サーキュラーエコノミーを実践する方法 「サーキュラーデザイン」の考え方
近年、気候変動対策やTNFDの開示、海外ではエコデザイン規制など、サーキュラーエコノミーにおける関心が日々高まっています。サーキュラーエコノミーの実践という大きな宿題が出ている企業も少なくありません。
今回は、サーキュラーエコノミーを実践するための手法である、サーキュラーデザインの考え方をご紹介します。
サーキュラーエコノミーの捉え方
サーキュラーエコノミーとは、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提として成り立ってきた経済システム(リニアエコノミー=直線型経済)に替わる考え方です。その背景には、環境負荷の低減に対する社会的な関心という側面だけでなく、爆発的な人口増加と枯渇していく資源の試算により、「資源を奪い合う」未来が予想されていることがあります。
このような背景から、特に歴史的に資源を持たない国は、国家を挙げて対応を進めています。その1つがオランダです。
「サーキュラーエコノミー=廃棄物を出さない」とイメージする人が多いですが、サーキュラーエコノミーとは、廃棄を出さないようにするということのみでなく、資源を「再生する」ことが重要であるという解釈が世界では一般的です。また、サーキュラー”エコノミー”のため、ビジネスとして機能して初めて実現します。たとえば、廃棄のコストを削減するための対策の意識だけでは、サーキュラーエコノミーとは言い難いのです。
また、日本企業では気候変動対策とサーキュラーエコノミーを分けて推進しているケースが多く見受けられますが、気候変動対策の45%はサーキュラーエコノミーの推進が鍵と言われており、相互の関係性を保ちながら推進することでより本質的なサーキュラーを実現できると考えられます。
ビジネスとしてのサーキュラーの理解
サーキュラー型・5つのビジネスモデル
”サーキュラー型・5つのビジネスモデル” の理解として重要なポイントは、「製品寿命の延長」です。なぜなら「製品寿命の延長」は、従来の「作って・売って・儲ける!」というビジネスからの脱却を意味しているからです。これをサポートする考え方として「シェアリング・プラットフォーム」や「サービスとしての製品(PaaS)」があります。それらの体制が構築されることで、循環型サプライや改修とリサイクルが適切な形で実装することができます。
「製品寿命の延長」は、従来型のビジネスの脱却であり、ビジネスを設計する上で、我々も思考を変えていくことが求められているのです。
サーキュラーシステムの解釈
サーキュラーシステムの理解において、エレン・マッカーサー財団が発行している、3原則に基づいた概念図、通称「バタフライ・ダイアグラム」を活用してみましょう。
経済システムとして、資源の投入し、生産工程を経て廃棄するという、従来のシステムが中央に描かれています。この経済システムを軸にどのようにサーキュラーにしていくのか、法則を見ていきましょう。この法則のゴールは廃棄や汚染を最小化することです。
①インプットの改善|Narrow・Regenerate
インプットする資源は、木材や綿、食料などの、自然界において分解・再生することができる「再生資源」と、鉄やアルミニウム、プラスチックなどの、有限で枯渇性があり、自然界ではすぐに分解できない「ストック資源」に二分されています。
活用する資源は、「再生資源」に移行することでより再生をめざす「Regenerate(再生して使う)」と、資源の活用をより少なくする「Narrow(少なく使う)」を意識することが大切です。
この2つの資源において最も重要なのは、それぞれのサーキュラーにおけるゴールと方法が異なるため、「再生資源」と「ストック資源」の混在を避けることです。たとえば、木材(生物資源)と金属(ストック資源)を組み合わせて作った家具や、コットン(生物資源)とポリエステル(ストック資源)を混合して作られた衣服などが挙げられます。
②できるだけ長くループさせる|Slow
二分されたそれぞれの資源の枠組み内で、長く循環させるように設計することで、より長く資源を活用することが求められます。
また、この長いループの中で意識すべきは、より小さいループで回すことです。 大きなループとしてリサイクルが位置づけられ、リサイクルは最終手段とされています。リサイクルをするということは、現状状態から新しいものへ再製造することを意味しており、必要な工場への輸送や、加工工場での溶解分解によって、エネルギーが多く消費されます。そのため、できるだけそのままの形・素材を循環させる方法を優先することが重要です。
③繰り返し何度も使う|Close
「長寿命化」という言葉は、サーキュラーデザインを実行する上で基盤となります。この長寿命化をサポートするためには、長く使ってもらうための工夫が必要です。そのため、物理的耐久性と情緒的耐久性の両方が求められますが求められます。情緒的耐久性を維持するためには、メンテナンスや修理ができる商品開発またはそれ自体をサービスにすることだけでなく、提供する商品サービスがユーザーにとって信頼できるものかどうかが重要です。つまり、商品•サービスを提供する(主体)企業とユーザー間の日々のコミュニケーションが鍵となるのです。
これらの法則を詳しく理解することで、経済システムの一部だけ対応すれば解決するようなものではないことが分かります。全体像を構築することで、原則的なサーキュラーが完成します。つまり、全体を設計すること=デザインすることが必要不可欠となるのです。
また、別の視点での「サーキュラーデザイン」の理解も重要です。バタフライ・ダイアグラムでは、経済システムを軸にデザインする方法を表していますが、これらを考えるうえでもう一つ重要な視点として「階層」があげられます。
私たちは、サーキュラーデザインに着手する際に、対象の事柄や発散されたアイデアを「プロダクト」「ビジネスモデル」「エコシステム(社会システム)」の3つの階層に置き、点である対象物(ズームイン)と対象物が社会にインストールされた状態(ズームアウト)の視点を持ち考察します。対象物がどのような役割を持ち、どのように影響し合うのかを、ビジネスの視点、社会の視点で考えると、アイデアの幅も深さも広がり、目的としていたサーキュラーを描きやすくなります。
サーキュラーデザインに求められること
サーキュラーエコノミーは、リニア型ビジネスからサーキュラー型ビジネスに変革することを大前提としており、これは新しいアイデア発想やビジネスを実装していくことを指しています。
サーキュラーデザインとは、サーキュラーエコノミーを実装する手法であり、大量生産大量消費を助長するビジネスになっていないか、環境負荷を低減できているか、社会における価値を創造できているかを問い続け、実装と評価をくり返すことが、サーキュラーエコノミーにおける取り組みそのものなのです。
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