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「地球環境の健康と快適があってこそ」LIXIL:Social Good Company #47

※この記事の情報は2020年10月01日メンバーズコラム掲載当時のものです

「RE100」への参加とともに、「環境ビジョン2050」を策定し、CO2排出ゼロを目指す活動を本格化させたLIXIL。環境に優しい製品など、住まい・暮らしを通して社会・環境課題をビジネスで解決してきた同社にお話をうかがいました。

  • 住宅関連の事業活動は地球環境に直結

  • 「衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」の3本柱がCR活動の軸

  • 究極の目標はサプライチェーン全体のCO2排出ゼロを通した健康な地球の創出

<インタビューにご協力いただいた方>
株式会社LIXIL 環境推進部 部長
川上 敏弘 さま
<プロフィール>
1966年大阪生まれ。同志社大学を卒業後、株式会社INAXに入社。IT部門、人事部門を経て現職。LIXIL本社の環境部門で、LIXILグループ全体の環境戦略の立案と環境計画の推進を担う。

● LIXILは「RE100」への参加をはじめ、気候変動や地球温暖化など環境をテーマとした課題に精力的に取り組んでいらっしゃいます。

私たちの住宅関連の事業活動そのものが、地球環境に直結しているという認識を持っています。住まいやオフィスをはじめとする生活環境というのは、人間が健康・快適に暮らすうえで、重要な基盤だと捉えているからです。

「優れた製品とサービスを通じて、世界中の人びとの豊かで快適な住生活の未来に貢献」することが私たちの企業理念ですが、まさに、住まいに関わるような製品やサービスを通して、人々の快適で健康な暮らしや、暮らしの質向上に貢献ができますし、事業活動を通じて地域や地球にも貢献できるのです。私たちのビジネス活動そのものが環境活動である、という感覚で取り組んでいます。

● 住宅は暮らしに密着しているだけに、エネルギー消費によるCO2排出も大きく、「地球環境に直結している」事業という言葉には説得力を感じます。

一説によると、地球上のエネルギー消費量のおよそ3分の1が、ビルや建物など建築物で消費されている言われています。2019年の秋に、国連気候行動サミットの開催に合わせて、ニューヨークで気候変動対応の重要性を普及啓発するイベント「クライメイト・ウィーク」(気候週間)が開催されました。この場で参加した講演によると、ニューヨークではCO2全排出量の約7割が、建物から排出されているとのことでした。建物から排出されるCO2の削減は、脱炭素社会の実現に向けた鍵なのだだと改めて感じました。

実際に、私たちの事業をバリューチェーン全体で俯瞰すると、CO2排出量の90%以上が製品使用時に集中しています。製品の製造工程でもたくさんのエネルギーを消費していますが、エネルギー負荷の大部分は、実はお客さまが暮らしのなかで製品やサービスを使われる部分なのです。

生活の基盤と言える住まいと暮らしのCO2を、どうやって削減していくのか、これは日本のみならず世界全体の課題となっています。だからこそ、総合住生活企業であるLIXILは、製品やサービスを通して大きな貢献ができると感じています。

● 住生活に関わる企業として、CO2排出量削減のため、具体的にはどのような取り組みをされていますか?

たとえば、建物の外からの熱の出入りが大きい窓やドア、躯体パネルの高断熱化は、暖冷房に由来するCO2削減に貢献することができます。また、節水性能が高い水栓金具は、給湯に由来するCO2削減に貢献することができます。

LIXILは、窓やドアなどの建材製品、水栓金具をはじめとするバスルームやキッチンほかの水回り製品など、幅広く製造販売しています。そうした住宅関連製品の特徴の1つは、基本的に耐用年数が長いことです。15年、20年と使用年数が積算されると、製品当たりのエネルギー消費も大きなものになりますから、環境に良い製品をお届けする責任があると感じています。

最近は、スマート宅配ポストにも注力しています。IT技術を活用した宅配ボックスは、便利であるだけでなく、再配達に関わるCO2削減の効果があります。東京都江戸川区・江東区と協働した実証実験では、再配達率が40%から14.9%に低下し、再配達に由来するCO2を削減することができました。

引用:LIXIL 環境ビジョン

● 顧客の消費活動を通して、環境課題に対する生活者の意識変化を感じることはありますか?

長期に渡ってLIXIL製品を使っていただくなかで、イニシャルコストは少し高くてもランニングコストはリーズナブルに、そして健康で快適な暮らしを選択したい、という意識変化が生活者のなかに広まってきたように感じています。

また、ESG(環境・社会・ガバナンス)に優れた会社の製品を選択したり、投資先とする動きも顕著になってきました。私たちは環境ビジョン2050で、「Zero Carbon and Circular Living」(CO2ゼロと循環型の暮らし)を掲げています。これに沿った取り組みを加速させることで、社会に必要とされ貢献ができる会社であり続けたいと考えています。

引用:LIXIL 環境ビジョン


● 環境課題に対する取り組みを通した消費者とのコミュニケーションに関しては、どのようにお考えですか?

