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「地球にやさしい」には根拠がいる(前編)

「気候変動解決に寄与」することは顧客および社会のニーズになっている

最近、「サステナブル」「地球にやさしい」といった特長が打ち出されている商品やサービスを目にする機会が増えてきたように感じます。その背景には、生活者の価値観や行動の変化があると考えられます。

2020年に環境省が実施した「気候変動に関する世論調査」(※1)において、脱炭素に取り組みたいと答えた人のうち「地球温暖化対策に取り組む企業の商品の購入やサービスの利用」にすでに取り組んでいると答えた人は15%程度にとどまりました。一方で、今後新たに取り組みたいと思うことを尋ねると、「地球温暖化対策に取り組む企業の商品の購入やサービスの利用」はほかの選択肢(節電や重ね着など)を抑えてもっとも取り組んでみたい行動に選ばれていました。

メンバーズで行った『気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識(CSVサーベイ)』調査(※2)においては、気候変動問題解決に寄与する商品やサービスを購入したいと思っているが、購入していないと答えた人の3割近くが「どの商品が該当するか分からない」と回答しています。つまり、企業が気候変動対策を行うこと、そしてそれを分かりやすく開示することは、顧客および社会のニーズであると言えるでしょう。

「地球にやさしい」の“真実性”が問われる

一方で、「SDGsに貢献」「サステナブル」「地球にやさしい」といった言葉は多様な解釈の余地があり、曖昧であるがゆえ、明確な根拠がない場合は「グリーンウォッシュ」としてかえって非難の対象となっています。イギリスの競争市場庁は「グリーン・クレイム・コード(※3)」というガイドラインを策定し、公正な環境対策および情報発信を呼び掛けるなど、欧州を中心にグリーンウォッシュへの規制がかかっています。実際に、消費者庁や広告規制局などから指摘を受ける企業も出ています。

Green Claims Code(※3)

企業による「真実性」をともなった情報開示はブランドの信用力や企業価値の向上に直結してくるといえるでしょう。

沈黙はグリーンウォッシュよりも危険だ

こうした動きを見ると、「商品サービスの特長として環境に配慮していることを紹介するメリットよりも、リスクのほうが大きいのではないか?」と、情報開示を恐れてしまうかもしれません。しかし、IKEAの最高経営責任者ジェスパー・ブローディン氏は「沈黙はグリーンウォッシュよりも危険である」と語っています(※4)。

世界全体のCO2排出量を2030年に約半減、2050年までに実質ゼロにすることを目指すなか、企業のダイナミックな気候変動対策は必要不可欠です。企業がなすべきことは、曖昧な表現でごまかすことでも、沈黙に走ることでもなく、たとえ完璧でなくても現在地を誠実に開示して、2030年、2050年までのロードマップを策定し、気候危機を回避するためのムーブメントを顧客や他企業と共創することであると思います。

では「真実性」をもって商品・サービスを紹介するとはどういうことでしょうか。その具体的な方法の1つとしてご紹介したいのが「カーボンフットプリントの明記」です。後編ではその実践例として、シューズブランドAllbirdsなどの取り組みをご紹介したいと思います。

▼ 「地球にやさしい」には根拠がいる」(後編) はこちら

※1:内閣府「気候変動に関する世論調査」(2021年3月)
※2:メンバーズ「気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査」(CSVサーベイ2022年10月)
※3:Green Claims Code
※4:Bloomberg

ライター:我有 才怜
2017年にメンバーズ新卒入社以降、社会課題解決型マーケティングや北欧流未来共創デザインFutures Designの実行支援を担当。最近の関心テーマは、「気候変動」「食」「民主主義」「コモンズ」。

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