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「健康で健全な社会作りのため製薬会社として気候変動にも取り組む」 小野薬品工業:Social Good Company #54

※この記事の情報は2020年11月26日メンバーズコラム掲載当時のものです

創業300年以上の歴史を誇る製薬会社が掲げる企業理念は、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」。

製薬会社がなぜ気候変動対策に積極的取り組むのか?今回は小野薬品工業のおふたりにインタビューの機会をいただきました。

  • 人々の健全な生活を守るため製薬会社として気候変動問題にも取り組む

  • RE100への参加等、気候変動への対応により機関投資家の評価も高まる

  • 製薬業界での環境リーディングカンパニーを目指す

<インタビューにご協力いただいた方々>
小野薬品工業株式会社
● 常務執行役員コーポレートコミュニケーション統括部長 兼 広報部長
谷 幸雄 さま(右)
● コーポレートコミュニケーション統括部 CSR推進室長
伊関 勉 さま(左)
<プロフィール>
● 
谷 幸雄 さま
1982年入社。営業、健康保険組合、総務部、広報部を経て、2020年3月より現職。小野薬品の企業価値向上を目指し、社内外とのコミュニケーションの推進に取り組んでいる。
● 伊関 勉 さま
1990年入社。MR、営業本部スタッフ、広報部を経て、2020年3月より現職。小野薬品の中長期環境ビジョン「ECO VISION 2020」の達成に向け、関係部署と共に取り組みを進めている。

● 製薬会社として、気候変動対策にも積極的に取り組んでいます。

私たちは、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、いまだ満たされない医療ニーズに応えるために、真に患者さんのためになる革新的な新薬の創製に日々取り組んでいます。

一方で、国際社会においては、最近、異常気象が増加している状況もあり、地球温暖化の影響が年々大きくなっています。国内においても、毎年のように豪雨による災害が起き、人々の健全な生活が脅かされている状況になっています。

世界の国々がパリ協定に合意するなかで、私たちも将来のあるべき姿を考え、昨年、2050年に向けた中長期環境ビジョン「ECO VISION 2050」を策定しました。脱炭素社会の実現をマテリアリティの1つに定めて、温室効果ガスの排出量を2050年には、スコープ1、2でゼロに、スコープ3で60%削減(2017年度比)することを目標としています。こうした削減目標は、SBT(Science Based Targets initiative)からも1.5℃目標として承認されています。

弊社は、革新的な医薬品を通して、健康で健全な社会作りを推進するとともに、製薬業界における環境リーディングカンパニーを目指して進めています。

小野薬品工業 Webサイトより

● 気候変動対策は製薬会社として行う、健康で健全な社会作りと共通しているということですね。

製薬会社の使命は医薬品の研究開発により、世の中に貢献することです。2014年には、がん免疫治療薬である抗PD-1抗体を世界に先駆けて開発・上市しましたが、このことが持続可能な社会を考える1つのきっかけとなりました。新薬を創ることだけではなく、将来的にも健全な社会を持続させるためには、環境にも積極的に取り組んでいく必要があると考えています。

● 国内の製薬会社として現時点で唯一、RE100にも参加しています。

環境への取り組みに関しては、製薬業界のリーディングカンパニーでありたいという想いを持っています。トップの強いリーダーシップに加え、CSR推進室と関連部署が連携をはかり、高い意識を持って取り組んでいます。

そうしたなか、RE100にも参加し、中長期環境ビジョンの目標達成に向けて取り組みを進めています。

● 2050年に再生可能エネルギー(以下、再エネ)100%の目標を掲げていますが、現在の進捗状況や今後の計画はいかがですか?

2050年に温室効果ガスの排出をゼロにするということは、事業活動で消費する電力をすべて再生可能エネルギーへ転換する必要があります。

私たちの取り組みの柱は、次の3点です。

1つ目は、エネルギーの消費量そのものを減らすことに取り組んでいます。2つ目は、再エネを積極的に導入しています。太陽光発電は、すでに、2003年度に本社ビルへ導入しています。2015年度には研究所で、2017年度には都内の事業所に導入し運用しています。3つ目は、J-クレジット制度やグリーン電力証書の購入です。

水無瀬研究所 太陽光発電

● 再エネ100%実現に向けて、現在はどのような課題がありますか?

