われますが、実際には観光客がその土地で食事や買い物に時間を費やしたことで、経済効果は例年に匹敵する結果となりました。

観光地としては観光業は縮小させずにオーバー・ツーリズムを解決したいというジレンマもあるかと思います。しかし、「とにかくたくさんの観光客を呼び込みたい」という姿勢では、土地の魅力を伝えきれないまま、一時の流行りで終わってしまう可能性があります。

日本の観光を持続可能にするには、観光地の文化、歴史、環境、暮らしなどに敬意や対価をきちんと払ってくれる観光客を誘致することが欠かせません。観光客を選ぶことで、地域や環境の調和を保ちながら、経済効果を生み出せるのではないのでしょうか?

私たちも国内旅行をする時に、穴場や土着文化をゆったりと楽しむ「アンダーツーリズム」で観光をするのも良いかもしれません。

ここから見えるシグナル

レスポンシブル・ツーリズムを実践する地域は、大切にすべき本質的な価値を、事業者や住民が理解し、観光に生かしています。その地域ならではの体験を観光客に提供できるようになることで、観光客が共感を抱くようになることを期待した仕組みといえます。

事例でもご紹介したハワイでは、ほとんどの旅行者が滞在する島を探索したり、自然に触れたりして過ごしています。現在、環境や歴史を体験しながら学べるエコツアーが増えているため、素晴らしい歴史文化をきっと体感できるはずです。
また、白川郷でも、世界遺産集落周辺と白山国立公園をフィールドとした、地元ガイドによるツアーに特化・限定したアドベンチャーツアーが実施されています。ツアーにはサステナブル・ツーリズムを体感できるような要素も多くあり、白川郷をさらに深く満喫できることでしょう。  

このように、旅行は観光客だけが楽しむものだけでなく、観光客が地元と観光地の価値を分かち合うものへとシフトしてきているのではないでしょうか。

地域のストーリーを学び、共感し、その土地を旅することで、より深い体験や出会いが待っているはずです。そしてさらには、自ずと責任を持ちたい場所になり、住む人も訪れる人も笑顔になれる旅行体験へとつながることでしょう。

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Signals for future:https://www.instagram.com/signals_for_future/ 
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【引用】
※1 レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)とは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
※2 サステナブル・ツーリズムの推進
※3 エコツーリズムとは | 一般社団法人 日本エコツーリズム協会
※4 2023年7月のハワイへの渡航者総数、29 か月連続で前年比増加を記録
※5 責任ある観光“レスポンシブル・ツーリズム”とは - Malama Hawaii【マラマハワイ】 ハワイ州レスポンシブルツーリズム情報サイト

ライター情報:
柴森詩帆
経済学部卒。大学ではマーケティングについて研究し、インターンやゼミでSNS運用を経験。2023年にメンバーズに新卒入社し、データ領域を経験後、社内のInstagram運用を担当している。

倉岡美亜
早稲田大学 国際教養学部卒。大学ではマイノリティなどについて研究。小学2年生からガールスカウトとして活動。2022年にメンバーズ新卒入社し、社内外のサステナブル推進を担う。

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