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サーキュラーエコノミー戦略 #3 Close

「Circularity Deck」は、5つの戦略と3つの階層で構成された51の戦術から構成されているカードツールです。「Circularity Deck」の紹介はこちら


概要

資源を循環サイクルに戻す戦略、それがこの「Close(クロース)戦略」です。クロースは「閉める、閉じる」という語意です。対義語はオープン、「開かれた、開放的」などの意味を持ちますよね。このクロースせんりゃくは、オープンだったものを、一定の範囲・限度・制限・制約のもとでクロース「閉じる」というニュアンスを持ちます。

解説

クロースを理解するために、まずはオープンについて説明します。
大量生産・大量消費であるリニア経済は、資源を調達し作られた製品が、消費者の手にわたり消費されたのち廃棄されるため、「オープン」なモデルといえます。この一連の流れは一方向に進む直線であり、資源が循環することはありません。破棄される前提でのものづくりでは、その製品の破棄形態(どうやって廃棄するか、分別がしやすいかなど)まで考慮が及ばず、結果として廃棄物の処理に手間がかかり、環境汚染の原因となってきました。

たとえば、PETボトルを例にとってみましょう。
PETボトルリサイクル推進協議会によると、2020年度の国内のPETボトル販売量は551千トン、リサイクル量は488千トンでした。リサイクル率は88.5%と発表しています。なかなかのリサイクル率ですね。

しかし、リサイクルされなかった残りの11.5%の63千トンは、焼却・破棄されていることになります。その一部は焼却による気化し大気汚染を、一部は土壌汚染を、ほかの一部はマイクロプラスチック化されて海洋汚染を起こしています。リサイクルという循環のなかで「漏れ」が発生しているといえます。これを「オープンループ」と表現します。真のリサイクルを目指すのであれば、オープンなものをクローズさせる必要があります。

このように、浪費された製品を新たな資源と捉え、また製品を生み出す流れが漏れださないように「閉じた輪」にすることこそが「クローズドループ」であり、サーキュラーエコノミーの基本的概念です。

クロースの目指す方向性は、すべての資源をオープンな状態からクローズドループに導くこと。リサイクルによりピュアな資源の利用を削減し、廃棄におけるさまざまな汚染を防ぐことです。

戦術

Circularity Deckにおいて、クロース戦略は次の8つの戦術から構成されています。

Close x Product 1:リサイクル素材を用いたデザインにする
Close x Product 2:できる限り単一素材でデザインする
Close x Product 3:一次リサイクル素材でデザインする

Close x BusinessModel 1:廃棄品から部品や素材を再利用・販売する
Close x BusinessModel 2:製品回収でできることやインセンティブを提供する
Close x BusinessModel 3:適切な施設での製品リサイクルを実現する

Close x EcoSystem 1:地域内で廃棄物から製品への循環ループを構築する
Close x EcoSystem 2:複数企業による産業共生を実現する

 Circularity Deck  一例

まとめ

これを実現するための主な手法としては、廃棄物から製品への循環ループを構築する、廃棄品から部品や素材を再利用・販売する、リサイクル素材を用いたデザインにする、またはリサイクルされることを意識してできる限り単一素材でデザインするなどが当てはまります。

*この記事の情報は 2023年5月メンバーズコラム掲載当時のものです。

ライター:数藤雅紀
株式会社メンバーズ 脱炭素DXカンパニー
循環経済&サスティナビリティ推進 ラボ所長
ケンブリッジ大学経営大学院循環経済プログラム修了
Global Compact Network Japan サーキュラーエコノミー分科会共同幹事
もと山一證券。金融・デジタル・DX・循環経済を得意とする。
Note:https://note.com/suto410
Facebook:https://www.facebook.com/Sutoh/

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