現状、再エネ導入にはコストがかかります。また、スコープ1の削減はさらに取り組みを進める必要があります。

製薬会社の工場においては、蒸気を発生させるために多くのガスを必要としますので、都市ガスを減らす努力も必要です。将来的には、温室効果ガス排出ゼロの都市ガスが開発されることを期待しています。

● 製薬工場のエネルギーを再エネの電力でカバーすることは難しいということですか?

ヒートポンプの技術も進んでいますが、現在、質の高い安定した蒸気を作るには、ガスに頼る必要があります。新しい技術の情報収集のため、常にアンテナをはり良いものを取り入れながら、進めていきたいと考えています。

● 製薬会社として、環境や再エネ導入の積極的な取り組みを進めることで、ビジネスでの成果や企業価値の向上につながることはありましたか?

現時点で事業に何か直接的な影響をおよぼすというところまでは至っていません。しかし、RE100に参加したことで、再エネに関する情報提供や提案をいただくケースが非常に増えました。

冒頭でも申し上げました通り、気候変動への対応は、私たちの生活だけでなく、事業にも大きな影響をおよぼしかねないと考えていますので、これからもしっかりと取り組む必要があると考えています。

● こうした取り組みに対する社内浸透やインナーブランディングの観点からはいかがですか?

社内浸透ということでは、今まさに取り組みを進めているところです。環境や再エネに関する取り組みは、社内イントラネットでの情報提供を進めていますし、OBを含めて、紙媒体の社内報でも積極的に情報提供をしています。

社員は、自社が環境への取り組みを積極的に進めているという認識持っていると思います。しかし、RE100やTCFD等の少し踏み込んだキーワードまで深い理解はできていないと考えています。

一方で、社外の方から、私たちのこうした取り組みに対して、高い評価をいただくことが多くなったと感じています。今後は、こうした社外の方からの声も社内に向けて発信することで、インナーブランディングにつなげて行くことができればと考えています。

● RE100への参加、SBTの承認やTCFDへの賛同等、それらの取り組みは、もっと社外へアピールする必要があると思いますし、社員の方々も誇りを持つべきだと思います。

製薬会社として、本業と気候変動との直接的なつながりが分かりにくいことが要因であると考えています。今後は主管部署として、社内浸透にも取り組んでいきたいと思います。

● 社外のステークホルダへの情報発信やコミュニケーションはいかがですか?

中長期環境ビジョンの策定や、RE100への参加、SBT承認やTCFDへの賛同等、これまでの取り組みをメディア向けのプレスリリースや、一般の方向けに、自社のWebサイトでも情報発信を進めてきました。毎年発行するコーポレートレポートやCSR報告書への記載内容の充実に加えて、最近では、自社WebサイトのCSRページも刷新しました。

また、機関投資家の方々を対象に、ESG説明会を行ったり、個人投資家の方にも定期的な会社説明会において環境への取り組みを紹介しています。

● ESG投資の観点から、投資家の方々からの評価はいかがですか?

評価していただいていると感じています。最近では、機関投資家から、ESGをテーマとしたミーティングの依頼が増えています。最近発行したコーポレートレポートでも、気候変動に関するリスクや機会を公表してしますが、高い評価をいただいています。

● 投資家は、ESGではどの分野を重視していますか?

投資家の注目点は、人材の活用やガバナンス等様々ですが、環境を重視する傾向にあります。私たちが環境対応の情報発信をしているからかもしれませんが、機関投資家の方々が環境に注目しているのは間違いありません。

● 最後に、脱炭素社会に向けてメッセージをお願いします。

温室効果ガス削減のための最新技術の動向はしっかりと追いかけて、その技術が確立された時にはいち早く導入したいと思います。そして、繰り返しになりますが、製薬業界での環境リーディングカンパニーになることを目指したいと思います。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月メンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長、2022年度からは、アースデイジャパンネットワークの共同代表を務める。

※この記事の情報は2020年11月26日メンバーズコラム掲載当時のものです

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