「カーボンフットプリントで環境価値を見える化し、炭素循環の重要性を問う」 サステナブル経営推進機構 :Social Good Company 特別編 #69
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「カーボンフットプリントで環境価値を見える化し、炭素循環の重要性を問う」 サステナブル経営推進機構 :Social Good Company 特別編 #69

メンバーズでは、2018年よりこれまで、Social Goodな企業や団体などを対象に、社会課題解決型のビジネスや取り組みを紹介するインタビューコンテンツを発信しています。今後は、noteコンテンツとして掲載しますので、よろしくお願いします。

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カーボンフットプリントの環境ラベルプログラムを日本で唯一提供している、サステナブル経営推進機構。日本政府のカーボンニュートラル宣言で企業はどう変わったのか?削減努力が求められる温室効果ガス排出の計測と情報発信のあるべき姿とは?今回は同機構の専務理事である壁谷氏にインタビューの機会をいただきました。

・製品ライフサイクルにおけるCO2排出量が可視化されることで、これからは製品の環境価値がより重視される
・カーボンフットプリントは、カーボンニュートラル社会を目指すうえでの有効なツールである
・ESG投資とカーボンニュートラルによって、カーボンフットプリントは改めて注目されている

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<インタビューにご協力いただいた方>
一般社団法人 サステナブル経営推進機構
代表理事/専務理事
壁谷 武久氏

<プロフィール>
元経済産業省。2007年から一般社団法人 産業環境管理協会にてLCA事業、地域・産業支援事業に従事。2019年6月、一般社団法人 サステナブル経営推進機構(SuMPO)を設立、代表理事/専務理事に就任、現在に至る。「カーボンフットプリントプログラム」の事業化や「地力型循環経済社会」の提唱のもと、地域資源を生かした豊かな地域、産業づくりのための支援事業を展開。現在は、カーボンニュートラルの実現を視野にESG、サーキュラーエコノミーなど「サステナブル経営」推進を通じた新たなビジネス創出支援のためのスキームづくりにチャレンジ中。

●SuMPOでは2030年の目標として、「カーボン価値(良好なる炭素循環)の実感できる社会」を掲げています。良好なる炭素循環、カーボン価値が実感できる社会とはどのようなものですか?

昨年10月の日本政府による2050年までのカーボンニュートラル宣言以降、私たちは会員企業の皆さんと一緒に、カーボンニュートラル社会実現に向けた政策検討会を立ち上げました。有識者の方々にもご意見をいただき、今年6月に、2030年をターゲットとするカーボンニュートラル戦略「SuMPO/カーボンニュートラルイニシアティブ」を策定、「2030年/カーボン価値(良好なる炭素循環)の実感できる社会」という目標を掲げました。

私たちが提供する最も重要な業務は、LCA(Life Cycle Assessment)と呼ぶ、製品の一生で発生する環境への負荷を評価する手法となります。そして私たちは、ISO国際規格に準拠する、製品・サービスのカーボンフットプリント(以下、CFP)という国内唯一のプログラム運営機関の役割を担っています。検討会では、改めてカーボンを起点に議論をしました。
産業革命以降、わずか200年の歴史の中で、人間は多くの温室効果ガスを排出してきました。本来であれば宇宙に放出される熱が大気中に留まり、地球温暖化を招いています。ただ、カーボンは地球温暖化の原因となる物質である一方で、地球上の大気、陸や海などに存在するあらゆる生命体に必須元素として含まれています。そして、カーボンの循環が止まれば、命も社会活動も途絶えることになります。

カーボンニュートラルとは、CO2の排出量と吸収量を中立にすることです。排出量を減らす必要があるとなれば窮屈ですが、ライフスタイルを少し変え、排出量を適切な量にする、それによって企業の経済活動のあり方も変わると考えれば、前向きに捉えることができます。

カーボンを悪いものと考えるのではなく、良好な関係で付き合っていく、そう捉える必要があります。それが、「良好なる炭素循環」であると考えています。製品の価値は、これまで機能やコストが重視されてきましたが、これからは、LCAにより数値化し見える化が可能となりますので、環境価値がより重視されることになるでしょう。そうした価値を「CFP(ライフサイクルCO2)」として見える化することで、炭素循環の重要性を実感できる社会にしていこうということです。

●日本政府によるカーボンニュートラル宣言以降の社会の変化をどのように捉えていますか?

これまで、私たちがいただく相談は、最終製品を提供する企業の方々を中心に、CO2排出量を見える化し環境への対応をアピールしたいという内容で占められていました。しかし、2019年後半から2020年の前半にかけては、ESG投資対応のため大手企業を中心に、会社全体のCO2排出量の見える化に関する相談が急激に増えました。

そして、ESGを重視する投資家が求めるのは、サプライチェーン全体での見える化の対応です。それに伴い、素材メーカーや部品メーカー、海外から資源を購入する商社や、物流や小売、リサイクルなどに関わる事業者の方々まで、問い合わせが増えています。

こうしたESG投資の流れが政府のカーボンニュートラル宣言の後押しをしたのかもしれません。政府のカーボンニュートラル宣言により、企業は会社全体でのカーボンゼロが求められます。この取り組みはサステナブルレポートへの記載ではなく、製品やサービスの提供を通してCFPを示す必要があります。最終製品に関わる事業者のみならず、上流から下流までのすべての事業者がCO2マネジメント力(排出/吸収への対応)を直接、ステークホルダーに環境価値として主張する行動が促され、多くの企業で本格的な検討がスタートしています。

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●国内で環境ラベルとしてのCFPがこれまで浸透しなかった要因はどのように考えていますか?

