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「アパレルの大量廃棄問題に向き合い、視点を変え気付きや価値を見出す」 FINE:Social Good Company #43

※この記事の情報は2020年03月05日メンバーズコラム掲載当時のものです

供給量29億点に対して、実に約半数が売れ残ると言われる国内のアパレル商品。そうした大量生産、大量廃棄の課題をブランドタグ付け替えにより解決を図るRenameという取組み。

今回は、新しいアパレル再販の仕組みを構築しているFINEさんにインタビューの機会をいただきました。

  • アパレル業界の課題を自らが発信し、事業を通して廃棄問題の解決に取組む。

  • FINEとの取引は、在庫や廃棄問題に対して真剣に取組む企業の証しとなる。

  • 直近3年間の売上は、毎年前年比150%を達成、急成長を遂げる。

<インタビューにご協力いただいた方> 
株式会社 FINE 取締役COO
津田 一志 さま
<プロフィール>
山口県出身。大学卒業後、EC事業の立ち上げやスマホゲーム会社のマーケティング職を務める。2016年5月、FINE入社。取締役COOとして業務全般を統括。

● FINEさんの事業内容をご紹介下さい。

私たちのビジネスは、アパレル企業さんの在庫を買い取り、商品のブランドイメージを保ち、再販するというシンプルなモデルです。1つは、Renameのタグに付け替えて、ブランド名を変えて販売すること。もう1つは、元のブランド名を活かして再販しています。企業さんのご要望に応じて、2つの方法で、アパレル在庫を有効活用するという事業をしています。

● 商品買い取りはどのようなプロセスで行われていますか?

基本的には、企業さんからお問い合わせをいただき、買い取りをしています。Webサイトを見たお客さまから連絡をいただいたり、過去、お取引があった企業さんから、ご紹介をいただいたりしています。

● タグを付け替えるというRenameのビジネスをスタートした当初、業界の反応はいかがでしたか?

当時は、FINEという会社は認知されていませんでしたし、他社より高く買い取るということだけでは、なかなかお売りいただけなかったと聞いています。アパレル企業さんは、商品のブランドイメージをとても大事にしていますので、買い取り価格よりも、商品をきちんと扱ってもらえるかをとても気にします。

そうしたなか、着実に実績を積み上げ、メディアに取り上げていただきながら、少しずつお取引が増えていきました。それまでは、大半がお取引先からの紹介でしたが、2年前位から、直接お問い合わせをいただき、お取引をしています。

FINE Webサイトより

● 世界的なアパレルブランドの廃棄問題もニュースで取り上げられています。売れ残った商品を再販売するということでは、社会のニーズに応えていると言えます。

そうしたニュースもきっかけになっているとは思います。また、廃棄問題と併せて、弊社がメディアで取り上げられることも増えて、アパレル企業さんにも弊社の存在を知っていただけたことで、私の取組みへの理解も進み、問い合わせも増えていると認識しています。

また、2年前から、FINE MAGAZINEというオウンドメディアを自社で運営しています。アパレルの廃棄問題も一般的なニュースでは全く取り上げられなかった頃から、そうした話題を発信していました。

● 同じ業界の中から、このような問題を自ら発信することはなかなかありませんよね。

廃棄問題は、顕在化すると確信していました。これまでは業界の中でしか知られていませんでしたが、こうした情報を発信することで、SDGs、サステナブルといった流れもあり、オウンドメディアへのアクセスや取材も増えました。

私自身は、アパレルの廃棄問題の全てを否定しているわけではありません。ただ、ビジネス上の合理性はあるのかもしれませんが、今はそれを認めない社会になった。そう捉えています。

アパレル企業さんは、私たちのパートナーでもあり、その企業さんを否定する気持ちはまったくありません。どうすれば一緒にこうした課題を解決し、捨てられてしまう商品を減らすことができるか、そうしたスタンスで取組んでいます。

● 国内では、生産されたアパレル商品の約半分が売れ残ると言われています。このような状況が生まれるはなぜですか?

