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グリーンウォッシュは広告企業やコンサル会社も法的に問われる時代に!

近年、世界において「グリーンウォッシュ」が問題視されている中、「EU(欧州連合)」の政策執行機関である「欧州委員会」が2023年3月22日付で「グリーンクレーム指令案」を発表し、大きな話題となりました。

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュとは、企業が広告やパブリックメッセージを利用して、環境的に持続可能で環境に優しい企業、つまり実際よりもグリーンであるように見せようとすることです。これは、特定の企業が自社のビジネスモデルや活動が実際に環境に多大な悪影響や損害を与えているという事実から消費者の注意をそらすために使用される手法でもあります。

出典:
https://www.clientearth.org/latest/news/what-is-greenwashing-an-interview-with-sophie-marjanac/
https://www.clientearth.org/what-we-do/greenwashing/

グリーンウォッシュの規制の背景には、影響力の持つ組織による不健全な発信により、世論/消費者に大きな誤解を招き、発信側が不当な利益を得ている実態があります。また、そうした動きは脱炭素社会への移行に影響をもたらすこともグリーンウォッシュの規制が求められている理由の一つです。

今後、EUだけでなく、各国で独自の規制が強化されることが予想されます。このnoteでは、気候変動の解決に向けて強力な実行力を持つ「法」を武器に活動する「ClientEarth」という団体の活動についてご紹介します。

グリーンウォッシュと戦うClientEarthとは?

ClientEarthは、各国の弁護士が集まり60か国以上で168件の環境問題に関わる事例を取り扱うNPO団体です。彼らは、15年以上にわたって、市民、活動家、政府、業界と協力し、法というツールを駆使した活動を展開し、社会に影響を生み出しています。

<ClientEarthの主な取り組み>
①政府や企業に気候変動の法的責任・説明責任を求める活動

  • 化石燃料事業に対する異議申し立てや提訴

  • 企業の情報開示と対応促進

  • 金融当局と連携し金融機関への働きかけ

②政策や貿易ルールの形成を法的に支援・助言

  • 再エネルギー普及のための政策提言や支援

  • 持続可能な貿易メカニズム形成を目指し貿易に関する訴訟、提言、法的調査、利害関係者への関与

  • 持続可能な農業の提唱

ClientEarthによるグリーンウォッシュに関する訴訟事例

BP社:
BPの年間支出の96%以上が石油とガスに費やされる中で、BPの世界的な「Keep Advancing」および「Possibility Everywhere」という広告キャンペーンがBP社の事業について国民を誤解させるものだとして、OECDのガイドラインに矛盾しているとの訴状を提出しました。 結果、イギリス政府が審査を行う前に対象の広告を取り下げ、その他関連するキャンペーンも中止し、以後、広告リソースを気候変動対策に正しく活用することを約束しました。


KLMオランダ航空:
バイオ燃料や合成燃料の活用やフライトを予約した乗客がカーボンオフセット製品を使用して「影響を軽減」できるKLMのCO2ZEROサービスを含む「Fly Responsibly(飛ぶことの責任)」キャンペーンを展開していました。

これに対してClientEarthは、KLMの航空便が気候変動の事態を悪化させないという誤った印象を顧客に与え、オランダによるEUの不公正商行為指令の実施に違反していると主張しています。訴状によると、バイオ燃料や合成燃料の使用といった航空業界の気候変動対策は、フライトを持続可能にするには十分ではありません。また、CO2ZEROサービスについては、フライトによる温室効果ガスの排出量を相殺または削減できることを示唆しているため、誤解を招くとされています。 森林再生やバイオ燃料費への寄付が、気候変動への影響を補うものであると主張することは違法と指摘されました。

また、航空会社関連でもう一つ紹介します。

デルタ航空:
2021年から、広告やプレスリリース、SNSや販促物などを通じて「世界初のカーボンニュートラル航空会社である」という表現を繰り返し展開しています。この件について訴状では、デルタ航空は排出量を相殺するために自主的な炭素市場への参加に依存しており、不正確な会計処理などの観点から市場の信頼性に問題があることから、カーボンニュートラルという主張は虚偽であると主張しています。

このように、グリーンウォッシュに対する訴訟は増加しており、現在EUにおいて「カーボンニュートラル」や「ネットゼロ」と書かれた製品を禁止する動きにつながっています。さらに、これまでは虚偽広告を出す企業が訴訟の対象だったが、今後は、企画や制作に関わる広告企業やコンサル会社の責任も問われるようになるでしょう。

グリーンウォッシュを回避するためには?

欧州グリーンクレーム指令案では、根拠となる情報(データ)を持つことが重要だと訴えています。要件の一部に、環境主張の実証というものがあります。

環境主張の実証では、以下の3点を主張しています。

  • 広く認められた科学的根拠と最先端の技術知識に基づくこと。

  • ライフサイクルの観点から見た影響、側面、パフォーマンスの重要性を示すこと。

  • すべての重要な側面と影響を考慮してパフォーマンスを評価すること。

つまり、自社の製品・サービスのライフサイクルでの環境負荷を測り、データに基づいたマーケティング活動を行う必要があります。これは、輸出する商品サービスだけに限らず、日本市場にも適応されていくと予想されます。ClientEarthは日本での活動を開始していくことを表明していることもあり、グリーンウォッシュに関する要件や規制化の後押しに貢献することでしょう。

ライター:倉地 栄子
カナダ政府局(NPO)にける難民・移民保護支援活動を経て、2015年にメンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトに従事。関心のあるテーマは「気候変動」「森林と農業」「地方創生」。

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