CFPの試行事業は、国の主導により2009年から3ヵ年実施されました。しかし、東日本大震災によって、社会の関心はCO2の排出量から電源構成へシフトしました。エネルギーの市場化が加速し、CFPの地球温暖化への関連付けや情報開示への意欲は急速にしぼみました。

本来は生活者の商品選択基準の役割を果たすのがCFPマークでした。そして、10年前のCFPの需要は、CSRの延長であったと言えます。CFPマークを商品に付与することで、地球温暖化問題に取り組む企業姿勢をアピールするという要素が強かったかもしれません。また、最終製品を提供する企業のみが主導し、素材メーカーなど上流側での取り組みが社会で認知されなかったことも、CFPが浸透しなかった要因と言えるでしょう。

●将来の脱炭素社会に向けて、CFP浸透の新たな機会が到来しました。

ここ10年間、電源構成に大きな進捗が見られない日本ですが、海外の流れに押される形でカーボンニュートラル宣言が行われました。そして、これから新しい社会を目指すうえで、CFPは社会にコミットメントし、計画的にそして着実に進めていくための有効なツールとしての需要に変化しています。そうなると、CFPの裏付けや海外でも通用することが重要となります。そういった意味では、本物のCFP社会が訪れたと言っていいでしょう。投資家や生活者を含め、CFPはカーボンニュートラル社会における共通言語化のためのツールとして発展していくでしょう。

カロリー表示が私たちの健康に貢献しているように、CFPは地球環境のバロメーターとしての役割を果たしてします。今求められるのは、CFPの正確性ではなく、生活者が普段の生活の中で、カーボンを実感することができる仕組み作りです。炭素を良好に循環させCFPを把握することで、上流から下流のどこでCO2が排出されているのかを理解できます。

CO2の排出量が見える化されることで、素材の選び方、製品の作り方や運び方まで、生活者の関心も高まる社会となるでしょう。また、企業は、スコープ3までを対象としてCO2の排出量を把握し、どう削減するかを示すことが求められます。そして、CFPは、個別の製品で他社製品と争うためのものではなく、会社全体として、中長期でのアクションを訴求するために計画的に使われるケースが増えています。これからは、「プログラム」の枠組みにとらわれず、会社単位での取り組み、つまり、包括型の算定事業として、私たちは企業の方々を応援していきます。日本政府とも協調して進めていきますが、民間と率先して進めていくことは、海外に対しても日本からのメッセージとなるのではないかと考えています。

生活者の関心の高まりに加えて、情報伝達のためのデバイスも進化し、情報把握のスピードも加速しています。試行事業開始当初は、CFPマークをどう表示するか?数値はどう表記するか?そして、CFPのロジックやその考え方をどう伝えるかに注力しました。しかし、今ではむしろ生活者がそうした情報を知りたがっています。以前と比べるとムーブメントが起きていると理解しています。ESG投資とカーボンニュートラルによって、CFPが世の中に押し出されていると言ってよいでしょう。

●海外でのCFPの浸透状況はいかがですか?

EUでは、2019年12月に「欧州グリーンディール」、2020年3月にはサーキュラーエコノミーを加速させるための新行動計画「New Circular Economy Action Plan(新循環型経済行動計画)」を発表しています。新しい行動計画の中では、CFPやLCAを活用した製品政策が進められていますが、今、まさにバッテリーから検討がスタートしています。CO2排出量の見える化や排出量の上限値の設定などが制度化されようとしています。

また、サーキュラーエコノミーの観点から、再生資源の使用量の割合を見える化し、増やそうという動きも活発化しています。カーボンニュートラルの長期的な戦略に対して、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルがこれから本格化する中で、CFPは再燃する可能性が高いと言えます。

●最後に、2050年のカーボンニュートラル社会に向けて、企業の方々へのメッセージをお願いします。

「2050年にカーボンニュートラル社会を本当に実現できると思いますか?」という質問を受ける機会が増えました。できる、できないではなく、私たちにはカーボンニュートラル社会を実現する責任があります。できない理由を探すのではなく、どうやったらできるのかを考えるべきで、すでに多くの企業はその実現に向けて動いています。

一方で、脱炭素の政府方針に対して、未だに懐疑的な意見や科学的・技術的にできない理由を挙げて反論する勢力もあります。カーボンニュートラル目標が達成できなければ、人類全体が危機的状況になるというメッセージをもっと社会全体で共有すべきです。

サステナブル経営を考える上では、実現したい将来の姿を前提とすることが重要です。そして、将来世代の皆さんに心豊かな未来へのバトンを託したいというのが私たちの想いです。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月よりメンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長を務める。

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