よく聞く1番の要因は、大量生産です。なぜ大量生産するかと言えば、安く提供しないと売れないから、そして安くするためには大量に作り、1点当たりのコストを抑えているということです。アパレルの消費は急に増えるものでもありませんし、これだけの量が供給されればその分、売れ残ってしまいます。

また、アパレル業界は、ある程度の廃棄ロスを見込み価格設定をしているといったことも耳にします。適切な量を作るよりは、多めに作って余ったモノは捨ててしまった方が、つまり、ある程度の量を廃棄しても利益が残る構造になっていると言えます。しかし、今後は、そうしたビジネスのやり方は見直すべき時代なのかもしれません。

● Rename事業を通して、廃棄問題の課題を解決し、アパレル企業のニーズにも応えているわけですね。

そうした課題に多少なりとも貢献できていると思います。また、私たちの会社の信頼性も高まった事もその要因と言えます。私が入社して取組んだ事の1つに、Webサイトや企業ロゴの刷新が挙げられます。単に高価買取をするということではなく、アパレル企業さんに寄り添ったメッセージ発信することに注力しました。Webサイトを見てお問い合わせをいただいた企業さんからは、買取業者として安心できそうだと言われることが増えました。

最近では、アパレル企業さんからも、弊社やRenameに対して、ポジティブな感情を抱いていただいていると感じています。Renameに参加する企業は、ブランド価値や企業価値が高まる、そして、透明性を担保するために、将来は弊社と取引していることをオープンにしていただける企業も出てくるのではと感じています。企業にとって、弊社と取引することは、在庫や廃棄問題に対して真剣に取組む企業の証しになればと思います。

● コーポレートサイトでは、事業への想いや共感できるメッセージを発信しています。

どこまででできているのか分かりませんが、意識して取組んでいます。コーポレートサイトやオウンドメディアも含めて、いかにお取引する企業さんに安心して頂くか、きちんとと理解していただけるかということにもっとも注力しました。そうした取組みにより、様々なお取引が増えたと思っています。

FINE Webサイトより

● Renameのタグを付けた商品の在庫や廃棄はいかがですか?

取材でよく聞かれる質問です。今のところ、廃棄は販売できないレベルの不良品以外ではありません。ブランドによって異なりますが、買い取った商品は、1年目で7~8割位、さらに2~3年をかけてすべてを売り切っています。

買い取った商品のごく一部に、新品としては販売が難しい、汚れや多少の難あり商品が出てしまいますが、そうした商品は古着として、リサイクルショップに買い取っていただいたりと、なるべく再利用しています。

● Renameの事業では、ブランドと洗濯表示のタグを付け替えていますが、そうした発想はどうやって生まれたのでしょう?

いろんなめぐり合わせがあったと言えます。以前は、買い取った商品をオークションサイトでも販売していました。しかし、どんな有名なブランドでも、商品によっては、売れないものもありました。そうしたなか、商品を販売する際に、そもそも、ブランド名を出す必要があるのか? ブランドを表示せずノーブランドの方が売れるのでは? と考えて販売したところ、これまで以上に売ることができました。

● ブランドを表示しないことで、売れ行きが上がったということですか?

売れ行きが上がるというよりは、ブランドを表示しないことで、売れる商品もたくさんあることがわかりました。ブランドで商品を選ぶ人は当然いるでしょう。しかし、ブランドへのこだわりはなく、掲載されている画像やコメントを見て買っていただく方も多いことが分かりました。ブランド名を無くすことで商品だけを見ていただける、そうした気付きもあり、あえてノーブランドにしてしまうことに抵抗はありませんでした。

そうしたなか、あるお取引先から、タグを取り外して売ってくれないかという相談があったんです。しかし、そうした商品は、訳あり品として低価格でしか売れません。そうなると、服本来の価値を最大限引き出すことはできません。そうであれば、きれいにタグを付け替えることで、品質を最大限維持でき、買った方にも長く大切に使っていただけるのではないかと考えました。

その結果、社内でタグを付け替えることにトライしてみようと。お世話になっていた倉庫会社さんが、以前はアパレルの加工やお直しをしていたということで、協力をいただき、そうした取組みをスタートしました。

● 何かしらのブランドとして存在していた商品のタグを付け替えて販売するというのは、画期的です。

アパレル業界において、ブランドのタグをとってしまうことは、タブーなのかもしれません。ただ、それよりもどうしたら製品を大切に扱うことができるかを考えた結果でした。

● 業界の外にいたからこその発想なのかも知れません。

今はアパレル業界出身の社員もいますが、当時は業界出身者がいなかったからこそ、考え付いたと言えます。同じようなことを行う会社はあるかもしれませんが、オープンにはしないと思います。弊社では、あえてタグの付替えをオープンにしています。元は在庫になってしまった商品ではありますが、タグを付け替えることで、また別の価値が提供できるのではないか、そうしたことをメッセージとして伝えています。

オンラインショップを拝見して感じたことは、扱っている商品は、国内のきちんとしたブランドで、しかもそうした商品を格安で手に入れることができる、つまり、Renameタグ付きの商品に対しての安心感やお得感でした。

ありがとうございます。そう感じていただけるととてもうれしいです。私たちは、きちんとしたアパレル企業さんと、正規のお取引により事業をしていますので、扱う商品は、本当に安心していただけるものであると思っています。

● 現在のB2C向け販売チャネルは、ECサイトのみですか?

