見出し画像

グリーン調達とは?企業の調達におけるサステナビリティ

皆さんこんにちは。
メンバーズの「GX人材」による本マガジン。「脱炭素経営」を目指すために必要なプロセスや手法について、読者の皆さんとともに学びを深め、ともに歩んでいきます。
今回は「グリーン調達」についてご紹介します。


はじめに

世界が気候変動問題の解決に向け大きく動いているなか、日本企業もカーボンニュートラル達成を目指す企業が多く、中間指標を設けている会社も多くあります。
2023年5月にメンバーズ脱炭素DX研究所が発表した「日経225銘柄企業 スコープ1・2・3独自調査」によると、スコープ3は企業の温室効果ガス排出量の9割を占めています。その中でもカテゴリ1「購入した製品・サービス」やカテゴリ11「販売した製品の使用」が多い傾向にあり、スコープ3削減にはサプライヤーや顧客との協働や、サーキュラーなビジネスモデルへの転換が不可欠になっています。
カテゴリ1「購入した製品・サービス」での温室効果ガス排出を削減するための取り組みとして注目されているグリーン調達についてご紹介します。

グリーン調達とは?

グリーン調達とは、環境負荷の少ない製品やサービスを調達することです。
環境省のガイドラインでは以下のように言及されています。

グリーン調達は、納入先企業が、サプライヤーから環境負荷の少ない製商品・サービスや環境配慮等に積極的に取り組んでいる企業から優先的に調達するものです。このグリーン調達は、納入先企業の環境配慮の取組方針や事業戦略に沿って実施されます。サプライヤーは、納入先企業との取引において、グリーン調達の方針や納入基準をよく理解し、それらの要求等を適切に満たす必要があります。

グリーン調達推進ガイドライン(暫定版) - 環境省”. 環境省. 2023年10月13日閲覧

納入先企業の具体的なアクションとしては、再生可能エネルギーの利用、リサイクル品の優先活用、省エネルギー製品の採用などが挙げられます。
グリーン調達により、製造や使用、廃棄のプロセスにおける温室効果ガスの排出量が少ない商品や、製造における資源の消費量を削減した商品を多く調達することになり、環境への負荷を軽減することができます。

グリーン購入法

2000年5月に循環型社会形成推進基本法の個別法のひとつとして「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」が制定され、2001年4月に施行されました。
この法律は、環境負荷低減に貢献する製品・サービスの調達の推進および、環境負荷低減に貢献する製品・サービスに関する適切な情報提供を促進することにより、需要の転換を図り、持続的発展が可能な社会の構築を推進することを目指しています。

グリーン購入法で定められた事業者や国民の責務はどんなものでしょうか。

(事業者及び国民の責務)
第五条 事業者及び国民は、物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合には、できる限り環境物品等を選択するよう努めるものとする。

(環境物品等に関する情報の提供)
第十二条 物品の製造、輸入若しくは販売又は役務の提供の事業を行う者は、当該物品の購入者等に対し、当該物品等に係る環境への負荷の把握のため必要な情報を適切な方法により提供するよう努めるものとする。
第十三条 他の事業者が製造し、輸入し若しくは販売する物品若しくは提供する役務について環境への負荷の低減に資するものである旨の認定を行い、又はこれらの物品若しくは役務に係る環境への負荷についての情報を表示すること等により環境物品等に関する情報の提供を行う者は、科学的知見を踏まえ、及び国際的取決めとの整合性に留意しつつ、環境物品等への需要の転換に資するための有効かつ適切な情報の提供に努めるものとする。

“平成十二年法律第百号 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律”. e-Gov法令検索.
2023年10月13日閲覧

「責務」とは、どういった意味でしょうか。

「責務」とは、責任と義務。責任をもって果たさなければならない仕事。つとめ。

“精選版 日本国語大辞典“. 2023年10月13日閲覧。

整理すると、グリーン購入法で定められた事業者や国民の責務は以下となります。

事業者=できる限り環境物品等を選択する努力義務
国民=できる限り環境物品等を選択する努力義務
認定を行い、情報の提供を行う者=科学的知見を踏まえ、及び国際的取決めとの整合性に留意しつつ、環境物品等への需要の転換に資するための有効かつ適切な情報の提供に努める

「努力義務」とは、法律的にどんな状態を指すのでしょうか?

