CO2吸収源に目を向ける(前編)
「脱炭素社会」への転換が求められる今
2022年夏、パキスタンで長雨の影響により洪水が発生し、国土の1/3が水没するというニュースを目にされた方も多いかと思います(※1)。
パキスタンだけでなく、今年は日本でも過去に例を見ないほどの大規模な豪雨が発生し、ヨーロッパでは熱波による山火事が頻発するなど、気候変動の影響を痛感する機会が多くなりました。
2021年、英グラスゴーで開催されたCOP26では、気温上昇を産業革命以前と比べ1.5度に抑えることが定められ、世界中で脱炭素に向けた対策が講じられています。日本でも、2050年までのカーボンニュートラルが掲げられ、いかにCO2排出量を減らしていくかが目下の課題となっている企業も多いのではないでしょうか。
CO2排出量と吸収量の現状
グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)(※2)の発表によると、2021年の化石燃料によるCO2排出量は、世界で364憶トンでした。一方、CO2吸収量は、排出されたCO2 の約半分程度となっています(過去10年間で53%)。具体的には、海洋でのCO2吸収量は年間103憶トン(2011~2020年の平均)で総CO2 排出量の26%、陸上でのCO2吸収量は年間114憶トン(2011~2020年の平均)で総CO2 排出量の28%を占めたとのことです。
IPCC(※3)の第6次報告書で、「人間が地球の気候を温暖化させていることに、疑う余地がない」と発表されたように、私たちの生活のなかで気温上昇の要因となるCO2排出量をいかに抑えるかがとても重要です。その一方で、森林や海洋といった地球上の自然が吸収・固定してくれるCO2の量を維持し、増やしていくかに目を向け、考えることも大切です。
CO2を吸収してくれるものは?
吸収してくれるものとして、まず思いつくのが「森林」ではないでしょうか。特に「原生林」の保全は、気候変動だけでなく生物多様性の観点からも重要だと言われています。たとえば、アマゾン熱帯雨林などがその1つです。CO2の吸収量に関していえば、森林には3000億トンの炭素が貯蓄されているとも言われており、あらゆる森林減少を食い止めて、森林資源を回復させれば、世界の炭素排出量の最大1/3まで相殺できる可能性があるとの見解もあります(※4)。
また、「沿岸湿地」も炭素を吸収・固定してくれる大切な存在です。陸と海の境目となる沿岸湿地にはマングローブが分布していることも多く、これらの沿岸湿地は、何千年もかけて大量の炭素を隔離しているため、いかにそれを破壊せず保全するかが鍵となります。また、藻場やサンゴ礁も同様の役割があり、湿地を含めてこれらで吸収された炭素は「ブルー・カーボン」と呼ばれ、近年注目されています。日常生活でいかにCO2を排出しないかはもちろん重要ですが、吸収・固定してくれる森林や湿地を守ることも忘れてはなりません。
後編では、ニューカレドニアでの体験をもとに、マングローブやサンゴの保全についてお伝えします。
▼ CO2吸収源に目を向ける(後編)はこちら
※1:国土の1/3が水没
※2:グローバル・カーボン・プロジェクト2021
※3:IPCC
※4:『ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』ポール・ホーケン編著
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