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「共創サステナビリティ経営と、お客さまとともに取り組む気候変動対策」丸井グループ:Social Good Company #50

※この記事の情報は2020年10月22日メンバーズコラム掲載当時のものです

「しあわせ」を実現するプラットフォーマーを自社の企業価値に掲げ、気候変動対策では、2030年に再生可能エネルギー100%という野心的な目標を設定する丸井グループ。今回は、お客さまとともに進める気候変動対策のお取り組み等、丸井グループさまにお話しをうかがいました。

  • フロントランナーとして再生可能エネルギー100%へ野心的な目標を掲げる

  • エポスカード会員向けサービスはお客さまとの共創による脱炭素社会実現への取り組み

  • 本業を通して、社会に良い選択肢をお客さまに提供する

<インタビューにご協力いただいた方々>
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株式会社丸井グループ サステナビリティ部長 
関崎 陽子 さま(右)
● 同社 サステナビリティ部 サステナビリティ担当 チーフリーダー
永井 英男 さま(左)
<プロフィール>
● 
関崎 陽子 さま
1998年入社。営業店での販売、広報室、婦人靴バイヤーを経て、金融部門でサービス商品開発、カード企画担当を務める。2005年より労働組合(マルイグループユニオン)専従役員。2017年北千住マルイ店次長、2018年より中野マルイ店長を務め、2019年4月より現職。
● 永井 英男 さま
1994年入社。営業店での販売、販売促進担当、紳士アパレルバイヤー、広報室等を経て、金融部門でクレジット・サービス商品担当を務める。2014年より総合ビルマネジメント事業のグループ会社で企画・人事担当を務め、2016年4月より現職。

● はじめに、サステナブル経営に舵を切ったきっかけを教えてください。

丸井は、創業者が家具の割賦販売によりビジネスを立ち上げました。その当時、家具や家電は高価なものでしたので、割賦販売によりお客さまが購入しやすいようにサービスを提供しました。その後、世の中が豊かになって家具や家電を比較的気軽に買うことができる時代になり、駅前の立地の訴求やファッションに注力したのが、現在の名誉会長、つまり2代目社長の時代です。

現在の社長は3代目となりますが、現在の経営にシフトしたきっかけはバブル崩壊後、貸金業法改正とリーマンショックの時期に2度の赤字を経験したことです。そうした会社の危機的な状況が、これまでのビジネスのあり方を改めて考えるきっかけになったと思っています。

これまでの若者を中心としたファッションのビジネスから、すべての人に向けたビジネスへ、またファッションからライフスタイル全般をカバーするビジネスへと取り組むきっかけになったと思います。2度の赤字を経験したことで、きちんとお客さまの声に耳を傾けビジネスができているのか、自分たちが売りたいものだけを売ってはいないか、を考えました。また、お客さまが求めているもの、丸井に期待しているものを理解したうえで商売をしていこうという声が社内で挙がり、お客さまの声を聞くことを愚直にはじめたのが、2007年の頃でした。

また、現在のサステナビリティ部は、以前CSR推進部という部署名でした。CSRと言えば、社会貢献が中心で、本業とは分けて考えるようなイメージがあり、そこに違和感があったのも事実です。

● 多くの企業が、本業とCSR部門の取り組みは、分断されているケースが多いように感じます。

丸井グループは、「本業を通じて社会貢献を行う」という考え方で取り組みを進めていましたが、世の中では、2014年~2015年頃からESGが注目されはじめました。

そして、丸井グループは2016年から「共創サステナビリティ経営」に舵を切りました。環境への配慮と社会課題の解決、ガバナンスの取り組みを、ビジネスと一体化して進めていく、未来志向の経営をしていくという考え方です。

● 「共創経営レポート」は、読みものとしても大変興味深く拝見させていただきました。

レポート作成の会議を年間40回程度開催していますが、すべて青井(代表取締役社長 代表執行役員CEO)も参加していますので、トップの考えが凝縮された内容になっています。

● そうしたなか、日本企業として早い時期からRE100にも参加しています。また、再生可能エネルギー(以下、再エネ)100%への移行も、他企業と比較して2030年という野心的な目標を掲げています。こうした高い目標を掲げる理由を教えていただけますか?

私たちは、お客さまやお取引先、株主・投資家、社員、地域・社会といったステークホルダーに「将来世代」を加えています。地球環境を子どもたちや孫の世代に引き継ぐということであれば、その世代もステークホルダーであるはずと考え、「将来世代」を追加しています。

そうした考えが基本にあり、環境への対応をフロントランナーとして取り組んでいきたいという想いから、2030年に再生可能エネルギー100%にすることを目標として掲げました。将来、国内でも再エネの需要が増え、調達先に困ることも考えられますので、前倒しで早い時期に再エネに切り替えておくことも理由として挙げられます。今進めることはコスト増になるかもしれませんが、将来は必ず対応が必要となるという考えから取り組んでいます。経営層の強い意志は、サステナビリティを進めていくうえでとても重要ですし、担当としてもますます頑張ろうという気持ちになります。

● 再エネ100%に向けて、現在の進捗状況はいかがですか?

再エネの切り替えは、2018年にスタートしています。初年度は、新宿マルイ本館 1店舗のみの対応で再エネ率は1%程度でした。2019年度は8店舗に拡大し23%、2020年度は15店舗のほか本社施設も加え、再エネ率50%達成の見込みです。当初の計画通り進んでおり、2025年に再エネ率70%が現在の目標です。

● 再エネへの移行が順調に進んでいる要因は何ですか?

