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先進企業に学ぶ「アシックスのサステナビリティ戦略」セミナーレポート

2023年6月29日、弊社主催により、株式会社アシックス サステナビリティ統括部長 吉川美奈子さまをお招きし、自社のサステナビリティ戦略についてお話しいただくセミナーを開催しました。

アシックスは世界の人々の心身の健康をスポーツを通じて実現することをパーパスとして、1949年に創業した日本を代表するスポーツギアメーカーです。社名は「健全な身体に健全な精神があれかし」という意味のラテン語に由来しています。

今回はセミナーの内容をnote読者向けにダイジェスト版としてお届けします。

アシックスでのサステナビリティの位置付け

セミナー登壇資料より

アシックスでは、2つある戦略目標の1つに「事業活動を通したサステナブルな社会の実現」を設定しています。また、2030年に向けたビジョンにも、「デジタル」「パーソナル」に並んで「サステナブル」が据えられています。そして、会社の中枢となる経営戦略に「サステナビリティ」を入れることが重要であると話されていました。

アシックスでのサステナビリティの位置付けを動画で詳しく見る

アシックスのマテリアリティ(重要課題)とガバナンス体制

アシックスでは、自社の企業戦略に対する重要性と、ステークホルダーにとっての重要性の2つをもとに、優先度の高いテーマを「マテリアリティ」として設定しています。また、設定したマテリアリティをベースに戦略を策定し、ステークホルダーとの対話や期待値を常に確認をしながら事業を進めています。

アシックスでは執行機関として、社長を議長とするサステナビリティ委員会、リスクマネジメント委員会が設置されており、討議事項が監督機関である取締役会に報告、決議しています。

サステナビリティ フレームワーク

セミナー登壇資料より

アシックスでは、上記のサステナビリティフレームワークの通り「Sound Mind, Sound Body」を大上段に抱え、「人と社会への貢献」と「環境への配慮」の2つを活動の主軸においています。セミナーでは2つ目の「環境への配慮」に焦点を当ててお話いただきました。
気候変動がもたらすスポーツへの影響を考えとして、以下項目を挙がりました。

・アスリート:熱中症による棄権
・子どもたち:外遊びの制限
・部活動:猛暑から試合中止
・スポーツ大会のルール:参加国や試合時間を減らす可能性

気候変動は事業に直接影響を与えるものとして認識し、「健やかな心身を実現するためには、健やかな地球環境が必要である」という考えのもと、2050年には温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標を掲げています。

しかし、前述した目標を実現するためには、アシックス1社のみでは厳しいというのが現実です。アシックスの事業活動を脱炭素化するためには、ステークホルダーとの協働が大切になると強調されていました。

サプライヤーとの協働:生産段階でのCO2の削減
製品をよりサステナブルなものに:CO2を削減する技術や製品の開発、価値提供のシフト
一般の方との協働:リサイクルやリユースなど、循環型のライフサイクル

ステークホルダーとの協働に関して動画で詳しく見る

サステナビリティ・イノベーションの実例

アシックスでは2022年に、CO2排出量が世界最少のスニーカーを開発しました。同じカテゴリーのシューズでは平均約8kgのCO2が排出されるところ、今回アシックスが開発したものでは1.95kgまで抑えることができたそうです。

セミナー登壇資料より

また、近年の気候変動に対する生活者意識の向上により、CO2排出量を製品に表示してほしいと考えるランナーが69%まで高まったことから、アシックスではランニングシューズにCO2排出量を可視化しプリントする取り組みを行っています。

その他のアシックスでの実例を動画で詳しく見る

これらの実例から、アシックスはESG評価でも高い評価を受けています。

セミナー登壇資料より

アシックスではこのような評価を、社内では「成績表」として位置付けていると同時に、「ステークホルダーが次に何を期待しているのか」を戦略に反映させる取り組みを行っています。

また、以下の社内でのサステナビリティイノベーション関連の取り組みを通し、社員の意識の向上を図ることもできたそうです。

・サステナイノベーションプロジェクトや社内セミナーの実施
・ランニングすると1本植樹する社員プログラム
・定期的なグローバル社員向け発信

セミナー登壇資料より

これらの取り組みから、業務でサステナビリティの推進を意識している社員が2021年では44%だったのに対し、2022年では73%まで向上しました。

サステナビリティ推進のポイント

さいごに、これまでのご自身の経験を踏まえ、自社内でサステナビリティを推進する上でのポイントを紹介いただきました。

グローバルの潮流を理解して進める
近年、環境配慮がされていない企業活動に対しての厳しい目が向けられている。その動きを理解した上で、戦略に落としていくことが必要不可欠である。

企業パーパスの中でのサステナビリティの位置付けを明確にする
パーパスとは別にサステナビリティに取り組むのではなく、パーパスの中で位置付けることで社員の理解が進み、自社の強みを特定できる。

事業への統合
サステナビリティ部門だけではなく、事業戦略の一つとして取り組むことが推進の鍵である。社員一人ひとりの認識を高める、トップダウンとボトムアップを同時に行うことが求められる。

開示要求対応のための脱炭素DX化は必須
DX化によるサステナビリティ情報の見える化は、サステナビリティ推進にも寄与する。

まずはやってみる
日本企業はすべてを整えてから進む方法を選択しがちであるが、サステナビリティはまだ誰も描いていない未来に対しアクションを起こすことである。まずはやってみて、そこから学んでいくという方法で進めることが、成功への第一歩となる。

セミナー登壇資料より

動画版では

現在、メンバーズ公式YouTubeに、配信中の動画版「アシックスのサステナビリティ戦略」では、より詳しい内容をご覧いただけます。またQ&Aセッションでは「利益とサステナビリティの両立をどう考えるか」などの質問にも回答いただいております。ぜひご覧ください!

脱炭素DX研究所からのお知らせ

「まずはやってみる」こと。

今回のセミナーで最も印象に残った吉川さまのコメントです。
「サステナビリティ推進のポイント」の1つとなりますが、日本企業が最も不得手とする項目だと言えるでしょう。しかし、日本企業として、いち早くファッション・アパレル業界の環境負荷低減に向けた国際的枠組み 「THE FASHION PACT」(ファッション協定)に加盟を果たしたアシックスならではのコメントであったと実感しています。CO2排出量 世界最少のスニーカーも発売時にはいち早く手に取ってみたいと思える商品でした。日本発のグローバル企業による先進的な取組みとして、引き続き注視したいと思います。

そして、スニーカーのカーボンフットプリントの計測同様、私たちメンバーズも商品・サービスごとのLCA(ライフサイクルアセスメント)の算定サービスを提供しています。企業全体のGHG排出量の測定に加え、LCAの把握は脱炭素経営を目指すうえで、最も重要な取組みの1つであると確信しています。

弊社では、デジタルスキルとカーボンリテラシーの両スキルを保有する脱炭素DX人材(GX人材)により、LCA算定を行います。また、企業・製品単位の温室効果ガス排出データをもとに、売上向上・コスト削減を実現する「脱炭素DXソリューション」の提供をスタートしました。

サービスにご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
https://marke.members.co.jp/contact.service.html

ライター情報:佐藤凪沙
立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部環境開発学専攻卒。大学では持続可能な開発やピアリーダースキルを専門に学び、同時に環境NPO法人にて活動する。2023年春にメンバーズに入社し、現在はnoteの運営に携わっている。

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