私たちの製品を使う体験そのものが、コミュニケーションなのではないか、と考えています。

たとえば、LIXILには水栓金具にセラミック製の浄水カートリッジをビルトインしている製品があります。水栓金具から簡単に美味しい水が出てきますので、これをマイボトルに入れて持ち歩けば、ペットボトルの水を買う必要も、ペットボトルを廃棄する必要もなくなるわけです。

こういった環境に良く経済面でも優れるライフスタイルを、お客さまに提案しています。また、LIXILの日本国内のすべての事業所では、この美味しい水が出る浄水栓を使っています。個々の社員が自らの体験を通して、私たちが目指している環境に良い暮らし方の心地良さを実感しています。

外付け日よけ製品「スタイルシェード」も、こうした取り組みの1つです。カーテンでは遮ることのできない光や熱を、建物の外で遮る製品です。断熱効果が高くエアコンの効率が上がりますので、CO2排出の削減に加えて、室内熱中症という社会課題にも貢献することができます。お客さまとともに実証実験を行って効果を測定し、室内の熱環境を考えるといった活動を、自治体などと共働して進めています。

● 環境問題だけでなく、そのほかの社会課題解決型ビジネスも実践していらっしゃいます。そうした企業文化は、どのような発想が起点となっていますか?

たとえば、安価かつごく少量の水で流せる簡易式トイレシステム「SATO」は、これまでに380万台を出荷し、世界38カ国以上で1,860万人の人々の衛生環境を改善しています。これは、社会課題を起点として、研究開発した製品です。

LIXILでは、コミュニティデーという社員全員参加型の社会貢献活動を行っています。コミュニティデーでは、毎年各部署でCRの3つの柱「衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」に関わること――観光地のトイレのおもてなし清掃や、エコたわし作り、水辺の清掃活動など、何か1つに取り組んでいて、社員が社会課題を考える機会にもなっています。こういった活動を通じて、社会課題に対する意識が社内に浸透し、理解が深まってきていると感じます。

● 事業運営に関わる電力を、100%再生可能エネルギーで調達することを掲げて「RE100」にも参加しています。また、「環境ビジョン2050」のなかでCO2排出ゼロの目標も発表しています。具体的な達成プランを教えてください。

「RE100」に関してはグローバル全体で活動を展開していますが、国と地域によって事情は異なります。再生可能エネルギーの普及が進みコストも十分に下がっていることから、導入しやすい拠点がある一方、日本のように、まだコストがかかるだけでなく供給量も十分ではないことから、即導入というわけにはいかない拠点もあります。それぞれの国と地域に応じた目標を設定して、再生可能エネルギーの導入を進めていきます。

現在のところ、もっとも進んでいる欧州では、すでに工場や物流センターの100%再生可能エネルギー化を実現しています。日本では、東京の本社ビルや京都ショールーム、INAXライブミュージアムなど、一部の拠点で導入することができました。

製品の使用場面でのCO2削減については、社会やインフラの変化に合わせて、私たちの事業活動の取り組みを加速させたいと考えています。LIXILの主力製品である断熱性の高い窓、節水性能の高い水栓やトイレ、あるいは保温性能の高い浴槽などを、住まい・暮らしのなかで使っていただくことで、生活者の皆さん自身が我慢や無理をすることなく、エネルギー削減に貢献できることが、私たちの役割だと考えています。

● 脱炭素の取り組みに向けて、住宅関連産業の一員としての視点から、計画されていることはありますか?

私たちが単独で頑張って脱炭素に取り組んでも、その効果は限られてしまいます。ですから、住まいと暮らしに関わるサプライチェーン全体の脱炭素化という課題はあると思っています。これは壮大なテーマではありますが。

そのためには、サプライチェーンの川上・川下の個々の皆さんがRE100や脱炭素の目標を掲げて取り組んでいくこと、さらには、共創・共働していく活動を通して、住まいと暮らしに関わる産業全体でCO2排出ゼロを実現し、地球環境と社会に貢献することが究極の目標だと思います。

● 2050年にCO2排出ゼロという目標を掲げ、「豊かな社会」もキーワードの1つとしているLIXILが目指す、2050年の未来とは、どんな世界なのでしょうか? 

私たちは、住まいと暮らしをコア事業としています。その住まいと暮らしのベースになっているものは、地域であり、地球の環境だと思っています。建物の中の住環境を健康で快適、かつ、環境にも良いものにしていくこと、そして、そうした活動を地域へ、地球全体での実現へ、と拡げていくことが理想です。

どんなに建物の中が健康で快適な環境に整っても、一歩外に出ると、気候変動の影響で洪水が起こる、巨大な台風が襲う、熱波が来る、といったことが起こるとしたら、それはトータルで考えたときに健康・快適な暮らしとは言えないと思うのです。地球環境の健康・快適というベースがあるからこそ、住まいと暮らしの健康・快適も実現する――その根本を念頭に置き、事業を通じて健康な地球づくりに貢献していきたいと考えています。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月メンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長、2022年度からは、アースデイジャパンネットワークの共同代表を務める。

※この記事の情報は2020年10月01日メンバーズコラム掲載当時のものです

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