現時点ではそうです。今は、消費者の方に向けたプロモーションまで、手が回っていないのが正直なところです。有料広告に大きな投資もしていません。一方で、商品を仕入れないことには、ビジネスとして成り立ちませんので、PRは企業向けにフォーカスしてきました。今はいかに消費者にどう伝えていくか、日々課題として進めています。

最近は、B2C向けに、ポップアップやこだわりを持ったオーナーやつくり手のショップで販売をしています。たとえば、愛知県のご夫婦が経営するセレクトショップや、岐阜県でオーガニック・ジュースを提供するお店です。こうした方々は、Renameの取組みに共感し、店頭やSNSなどでご自身の言葉で発信していただいています。少しずつではありますが、こうしたお店を起点に新しいファンが増えています。

● 販売するショップの方がRenameのエバンジェリストの役割を担っていますね。

まさにそうです。弊社では、ストーリーテラー、つまり、語り手の人たちをどんどん増やしていきたいと思っています。オーガニック・ジュースのお店では、飲食店で服が売れるのか疑問でしたが、初日にいきなり商品が売れたのは意外でした。それはそのお店のオーナーの方が、きちんとRenameのストーリーを語っていただいているからだと考えています。

● オーガニックのジュースを求めるお客さんにとって、Renameは共感できるストーリーを持ち合わせていると思います。

色々と共通点があると思います。これからは、こうした私たちの活動を理解し、共感していただけるところへの卸を強化する計画です。そして、販売する際に、共感いただいたことをご自分の言葉で語っていただければ、Renameの新しい可能性や価値が生まれると思っています。

通常のブランドであれば、イメージを壊さないように、固定のメッセージやクリエイティブがあります。しかし、弊社では、売り手が自由にRenameの商品を販売する、そうした世界を作りたいと思っています。

● 売り手が自由にRenameの商品に色を付けるということですね。

激安販売などのNGワードは設定するかもしれませんが、ブランドタグを付け替えていますので、売り方や販売価格は基本的に自由です。そうしたことを活かし、Renameを通して、お店が自由に商品の発信していただければと思っています。サステナブルという切り口での表現かもしれませんし、まったく別の切り口でもいいかと思います。

● ブランドして面白い考え方ですね。

Renameは、ブランド名のようでブランド名ではありません。私たちは、服の新しい売り方と言っています。これまでとは違う売り方であることを訴求しています。まだまだ伝えきれていませんが、Renameを通して、別の価値を提供していきたいと考えています。

● 廃棄されてしまう商品に新しい価値を付けて販売するということで、社会課題の解決に大いに貢献できていると思います。一方で、そもそも、不要なものは作らないという考え方もありますがいかがですか?

余分なモノは作らないといったことは必要だと思いますが、それよりも、モノをどうやって選ぶのかを社会に訴求していくべきであると考えています。

最近、弊社では、大手アパレルメーカーのクロスプラスさんとの業務提携により、Rename X(リネームクロス)という、廃棄予定の生地を使って商品を作り、販売するプロジェクトをスタートしています。

FINE Webサイトより

廃棄予定の生地を使って、納期を指定せずにオーダーをしています。工場にはどうしても閑散期がありますので、そうしたオーダーはメーカーさんにとってもメリットがあります。またクロスプラスさんでは、既に多くのデザインを持ち合わせていますので、そうしたデザインを組み合わせて、商品を作っています。

見た目や価格が他とそれほど変わらないモノであっても、そこには課題解決のストーリーというコトがある。それは服選ぶ理由になるのではないかと考えています。アップサイクルの事業ですが、目的は、服を選ぶための新しい理由を作るということです。

服買う理由には、価格とか品質、デザインに加えて、広告の影響もあるでしょう。自分で選択したつもりが、実は選ばされていた。そんなこともあるのではないでしょうか。結果的に大切に扱われない、なんてこともあると思います。消費者自身が考えモノを選ぶシーンが必要だと考えています。企業は消費者を見てビジネスをしていることが大半だと思います。つまり、消費者も変わらないと、それを見ている企業も変わらない。そういう意味では、両方にアプローチする必要がありますが、今は、アップサイクルという手段でスタートしています。