努力義務(どりょくぎむ)とは、日本の法制上「〜するよう努めなければならない」などと規定され、努力義務に従わなくても刑事罰や過料等の法的制裁を受けない作為義務・不作為義務のことである。遵守されるか否かは当事者の任意の協力にのみ左右され、またその達成度も当事者の判断に委ねられる。

“努力義務”.フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』. 2023年10月13日閲覧。

現在は法的制裁を受けない義務を課せる法律となっていますが、より踏み込んだ内容の法律が制定される未来となる可能性も秘めています。

グリーン調達に関連する環境ラベルや認証制度

環境ラベルや認証制度は、グリーン調達の際に、環境負荷の低減につながる製品やサービスを選ぶための指標として活用できます。

環境ラベル

環境ラベルとは、製品やサービスの環境性能を客観的に評価し、その結果を表示する制度です。日本では、環境省が「エコマーク」を認定しています。エコマークは、環境負荷の低減に資する製品やサービスに与えられるもので、2023年10月現在、約1,600品目が認定されています。

認証制度

認証制度とは、企業や組織が環境に配慮した取り組みを行っていることを、第三者が客観的に評価し、その結果を認証する制度です。日本では、ISO14001やGRIなど、さまざまな認証制度があります。

グリーン調達における環境ラベルや認証制度の活用

グリーン調達において、環境ラベルや認証制度を活用するメリットは、環境負荷の低減につながる製品やサービスを効率的に選定でき、サプライヤーの環境経営を評価する指標として活用できるため、ステークホルダーや一般消費者に向けて企業や組織の環境への取り組みをアピールできます。

グリーン調達の進め方

グリーン調達を進めるための具体的なステップについて説明します。

ステップ1:目標の設定

グリーン調達でどのような目標を達成したいのかを明確にします。現状のサプライチェーン全体における排出量を知り、調達での削減目標を設定します。長期的な目標と短期的な目標を設定されることが推奨されます。

ステップ2:調達基準の策定

環境負荷の低減を評価するための調達基準を策定します。各サプライヤーに経年改善を促すよう、段階的な評価基準を設けるケースもあります。

ステップ3:サプライヤーの評価

新規のサプライヤーを基準に照らして評価し、既存のサプライヤーにアンケートを実施して現状把握を促す等の取り組みを進めます。

ステップ4:モニタリング

各評価基準やサプライヤーの状況に応じて、サプライヤーの取り組みを定期的にモニタリングし、改善を図っていきます。

大手企業のグリーン調達の取り組み

具体的な事例を交えて、大手企業がどのようなグリーン調達の取り組みを行っているかを紹介します。

事例1:旭化成グループ

化学、繊維、住宅、建材、エレクトロニクス、医薬品、医療等の事業を行う日本の大手総合化学メーカーである旭化成グループは、2019年度より「サステナビリティ」を中核に据えた中期経営計画「Cs+for Tomorrow」をスタートさせています。さらに「持続可能な社会への貢献」のため、「旭化成グループの購買方針」および「購買ミッション・ビジョン」を定められています。
具体的なグリーン購入の取り組みとして、新たな企業とのお取引開始時には、購買⽅針に基づく事前審査で評価を⾏った上で、取引を開始されています。継続の主要なお取引先企業には、「CSR調達アンケート」への回答を依頼し、A~Dの5段階に評価し、一番低い評価となるD評価の企業とコミュニケーションし、お取引先の状況に合わせた改善サポートを行い、翌年度アンケートでは評価向上サプライチェーン全体におけるCSRの取り組み状況の把握に努められています。
(参考:旭化成グループ サステナビリティレポート2022)

事例2:アサヒグループ

日本の大手ビールメーカーであるアサヒビールを傘下に持つ飲料メーカー、アサヒグループは、「アサヒグループ持続可能な調達基本方針」「 アサヒグループサプライヤー行動規範」に基づき、地球環境や地域社会に配慮した調達活動に取り組まれています。
容器や農産物原料、水資源などが主要な調達資源であるため、日本だけでなく欧州、オセアニア、東南アジアのサプライヤーの環境に関する認証や評価等を把握し、それぞれのサプライヤーに「サプライヤーCSR質問表」の提出を求め、課題の改善に取り組まれています。
(参考:アサヒグループ サステナビリティレポート 2023年6月発行)

調達部門や法人営業部門は、自社や取引先の環境負荷を削減するために、グリーン調達を検討する機会があると思います。グリーン調達は、環境に配慮した製品やサービスを調達することで、環境負荷の削減やサプライチェーンの持続可能性の向上につながる取り組みです。

メンバーズでは、企業のニーズに合わせてLCA実施を支援しています。高収益低炭素へとビジネスモデルを変革し「持続可能なビジネス成長」や「低炭素な暮らし」といった新たな価値の創出を目指します。脱炭素推進を検討されている企業は、お気軽にお問い合わせください。

ライター情報:小島 京子
株式会社メンバーズ CSV本部所属の脱炭素DXクリエイター。農学部卒。農業関連事業、スタートアップでのリクルーターを経て、2014年メンバーズ入社。メンバーズでは子会社での採用・育成・社内広報領域を担当。現在はお客様企業に常駐し、脱炭素DXを推進しています。

この記事を読んだあなたへのおすすめ

▼ セミナー/ホワイトペーパー(無料公開)


≪ メンバーズへのお問い合わせはこちら

新着記事や最新のセミナー/イベント情報などをタイムリーにお知らせしています。