サーキュラーエコノミー戦略 #2 Slow
「Circularity Deck」は、5つの戦略と3つの階層で構成された51の戦術から構成されているカードツールです。「Circularity Deck」の紹介はこちら。
概要
製品、部品、材料をより長く使用する戦略、それがこの「Slow(スロー)戦略」です。
スローは「遅くする」という語意。急がずゆっくりという意味合いです。伝統食や持続的農業を守ろうと生まれた活動「スローフード運動」や、時間に追われずに、余裕をもって人生を楽しもうとする概念である「スローライフ」などに表されるように、「生き急がずに天命を全うしようよ」というニュアンスをもちます。故障・劣化したらすぐに廃棄する短命な使い方ではなく、もったいない精神でモノを大切にしようとする思考です。
解説
大量生産・大量消費社会では、新しいものが次々と販売され、1世代前のものは売れず廃棄される運命でした。また、製品のライフサイクルは短いほうが新しい商品の購入へとつながるため、ライフサイクルを意図的に伸ばそうとする考えは優先されてきませんでした。修理して使い続けるよりも、新しいものを購入することを良しとした時代といえます。
たとえば、携帯電話を例にとってみましょう。毎年のように新しい機種が発売され、人々は次々と新しいものに買い替えてきました。携帯電話が誕生した当初は、新機種は1つ前の世代の商品と比べ価値や機能に大きな差がありましたが、市場が成熟しスペックが充実した今、消費者はわざわざ最新型の携帯電話に買い替える必要もなくなりつつあります。また、買い替えたとしても、それを引き取るような中古市場が広がりましたが、これも製品寿命を延ばすことに通じます。
スローに関する大きな動きとして注目できるのは「修理する権利」。2012年に初めて、アメリカのマサチューセッツ州で「自動車所有者の修理する権利法」が制定されて以降、パソコンやスマートフォン、自動車など、買った製品をメーカーに通さず、消費者自身で修理できるようにする動きがでてきています。
欧州でも2020年3月「循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」が採択され、「廃棄」ではなく「循環」を前提とした製品設計・デザインが重要視されるようになりました。また、それと同時に消費者の「修理する権利」が強化されてきています。この流れをうけ企業側は、製品の修復性や耐久性などに関する情報を公開し、できるかぎり長期間使用できる環境を整える動きもではじめています。
スローが目指す方向性は、製品ライフサイクルの延命。延命することにより、無用な新製品の購入機会を減らし、新製品をつくるうえで必要な資源を削減することです。もともと製品寿命が5年であってものを20年に変えることは、理論的には製品の製造に必要な資源を4分の1にするのと同義です。
戦術
Circularity Deckにおいて、スロー戦略は次の15の戦術から構成されています。
まとめ
スローは、製品そのものを延命する、もしくは、製品に利用される部品や素材を延命させるなど、製品やビジネスモデルをリデザインすることが当てはまります。
*この記事の情報は 2023年5月メンバーズコラム掲載当時のものです。
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