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絵や音をどうやって楽しむ?

私たちが無意識に思い込んでいる「あたりまえ」は誰かにとってのあたりまえではないのかもしれません。
イヤホンやレコードプレイヤーなど「耳」で楽しむということを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。

では、耳の不自由な人はどのように「音楽」を楽しんでいるのでしょう。
また、目の不自由な方はどのように「美術館」を楽しんでいるのでしょうか。

今回はハンディキャップを持っている人も楽しめる芸術のあり方をご紹介します。

音楽や絵は誰でも楽しめるのか

白い床の上に置かれた黒いヘッドフォン

世界人口の約15%にあたる10億人が何らかのハンディキャップを持って暮らしています。
ハンディキャップを持っている人の生活を支援する仕組みは昔からありますが、誰もが芸術を楽しめる社会をつくるためには、その仕組みから変える必要があるかもしれません。

例えば、音声コンテンツ。
会議やインタビューなどの音声データをテキスト化したり、字幕で映画をみたりすることなど、多くの場面で使われる文字おこし。そんな文字起こしは、コンテンツを耳が不自由な人に届けるために用意している場合も多くあります。

もちろん文字情報があれば、話の内容を知ることはできます。しかし、笑い声や音の強弱といった音声ならではの要素を伝えることは難しいでしょう。「笑い声」などとそのまま書き起こすだけでは、雰囲気やニュアンスといった音声メディアならではの醍醐味が抜け落ちてしまいます。そのため、現状では、耳の聞こえる人が楽しんでいるような音声メディアの利点を、ハンディキャップを持っている人が十分に享受することはできていないと言えます。
他のハンディキャップに対しても同様のことが言えるでしょう。

テクノロジーが発展し、社会全体がコンテンツを届ける方法や仕組みを整えることで、誰もが芸術を十分に楽しめるようになったとしたら、世界はどのように変わるでしょうか。

触って鑑賞する絵画

5枚の絵画を見つめる男性の後ろ姿

フランス・パリに拠点を置く『Association Valentin Haüy』という団体では、複数の触れる絵画からなる展覧会「Tactile Tour(触れるツアー)」を開催しています。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「ウィトルウィウス的人体図」や「岩窟の聖母」などが、立体化されて展示されています。

同展では、さらに作品を解説する音声ガイドも提供。目の不自由な人が、さまざまな感覚を使って有名な絵画を鑑賞できるように工夫されています。また、目の不自由さの理解を深めてもらうため、目の見える人が目隠しをして鑑賞する企画も用意されています(※1)。

このようなツアーの取り組みを通じて視覚だけでなく、耳や手から得られる情報から絵を感じる、そんな新たな絵画の楽しみ方が生まれるかもしれません。

音楽を体で感じる

フルート奏者の手元

五感の一部だけを使うのではなく、全身で芸術を感じるような取り組みは音楽の分野でも行われています。
ライブに行ったことがある方は、耳で拾う音楽だけでなく、音の波動が全身にまで伝わる感じを経験されたことがあるのではないでしょうか?

株式会社博報堂は、音楽を“身体”に着けることで、ライブならではの体験をどこでも実現するジェケット型ウェアラブルデバイス「LIVE JACKET」を開発しました(※2)。

「LIVE JACKET」は特殊なジャケットに数十の超小型スピーカーを搭載しており、着ると身体中に音楽が響きます。楽曲を演奏パートごとに録音して分解し、それらを特殊なジャケットに仕込まれた数十の超小型スピーカーから個々に再生してMIXします。一人一人の身体の形状や動きに応じて、音楽の聞こえ方も変化する仕組みです。

耳が不自由な方が行うサッカー、デフサッカーで活躍する仲井健人選手は、

宇佐美雅俊氏、落合陽一氏が開発した「LIVE JACKET」着たんだけど、耳の聞こえない僕ら皆、気づいたらリズムに乗ってしまってました。音楽に親しみのない僕らは欲しいなって終始言い合ってたとさ笑

とコメントしています。
音楽を“着る”ことで、どこでもライブ体験ができるジャケット型のデバイス「LIVE JACKET」を着用してみると、全身でリズムを楽しむことができ、それまで耳で聞くものだと思っていた音楽の概念が覆されたのだそうです(※3)。

仲井選手のコメントをきっかけに、耳の聞こえに関わらず音楽を楽しむことができる「耳で聴かない音楽会」というプロジェクトも生まれました。

音楽は“聴く”から、体で感じる“体験”へとシフトしてきています。
ウェアラブルの最新技術は生活を便利にするのみならず、多くの人にとって欠かせないものになっています。誰もが音楽を楽しめる将来も近いかもしれません。

ここから見えるシグナル

本来「芸術」とは誰もが楽しめるべきものではないでしょうか。しかし、これまでハンディキャップによって、芸術を楽しむ機会を失うことが多かったのも事実です。

「絵画は、視覚で楽しむもの」「音声コンテンツは、聴覚で楽しむもの」。このような考え方は、芸術体験の選択肢を狭めるものでした。

「Tactile Tour(触れるツアー)」と「LIVE JACKET」はそれらの考え方を改め、複数の捉え方で楽しむことができます。このようなプロジェクトが世界で広まれば、私たちの芸術の楽しみ方に対する常識が覆えされるでしょう。

テクノロジーの力を利用し、これまでとは異なる感覚で楽しむ音楽や絵画があたりまえになればきっと誰もが今まで以上に充実した体験ができるのではないでしょうか。

紹介した事例のように、ハンディキャップによる制限を解き放つアイデアがこの世の中にまだまだ潜んでいるのかもしれません。

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本投稿以外にも、Signals for future(Instagram)では、他にもたくさんの未来の兆し(シグナル)について投稿していますので、ぜひご覧ください!
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【引用】
※1 「さわれる絵画」がヨーロッパ各地で広がる理由 
※2 博報堂、音楽を“身体”に着ることで、どこでもライブ体験を実現する ジャケット型ウェアラブルデバイス「LIVE JACKET」を開発 ~メディアアーティスト/筑波大助教 落合陽一氏・株式会社GOとの協業で実現~ |お知らせ
※3 「耳で聴かない音楽会」ってなに?テクノロジーが実現する、聴覚障害がある人もない人も一緒に楽しめる音楽体験 | soar(ソア)

ライター情報:
水戸結衣
日本大学 商学部卒。大学ではマーケティングについて研究。2023年にメンバーズに新卒入社し、サスティナブル推進の一環として社内のインスタグラム運用を担当。

梶原実乃梨
法政大学 人間環境学部卒。大学では地方創生や農業について研究し、長期インターンではSNS運用を経験。SDGs達成に向けた学生団体で活動。2023年にメンバーズに新卒入社し、プロモーション領域を経験しながら、社内のInstagram運用を担当。

柴森詩帆
経済学部卒。大学ではマーケティングについて研究し、インターンやゼミでSNS運用を経験。2023年にメンバーズに新卒入社し、データ領域を経験後、社内のInstagram運用を担当している。

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