COP28がビジネス界に示すメッセージとは?メンバーズ高野が現地を訪ねて得た気づき
JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)の視察団として、メンバーズ社長の高野明彦がCOP28を視察しました。帰国後、社員(平均年齢29歳、3,000人弱のデジタルクリエイター)に向けて報告会を開催し、脱炭素社会の実現に向けた最新の取り組みや、デジタルクリエイターが果たす役割について語りました。今回は、そんなCOP28報告会で何が語られたのかご紹介いたします。
COP28は気候変動対策を加速させる重要な国際会議
気候変動に関する国際枠組みである国連気候変動枠組み条約の締約国会議であり、198か国・機関が参加する気候変動に関する最大の国際会議です。
1992年に第一回が開催され、1997年の京都議定書では先進国に法的拘束力のある数値目標が設定され、2000年以降では途上国も枠組みに参加し始め、2015年のパリ協定では世界共通の「2℃目標」が掲げられました。パリ協定で具体的な温度目標が設定されたことにより各国の政策やビジネス界も大きく動き始めています。
そして、今回のCOP28はアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開催されました。UAEは高温多湿の砂漠気候の産油国であり、気候危機の影響を受ける可能性が高い国でもあります。
COP28では初めてグローバルストックテイクが行われたことが注目されています。グローバルストックテイクとは、パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、目標達成に向けた進捗を評価する仕組みです。結果、「2030年までに世界全体で2019年比で43%、2035年までに60%削減する必要がある」と示されました。
JCLP視察団の活動
脱炭素社会の実現を目指す企業集団であるJCLPからは、企業の声をCOPに届け、国際交渉を後押しすることを目的に、代表取締役、執行役員を中心に21社26名が参加しました。
JCLPの取り組みについて詳しくは「「脱炭素社会への移行をビジネス視点で進める」 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP):Social Good Company(団体編) #45」を参照ください。
JCLP視察団は、元米気候担当大統領補佐官のジーナ・マッカーシー氏や、元WTO事務局長のパスカル・ラミー氏、世界風力会議(GWEC)洋上風力グローバル責任者のレベッカ・ウィリアム氏など世界の脱炭素をリードするルール・セッターと対話をしました。最新の潮流、彼らの取り組みを聞き、質疑応答やディスカッションを行いました。
その中で今回の報告会では高野からいくつかハイライトを紹介しました。
法的にも気候変動対策が不可欠
法律の専門家集団としての立場から気候変動に取り組むイギリスの非営利団体「ClientEarth」が日本でも活動開始を予定しています。そんなClientEarthは、近年、法的な観点から国や企業の気候対応への責任に関する考え方の整理が進んでいると話します。
重要なポイントは二つあり、一つは、気候リスクへの対処が会社の取締役の善管注意義務になるということが法的に要求される動きがあります。企業の経営層にとって気候変動は非常に重要度が高まり、それに併せてメンバーズのお客さま企業でも脱炭素化支援の需要が高まっていくことになると考えられます。
もう一つは、グリーンウォッシュに対する見方が厳しくなり、訴訟リスクも増加してきています。EUでは安易に企業のゼロエミッションやネットゼロを発言できなくなってきており、根拠のないアピールはグリーンウォッシュとして捉えられるリスクが高まってきています。広告運用やコンテンツ制作を行っているメンバーズにとっては深く考えていくべき問題であると同時に、透明性や信頼性の高い情報開示やコミュニケーションがますます求められるでしょう。
米国・欧州では脱炭素がビジネスにおいても合理的に
元米気候担当大統領補佐官のジーナ・マッカーシー氏と元WTO事務局長のパスカル・ラミー氏からは米国と欧州の政策について話がありました。
米国では、インフレ抑制法という財政政策を実施しています。これは、再エネ・EV・蓄電池などの気候対策に関わるアメリカ国内への投資を増加させ、「脱炭素化と経済合理性が一致する」ことを市場に示す、米国史上最大のインセンティブ政策です。
一方、欧州は国境炭素税(CBAM)を導入し、産業の流出を防ぎつつ、他国の脱炭素化をも促しています。課徴金負担は2026年1月開始を予定しています。メンバーズのお客さま企業も含め、日本企業も(鉄、アルミ、セメント、肥料、水素、電力業界を中心に)対応していかなければなりません。
米国と欧州、いずれにしても気候変動対策と経済政策が一体化しており、規模・スピードが桁違いで進んでいます。こうした政策動向は、企業経営のシグナルであり、企業はビジネス環境の変化をいち早く捉え、これまでの経営の在り方を転換しなくてはなりません。
COP28の視察を通して
高野は、「JCLPの視察団と5泊6日をともに行動した視察団は会社として脱炭素に力を入れている企業の方ばかりだが、まだまだ悩みは尽きない現状を感じた」と話します。まずは早く取り組めるもの、早く効果がでるものなど足元の施策から取り組んでいくことが必要です。
今回の視察で日本のヒートポンプやペロブスカイトも話題に出ましたが、日本の技術は世界から期待されており、世界の脱炭素に貢献するポテンシャルをもっています。
また、報告会の最後には、地球環境戦略研究機関(IGES)が作成した「IGES 1.5℃ロードマップ:日本の排出削減目標の野心度引き上げと豊かな社会を両立するためのアクションプラン」がCOP28の日本パビリオンのサイドイベントで紹介されたことも共有されました。これは日本が1.5度目標を達成するためのロードマップをまとめており、策定プロセスにおいてJCLPも対話に参加しました。このなかには、デジタル化による移動量の削減や生産の向上などの「デジタル化を起点とする社会経済の変化」がエネルギー消費量の減少にきわめて重要であることが示されています。
メンバーズでは2023年4月に脱炭素DXカンパニーを設立しましたが、これからさらに事業を拡大させ、日本企業の脱炭素の推進にDXで寄与していくことを目指していきます。
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