地域愛から始まる、未来への道
自分が生まれ育った地域、いま住んでいる町、皆さんは好きですか?
現居住地に3か月以上住んでいる人に、いま住んでいる地域が好きかどうかを聞いたところ、全体の82.5%がいま住んでいる地域が好きであることがわかりました。また、地域に満足や愛着を感じる人ほど、生活全般の充実度が高いという結果も出ています(※1)。
大切な場所を守るため、そして発展させるために、どう行動すればよいか一緒に考えてみましょう。
多様化する地域課題
人口減少や少子高齢化の進展、グローバル化による社会環境の変化に加えて、人々のライフスタイルや価値観も多様化・複雑化してきています。また、 インターネットやスマートフォンの普及によって場所を超えた人々とのつながりが広がった一方、同じ地域に暮らす人々との交流や近所づきあいは希薄化している面もあります。
そんななか、住民のニーズや地域が抱える課題に、財政制約やノウハウに限界のある行政だけが向き合うことは困難性を増しているのが現状です。
SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」は、コミュニティの強化と個人の安全を確保しつつ、技術革新や雇用を促進しながら、土地や環境に負荷をかけない都市の維持・発展を目指すもの。
しかし、地域によって人的リソースや保有資源が異なることから、目標11を実現するようなすべてに当てはまる万能な解決策というものは存在しません。ケースバイケースで考えていかなければならず、住み続けられるまちをつくるためには、行政と地域住民の協働が求められます。
島の「小ささ」がパワーに
そんな中、自然や文化などの資源を掘り起こし、地域の活力を取り戻している島があります。
犬島は、歩いて1時間ほどで一周できる小さな島で、40人ほどが暮らしています。
2015年から「犬島ランドスケーププロジェクト」が始動し、犬島全体をひとつのランドスケープ・建築として考え、自然と社会の関係性を考えながら、ゆっくり滞在できる時間と場所の創出を進めています。島に息づく「くらし」を活かしたサステナブルな場所として、それらを体感・体験できる場づくりが進んでいる事例です。
「犬島 くらしの植物園」は、このプロジェクトの1つ目の施設。犬島の西側に位置する、長く使われていなかったガラスハウスを中心とした約4,500㎡の土地を再生し、犬島の風土や文化に根ざした庭園・植物園として蘇らせました。
しかし、「犬島 くらしの植物園」は、珍しい樹木や変わった草花を鑑賞するといった、いわゆる一般的な「植物園」ではありません。「植物とともにくらす歓び」をテーマに、自然の中に身を置きながら、食べ物からエネルギーに至るまで自給自足的な営みを行う「新しいくらし方」を、犬島のランドスケープにおいて考えていく場です。
完成された場として公開するのではなく、制作プロセスに多くの来訪者に参加してもらいながら、「くらし方」についてともに考え、長い期間をかけて作り上げていく植物園なのです(※2)。
気候や資源を生かす
世界にも目を向けてみましょう。
人口4,500万人のケニアは、そのうち40%の人が川や池などから汲んできた水を生活用水として使用しています。水場の衛生環境による感染症の拡大や水運びによる児童労働などから、多くの子どもたちの未来が閉ざされています。
そこで、ケニアのナイロビを拠点にするデザイン事務所BellTowerは、水資源センターユニット「Open Source Communities」を設計しました。
ケニアの年間降水量は1,000ミリリットル、土砂降りが30分続くと地下タンクに1万リットルの水を貯めることができます。彼らは"雨"に焦点を当て、安全な水資源へのアクセスを実現したのです。
「Open Source Communities」は、雨水を浄水装置でろ過することで、ウイルスなどを除去。水汲みにかける時間の削減、病気や死亡率の低下など公衆衛生上の課題だけでなく、女の子の就学率向上にもつながっています。
地域で調達できる材料で安全な水資源の確保を実現する「Open Source Communities」は、サステナビリティに主眼をおきながら、インフラとコストという2つのアクセスの課題解決を図っています。(※3)
ここから見えるシグナル
周りの身近なものからアイディアを生み、工夫をこらす。そして、それぞれの人が様々なかたちで関わりながら、より良い未来につなげていく。
地域の環境保全とのバランスをとりながら、地域の資源を持続可能な形で賢く活用していくことが今後の循環型地域社会には不可欠です。
ケニアの水資源センターユニットの事例では、地域に元々ある竹などの材料を使用することで、課題を解決に導いています。また、特別な技術や経験は必要なく、5人の作業員が10日間で設営できる点もポイントです。
ローコストでスピーディー、そして誰でも展開可能なソリューションは、日本の地方や災害地域でも取り入れられるのではないでしょうか。
それぞれの地域にある、自然や人材、資金などを循環させて有効利用し、地域の特徴によって補完し合うことで、循環型社会の形成に一歩近づきます。"在るものを活かし、無いものを創る"犬島の事例からも見えるように、地域のそんな在り方が、暮らしも豊かにしていくことでしょう。
大切な場所をもっと好きになれるヒントを見つけていきたいですね。
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