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『コーズ・リレーテッドマーケティング』古くて新しい社会課題解決型マーケティングがもたらす価値

社会課題解決型マーケティングとして有効な手段とされている「コーズ・リレーテッドマーケティング」。商品やサービスの売上の一部を寄付するマーケティング手法で、商品やサービスの販売促進だけでなく、それらを利用する消費者にとっても購入を通して社会貢献することができるという特徴があります。

この記事では、コーズ・リレーテッドマーケティングの事例や社会的意義・有効性についてご紹介いたします。

コーズ・リレーテッドマーケティングとは?

コーズ・リレーテッドマーケティング(Cause Related Marketing)とは、商品/サービスの売上利益の一部を、社会課題解決を行うNPO/NGO等の組織に寄付し、その組織の活動内容と企業の取り組みを結びつけた訴求によって販売促進効果を狙うマーケティング・コミュニケーション手法です。寄付されたお金は、社会課題解決を行うNPO/NGOに提供されるため、社会課題解決型のマーケティング手法の1つであると言えます。

コーズ・リレーテッドマーケティングは、商品やサービスの販売促進にも役立てられるだけでなく、消費者にも商品やサービスの売上の一部が寄付されることの社会的意義を感じていただけるため、参加していただけやすいというメリットがあります。

成果を上げた「自由の女神修復プロジェクト」

コーズ・リレーテッドマーケティングの概念が世界に広がったのは、1983年、アメリカン・エキスプレスによる「自由の女神修復プロジェクト」からであると言われています。
このプロジェクトは、自由の女神像の修復基金として、カードの発行もしくは利用するごとにアメリカン・エキスプレスが1セント寄付するというプロジェクトです。この取り組みは話題を集め、結果的に170万ドルの寄付につながりました。それだけではなく、プロジェクトの期間中、カード利用は約30%増加しました。

このように、社会課題解決に貢献しながらビジネス成果にも寄与できるという特徴が、コーズ・リレーテッドマーケティングの優位性と言えるでしょう。

コーズ・リレーテッドマーケティングの優位性の源泉は?

ではなぜ、社会課題解決とビジネス成果の両軸を満たすことができるのでしょうか?その理由となる背景を2つご説明しましょう。

1つ目に、消費者市場の変化です。新型コロナウイルスの影響やSDGsの報道頻度の高まりなどで社会課題への関心は確実にあらゆる年齢層に拡がっています。そうした状況から、企業は社会課題解決とビジネス成果を両立することが重要視されるようになりました。しかし、企業と消費者のコミュニケーションが課題となって、消費者に社会課題への関心やエシカル商品への購入意向があるにもかかわらず、なかなか商品購入に至っていないという現状が下記の調査から明らかになっています。

コーズ・リレーテッドマーケティングの優位性を活かしていくためには、従来のコミュニケーションや商品/サービス訴求の在り方を見直す必要がありそうです。

▼ 気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査(CSVサーベイ2022年10月)

2つ目に、NPO/NGO への信頼度が、政府やメディアよりも高いということが挙げられます。世界最大のPR会社エデルマンは、20年前から日本をはじめ世界約30カ国で、NPO/NGO・企業・政府・メディアに対する信頼度調査を実施しています。2021年の調査結果では、NPO/NGOへの信頼度は企業よりは低い結果となりましたが、政府・メディアよりも高いことがわかりました(※1)。

つまり、NPO/NGOと共創することで、その取り組み事態の透明性や信憑性が増すことになります。企業は社会課題を解決するプロではありません。その道のプロと手を組むことで社会課題をより深く理解し、解決の仕組みを学ぶことができます。また、企業は保有するテクノロジーや所属する社員など、自社のリソースを活かしながらコレクティブインパクト(集合的な成果)で課題解決に貢献できます。さらに、社会課題解決はセンシティブな題材を取り上げることも多いため、NPO/NGOの有識者とともにプロジェクトを進めることはリスクマネジメントの観点からも有効な対策と言えます。

コーズ・リレーテッドマーケティングは企業価値向上に貢献するマーケティング手法である

コーズ・リレーテッドマーケティングは、寄付付き商品の販売以前に、企業自身に社会的大義を持つことが前提となります。そのためには、自社のミッション・ビジョン・バリューを強く意識したマーケティングにすることが成功のカギと言えるでしょう。これはコーズ・リレーテッドマーケティングの枠組みにとどまらず、CSVやSDGsの目標達成にもつながる価値創出および、企業価値向上に貢献するマーケティングとなるでしょう。

つまり、コーズ・リレーテッドマーケティングは、企業・消費者・社会により良い循環と影響をもたらす古くて新しいマーケティング手法なのです。

※1:2021 エデルマン・トラストバロメーター

ライター:倉地 栄子
カナダ政府局(NPO)にける難民・移民保護支援活動を経て、2015年にメンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトに従事。関心のあるテーマは「気候変動」「森林と農業」「地方創生」。

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