食器を食べる、新体験
普段、何気なく口にする「アイスのコーン」ですが、実は資源の効率的な利用と美味しさを兼ね備えた、合理的なアイデアなのではないかと、最近気づきました。「アイスのコーン」は手を汚さない役割を持ちつつ、ウエハース生地やワッフル生地で作られているため、「食べられる食器」としての役割を果たしています。
近年では、食べられる容器やカトラリーが続々と登場しているようです。今回のシグナルでは、そんな「食べられる食器」たちをご紹介します。
まずは、減らすこと
2019年における日本のプラスチックごみの排出量は約850万トン。そのうち、およそ40%が使い捨てプラスチック容器によるごみです。そのうえ、日本の一人当たりのプラスチック容器包装廃棄量は、世界でワースト2位と言われています。
またコロナ禍の影響で、2020年3月ごろからは外出自粛により、飲食店からのテイクアウトやデリバリー(配達)が増え、弁当容器やランチボックス、カップなど、家庭から出るプラスチックごみが増えています(※1)。 世界的にプラスチックごみ問題が深刻化し、問題視される中で、使い捨てのプラスチックごみを急増させるという矛盾した動きが出ているのです。
こうした状況の中で、私たちにできることの1つが、プラスチックゴミを減らすことです。特にプラスチック容器などの使い捨ての消費を抑えるにはどのような取り組みが必要なのでしょうか?
使い捨てから、”使い食べ”へ
“使い捨て”の概念を覆し、処理方法に新たな選択肢を提示した商品があります。
それが、アサヒグループと丸繁製菓によって共同開発された飲料容器「もぐカップ」です。
「もぐカップ」は、国産のじゃがいもでん粉を焼き固めることにより作られた食べられるコップ。容器自体にそれぞれ味付けがされており、飲み物や食べ物との組み合わせを楽しむことができます。
ビールやドリンクを注ぐのにぴったりなプレーンをはじめ、おつまみを入れるのに相性抜群のえびせん、チョコ味があります。
じゃがいもが原料と聞くと、すぐに容器が溶けて中身が漏れてしまわないか心配になる人もいるのではないでしょうか?しかし「もぐカップ」は高温高圧で原料を焼き固めることにより耐水性を向上させていることから、飲み物を入れても1時間はもつとのことです(※2)。
使い捨てプラスチック問題に関心が集まる中、「もぐカップ」の展開によって、“使い捨て容器”から“使い食べ容器”という新たなライフスタイルが拡大されるかもしれません。
また、”使い捨て”ならぬ”使い食べ”できる「もぐカップ」は、“使い捨て”という消費行動自体を変革し、消費者に楽しみながらプラスチック削減に取り組めると認識させることができるのではないでしょうか。
「おから」からスプーン開発
沖縄の食文化に欠かせない、伝統ある「島豆腐」。
沖縄は豆腐の消費量が日本一のため、豆腐を作る際に副産物として生まれる「おから」の量も多くなってます。
近年の健康志向の高まりにより、おからは高たんぱくで低カロリーな食べ物として認知されつつある一方、傷むのが早いことから廃棄処理されることがほとんどでした。
日本豆腐協会によると、国内のおからの年間発生量は約70万トン。そのうち、約3〜6万トンが捨てられているのだそうです。また、おからの廃棄には産業廃棄物として処理コストもかかります(※3)。
そんな中、おからのフードロスを無くしたいと、学生ベンチャーが立ち上がりました。当時、琉球大学の学生二人が「Okaraokara(オカラオカラ)」というプロジェクトを立ち上げ、現在も課題解決に向けて取り組んでいます。
愛知県にある株式会社勤労食と共に開発したのが、食べられるスプーン「パクーン 島おから味」。
国産野菜と小麦からできている従来のパクーンに、島豆腐から採れたおからを配合した沖縄オリジナルの食べられるスプーンです。クッキーのようにおいしく食べられる上に、ソフトクリームやかき氷に使っても、最後まで崩れることはありません。
フードロスやプラスチック削減で環境にやさしく、さらにちゃんとおいしい。「パクーン 島おから味」の魅力が周知されている県内では、すでに多くの飲食店で取り扱われています(※4)。
故郷を守る想いをきっかけに生まれた「パクーン 島おから味」。食にまつわる課題を地域の新たな魅力に変え、地域単位での資源循環に貢献している事例ですね。
ここから見えるシグナル
プラスチックごみ削減のためのアクションの一つが、そもそもの使う量を減らすこと。とはいえ、急に生活者に大きな制限を強いることはかけることはできません。
「捨てる」行為自体が完全に悪いという訳ではありませんが、「捨てる」行為が環境に負荷を与えることがまだまだ多いのが実際です。。実際、適切な資源循環や環境への配慮を考えた上で「捨てる」ことは、持続可能な選択肢のひとつ一つとして十分考えられます。しかし、現実にはまだシングルユースプラスチックの使用が減っていないという現状もあります。
プラスチック容器の代わりとなり、食事の場を楽しくサステナブルに変えられる「もぐカップ」や、廃棄のおからから生まれた、フードロスと脱プラスチックを同時に実現した「パクーン」。今回取り上げた「食べられる食器」は私たちにとって、環境保全や循環型社会実現のための新たな選択肢となるのではないでしょうか。
ネガティブなイメージを持ってしまいがちな「捨てる」に対し、「食べる」という行為は我々にとって必要不可欠なポジティブなアクション。そのアクションと、「そもそも捨てない」というアイデアが結びつくことで、持続可能な未来に向けた変化も起こしやすくなることでしょう。
ぜひあなたも「食べられる食器」から、楽しく脱プラスチックに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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