地域から生み出す脱炭素ビジネス【大阪編】
はじめに
皆さんは「脱炭素先行地域」を知っていますか?カーボンニュートラルの実現とともに、地域の魅力や暮らしの質の向上も同時に目指す、全国のモデルとなる地域のことで、2023年11月時点で選定された計画は74件、36道府県に広がっています。地域課題の解決をビジョンに掲げるメンバーズも、地域における脱炭素DXのポテンシャルに注目し、地方自治体や地域企業との連携を進めています。
脱炭素DX研究所所長・我有も、2024年春に東京都から大阪府へ移住し、地域から気候変動ムーブメントを起こしていこうと奮闘中です。大阪に引っ越してきて、「案外やってる!」と驚くこともありました。そこで、このnoteでは「大阪の脱炭素の取り組み」をご紹介したいと思います。
脱炭素を推進する仕組み
大阪府では、事業者の脱炭素化や府民の脱炭素型ライフスタイルの促進に向けて、さまざまな取り組みが行われています。ここでは3つピックアップします。
①脱炭素経営をする企業を応援!
「脱炭素経営宣言登録制度」
脱炭素経営を宣言した事業者に対して府が「脱炭素経営宣言登録証」を発行し、排出削減支援事業者と連携して、それぞれの事業者の取組状況に応じた最適な各種支援を行う制度です。2023年11月時点で登録事業者はなんと2800以上!
具体的な支援としては、CO₂排出量の見える化ツールの提供・紹介、省エネ診断、再エネ電気メニュー、省エネ・再エネ設備の紹介、補助金・ESG融資に関する情報提供などがあります。
②Scope3削減に不可欠!
「サプライチェーン全体のCO2排出量見える化モデル事業」
自社の排出量の可視化だけでなく、昨今ではサプライチェーン全体のCO2排出量の可視化も求められています。そうした動きを加速することを目的に、カーボンフットプリントの算定および削減に取り組むロールモデルとなる企業を支援する「サプライチェーン全体のCO2排出量見える化モデル事業」が行われています。今年度は4社(江崎グリコ株式会社・サラヤ株式会社・三起商行株式会社・ミズノ株式会社)の参加が決定しているようです。
サプライチェーン全体での可視化には、サプライヤーからのデータ収集をはじめ、ユーザーによる製品利用や廃棄までサプライチェーン全体の透明性や取引先・顧客とのエンゲージメントが不可欠です。Appleのようにサプライチェーン全体におけるカーボンニュートラル達成の具体的な目標年を示す企業も増えるなか、組織単位のScope3や製品単位のLCA(ライフサイクルアセスメント)がますます求められてくるでしょう。
③これからの展開に注目!
「Earth hacksと事業連携協定締結」
最後にご紹介したいのが、Earth hacks社との事業連携協定締結です。
Earth hacksが提供する「デカボスコア」(商品やサービスのCO2e削減率を可視化した指標)を、大阪府域で栽培・生産された農畜林水産物「大阪産(もん)」20商品以上に導入するという取り組みが始まっています。
式典にて今後の事業者の広がりについて展望をお伺いしたところ、スーパーなどの小売業から輪を広げていき、「デカボスコア表示で売れる」という実績を創っていきたい、と語られていました。
実際にデカボスコアが並ぶマルシェへ!
11月中旬には、大阪・天王寺で、環境にやさしい大阪産(もん)を楽しむイベント「Welcomingアベノ・天王寺おおさかもん祭り Road to EXPO2025」が開催。デボスコアを掲出したブースが多数出店されていました!散策してきたので少しご紹介します。
健康意識が高まりとともに低カロリーあるいは「カロリー0」の商品が開発され、カロリー表示が一般化するなどマーケティングにも活用されてきました。同様の動きが環境負荷の開示においても生まれはじめていることが垣間見えました。
脱炭素でビジネスの好循環を創り出す
2030年までの温室効果ガス約半減させる、というスピード感で社会が変容していくには、「脱炭素はコスト…」「脱炭素してもビジネスメリットがない…」ではなく、「脱炭素がビジネスチャンスになる」「脱炭素をすればするほどビジネスも好調になる」という循環をつくることが大切だと感じています。そのためには顧客企業や地域住民の理解・共感、行動変容が不可欠であり、大阪府が取り組む、事業者の応援制度や「デカボスコア」といった概念やツールはその強力な後押しになるのではないかと感じました。
私たちが何かを購入するときの決め手は、価格、品質、ブランドストーリーなどさまざまであり、環境負荷は数ある理由の一要素にすぎません。だからこそ「選んだものが結果的に脱炭素だった」「脱炭素に寄与する商品ばかりが売られている」という世界観をつくることが大切で、そのためにビジネス側の変革とイノベーター的生活者の存在が必要なのだと思っています。特に「地産地消は脱炭素にもなる」という切り口は、地域住民を巻き込んだ行動変容や地域産業の発展の循環を創り出す良いきっかけになると感じました。
また、地域での面白い取り組みがあればご紹介していこうと思います。最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
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