● そうした事業の背景を知れば、服への愛着も深まります。

大半の服は、それを知れば、使わずに捨てるというのは抵抗があるでしょう。もう少し大切に着よう、もう少し考えて選ぼう、買っても無駄にならないか、そうしたことを考えるきっかけになれば、結果的に良い循環になるのではと思います。Rename Xは、そうした事を伝えるためのプロジェクトです。

買わないというのも選択肢の1つではあるとは思いますが、それよりも買い方や選び方を考えることが重要です。

● 買い物にも自分の意志を持つということですね。

なぜこれを選んだのかと聞かれたときに、何となくではなくて、その理由を言える。それは買わされたではなく、自らの選択であり、それが何かにつながる。選ぶことで、できることがある。何が正解であるかは分かりませんが、消費者の振る舞いに、少しでも変化を与えるためのプロジェクトと位置付けています。

● Rename Xはブランド名で、貴社オリジナルの商品ですね。

ブランドとも言えますが、弊社ではあえてプロジェクトと呼んでいます。2019年11月に、少量のワンピースを作りましたが、大変好評でした。購入いただいた人すべてが、開発の背景を知っていたわけではないかと思いますが、好調でしたので、継続して新作を出す予定です。

また、企業さん向けのRename X。ロゴを入れたTシャツやパーカーといったカスタマイズウェアの準備を進めています。企業さんからのオーダーは受注生産のため、無駄も出ません。たとえば、廃棄予定の生地を使って企業パーカーを作ったことを発信することよって、CSRの側面から企業に貢献できると考えています。それによって、Rename Xの活動を皆さんに知っていただくことにもつながります。

● 一般企業の話が出ましたが、アパレル以外の企業側の意識の変化は感じられますか?

廃棄問題やサステナブルといったテーマへの関心は高まっていると思います。最近は、様々な業態の企業の方から、SDGsに対して、何か一緒に取組めないかといったお問い合わせをたくさんいただきます。もっと弊社を利用していただけるようになったらいいなと思っています。

● 差し支えない範囲で、ここ最近の業績を教えていただけますか?

3期連続黒字で、売上も1.5倍ずつ伸ばしています。また、仕入れ高も、前年比約2.7倍になりました。

取材も増えメディアに取り上げていただいていることも業績に貢献しています。Rename Xの取組みも強化していますので、今期もさらに伸ばしたいと考えています。

● 新規事業の構想等はありますか?

お伝えしている通り、今のアパレル業界の課題として、在庫の最適化が挙げられます。当然、企業としては取り組まれていると思いますが、やはり限界は。そうしたなか、たとえば、発生した余剰在庫を在庫が不足している企業にRenameとして流通する、そうした仕組みを作りたいと考えています。社内では、業界全体の在庫シェアリング構想と呼んでいます。ブランド名そのままだと抵抗があるかもしれませんが、Renameであれば、アパレルメーカーやブランドの枠を超えられる、Renameだからこそ可能な仕組みであると思います。

● 最後に、Rename事業を通して、目指す未来を教えてください。

以前から社内では、私たちの取組みがSDGsのモデルケースになればと話しています。私たちは、少人数の会社で、やっていることはタグを付け替えて再販するという極めてシンプルなことです。特別なテクノロジーを使っているわけでもありません。しかし、多少なりとも社会に影響を与えることができていると感じています。つまり、少人数の会社で特別なことをしなくても、社会課題の解決に貢献できることはあるということです。そうしたことを発信することで、企業や個人が自分もできそうだと感じ、社会全体が盛り上がればと思います。

私たちだけでの努力で、アパレル在庫の課題は到底解決できませんし、社会を変えるといった、おこがましいことは言いません。業界全体で進める必要があります。できることに向き合い取組むことで、少しでも周りに影響を与え、それが拡がり良い社会になればと思っています。

今はアパレル業界にフォーカスしていますが、10年後もそれを続けているかは、私たちも分かりません。弊社は、「ディスカバリー・オブ・シングス」 つまり、物事の再発見というスローガンを掲げています。ゼロからモノを作るというよりは、今あるものに気付きや価値を見出して発信していきます。世の中には、服に限らず、視点を変えることによって新たな価値が生まれるモノがたくさんあるはずです。服以外にも、様々な分野で取組むことができれば、社会にも貢献できると考えています。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月メンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長、2022年度からは、アースデイジャパンネットワークの共同代表を務める。

※この記事の情報は2020年03月05日メンバーズコラム掲載当時のものです

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