再エネの調達は、グループ企業である、マルイファシリティーズが担当しています。マルイファシリティーズの取り組みが積極的で、丸井グループが資本業務提携をしているみんな電力さまをはじめ、再エネ電力を供給してくださる電力会社さまとの共創により電力調達を進めています。

国内の電力調達事情の見通しが不透明ななか、再エネ調達には多様性が求められます。現時点では、再エネ調達に正解はないと考えていますので、試行錯誤しながら進めています。

● 海外では、サプライチェーンも含め、再エネ100%を目標に掲げる企業もあります。将来のお取り組みはどのようにお考えですか?

サプライチェーンも含めた検討もはじめていますが、私たちが直接仕入れ、販売する商品の割合はわずかです。現在の店舗の大部分はテナントさまに入っていただいていますが、テナントさまの商品の生産段階の使用電力等まで再エネを働きかけるのは今後の課題だと考えています。

しかし、マルイの店舗に入居することで、環境や社会課題を解決することができるなど、テナントさまにとってもプラスになる取り組みを考えていきたいと思っています。

● 今後は、再エネ100%を掲げるテナントさまも増えるかと思いますので、丸井さんのそうした取り組みは他社との差別化になります。

最近では、外資系企業を中心に、オフィス環境でも再エネを導入するビルへの入居を検討しているようです。2020年度は15の店舗で再エネ100%を実現する見込みですので、今後はテナントさまやお客さまにも、そうした取り組みを伝えていきたいと思いますし、新しい価値訴求の1つになると考えています。

● ESGやサステナビリティを志向するビジネス層や機関投資家などは、丸井さんのサステナビリティ経営が広く浸透する一方で、一般消費者の認知は低いと感じています。本業を通して、一般消費者対して、再エネ導入の価値訴求やコミュニケーションは、どのようにお考えですか?

投資家の方々に対しての共創サステナビリティ経営のブランド認知は高まってきたと思います。しかし、まだ一般のお客さまには伝わっていないと感じています。サステナビリティ部門はもちろん、グループ全体の課題の1つであると考えています。お客さまに、丸井のブランドとは何かを表現し伝えていくことは、私たちの宿題です。

また、環境問題や再エネのようなテーマは、お客さまには伝わりにくいと考えています。再エネ100%であることを店舗で伝えても、お客さまが意識していなければ、目にも留めていただけないでしょう。電気は目に見えるものではありませんし、一般のお客さまはその電力が再エネなのか、化石燃料由来なのかまで意識しません。

そのため、私たちはこれまで、お客さまとの共創により、再エネをどのように広げていくのかを議論してきました。みんな電力さまとのコラボレーションにより、エポスカード会員さま向けに再エネ電力をおススメするサービスを今年9月上旬からスタートしています。現在、720万人のエポスカード会員さまがいらっしゃいますので、再エネを使う選択肢があることを伝え、お客さまと一緒に、CO2の削減を進めたいと考えています。

エポスカード Webサイトより

● 自社独自の取り組みに加えて、お客さまとの共創により進めているのは素晴らしい取り組みです。

電力会社の契約を変更することは難しそう、面倒だという意識を持たれるかと思いますが、今回は検針票をスマホで撮影しその画像をメールで送ることで契約手続きを可能としています。簡単に切り替えられることをアピールして契約を増やしていきたいと思います。

また、エポスカード会員さまとともに、2024年度までに年間100万トンのCO2削減を目指すことを目標に掲げています。こうした取り組みが社会的なインパクトにつながり、お客さまに対しても、私たちの取り組みを理解していただけるきっかけになればと思っています。今後は、再エネ以外でも、お客さまに対するこうした活動を進めていきたいと考えています。

● 丸井さんの強みの1つは、多くの店舗を保有していることです。今後は店舗を通して、お客さまとのコミュニケーションも積極的に進められるといいですね。

みんな電力さんとの取り組みは、店舗でもアピールすることを検討しています。

今はモノがあまり売れない時代となりました。そうしたなかで、私たちがお客さまに提案できるのは、ライフスタイル全般であると考えています。世の中の私たちに対する認知をすぐに変えることは容易ではありませんが、店舗やプライベートブランド、クレジットカード等の本業を通して、今後も取り組んでいきたいと思います。

● 2030年の脱炭素社会に向け、描く未来に関してコメントをいただけますか?

丸井グループでは、「ビジネスを通じて、あらゆる二項対立を乗り越える世界を創る」という、ビジョン2050を宣言しています。

世の中には様々な二項対立があります。豊かな人とそうでない人、男性と女性、健常者と障がい者等が挙げられますが、それらに区切りがない社会を、ビジネスを通して創りたいと考えています。そして、インクルージョン(包括、包含) という言葉を大切にしています。お客さまやお取引先さま、そして、地域もインクルージョンする、そうしたことをビジネスで実現したいと思っています。

丸井グループとしてできることは、社会に良い選択肢をお客さまにご提供することです。世の中には多くの社会課題がありますが、様々な課題をお客さまと一緒に解決していく、そして、すべてのビジネスを社会課題解決型にしていくことです。

● 今後10年間で、これまでは想像もしていなかったビジネスも立ち上がっていくということですね。

その必要があると考えています。必ずお客さまが真ん中にいて、お客さまと共に歩む、そんな会社でありたいと思っています。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月メンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長、2022年度からは、アースデイジャパンネットワークの共同代表を務める。

※この記事の情報は2020年10月22日メンバーズコラム掲載当時のものです

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