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脱炭素時代の生活者意識調査|VOL.03『これからのファッションの購買行動を考える』

株式会社メンバーズでは、「社会課題の解決」と「ビジネスの成長」の両軸を実現させるCSVマーケティングを支援領域の1つとしており、2015年より『社会課題と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査(CSVサーベイ)』を実施しています。

メンバーズは特に注力する社会課題として「気候変動」を挙げており、2022年度は気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識の調査を行いました。

当「脱炭素時代の生活者意識調査」シリーズでは、CSVサーベイの調査結果について私見を交えながら、いくつかのパートに分けてお届けします。今回のテーマは「ファッション」です。

実は環境負荷が大きいファッション業界

皆さんは、ファッション業界が「世界2位の環境汚染産業」と指摘されていることをご存じでしょうか。製造にかかるエネルギー使用量やライフサイクルの短さから、ファッション業界における環境負荷は非常に大きく、国際的な課題とされています。

そのインパクトはかなりのもので、環境省によるとファッション業界は毎年930億立方メートルという、500万人のニーズを満たすのに十分な水を使用し、約50万トンものマイクロファイバー(石油300万バレルに相当)を海洋に投棄していると示しています。また、気候変動の原因である温室効果ガス(GHG)の排出量については、合計12億トンのCO2に相当し、国際航空業界と海運業界を足したものよりも多い量を排出しているとされています(参照)。

日本では、毎年1人当たり平均18枚の新しい服を購入し、12枚の服を手放しているとされていますが、服を1着つくるために水は2,368リットル(浴槽約11杯)、CO2は25.5キロ(500㎖のペットボトル約255本製造分)必要とされるため、私たちのファッションの消費が気候変動に大きな影響を与えていることがわかります。

ファッションと気候変動に関する生活者の意識

上記では、ファッションが気候変動におよぼす影響の大きさについてお伝えしました。それでは、ここから実際の生活者の意識や購買行動に着目して、調査結果をみていきましょう。

まず、気候変動への関心ですが、2022年度調査ではじめて関心層が7割を超え、生活者の気候変動に対する関心は高まっていることが明らかになりました。また、気候変動問題に配慮された商品を購入したい層も増えています。

しかし、「生活用品」「食料品」「家電・電子機器商品」「ファッション」の4つのカテゴリ別で購入意向をみると、気候変動に配慮したファッション商品の購入意向は、ほかのカテゴリに比べて低い結果となりました。実際に過去半年以内に配慮した商品を購入したかという問いに対しても、ほかのカテゴリより実際に購入した層の割合が小さい結果となっています。

サステナブルファッション消費の可能性

なぜ、ファッションでは実際に購入する人が少なかったのでしょうか。気候変動に配慮された商品を購入したいと回答したものの、半年以内に購入しなかった人を対象に、購入しなかった理由を聞いてみました。

すると、生活用品や家電・電子機器商品と同様、「どの商品が配慮されているか不明瞭だった」「どのように配慮されているか不明瞭だった」という2項目が上位にきましたが、ファッションについては、ほかのカテゴリと比べ「普段の買い物をする場所に商品がなかった」や「そもそも意識したことがなかった」の回答が多い傾向が見られました。気候変動とファッションの結びつきが一般的に生活者に伝わっていないこと、そして気候変動など環境に配慮された商品の流通がまだまだ小さいことがわかります。

しかし、一度購入したらその商品のリピート率は高く、「購入した」と回答した人を対象に「あなたは、気候変動問題に配慮している以下の商品を今後も購入したいと思いますか?」と聞いたところ、94.7%が「とてもそう思う」もしくは「どちらかといえばそう思う」と回答しました(ジャンル平均は96%)。

さらに、推奨度については他のジャンルよりも高いことが明らかになっており、商品を購入したうち、約32.8%の人が「気候変動問題に配慮している商品を購入したことを知人や友人に薦めた」と回答しています。ファッションについては、ほかカテゴリの商品と比べ趣味性が高く、こだわりを持って商品選択を行う可能性が高いからこそ、口コミで広がるポテンシャルを秘めていることがうかがえます。

< 調査結果からの示唆 >

  • ファッションが気候変動について与える影響を意識して購買をする生活者はまだ少ない。

  • その背景には、気候変動など環境に配慮された商品の流通が十分ではなく、生活者が意識しづらいという状況がある。

  • ただし、気候変動に配慮された商品を購入後、再度購入したいと考える層は96%であり、知人や友人へ薦める割合も3割と高く、マーケティング的に優良顧客である。

ファッション業界に求められる事業転換

それでは、気候変動に対して、ファッション業界はどのような取り組みを行っていけばよいのでしょうか。気候変動への取り組みとして、企業に注力してほしいことを生活者に聞いたところ、上位から「長期使用を考えた商品開発」「梱包や資材への配慮」「再生可能エネルギーの利用」「環境日配慮した原材料の使用」の順で続き、いずれもトップ2BOXでみると、7割以上の人が注力してほしいと回答しています。

まさに今後のファッション業界は、サーキュラーエコノミーが求められていると言ってよいでしょう。

サステナブル先進企業に学ぶ

最近ではこれらの背景を踏まえ、ファッション業界の気候変動などに対する取り組みも加速化し、ファッションが環境汚染が激しい業界だからこそ取り組むブランドも台頭しています。

たとえば、「ECOALF(エコアルフ)」は、ファッション業界の課題に立ち向かうべく 「地球環境を守るために服を売る」という発想で、利用する素材に着目したブランドです。自らが海のゴミを収集してそれを素材に変えるなど、すべてのアイテムを再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで作っています。「rrrrrrrrr(ナインアール)」は、大量生産・大量廃棄に着目し、最適な生産数を把握し、服を過剰に作らない販売方法を展開しています。

また、環境負荷を考えた商品づくりを行うメーカーもよく目にするようになりました。シューズメーカーである「Allbirds(オールバーズ)」は、「ビジネスの力で、気候変動を逆転させる。」ことを企業理念として掲げ、環境負荷の低減を重要視した商品開発を行っています。2022年の4月には、アディダスとコラボして、従来のランニングシューズより環境負荷を半分以下に抑えたシューズも販売されました。

また、新しい服を生産するのではなく、既存のものを循環させるような取り組みも増えてきています。ファッションブランドのBEAMSが「BEAMS COUTURE」で余った商品を一点物に変えるプロジェクトを打ち出しています。また「CLOSETtoCLOSET(クロクロ)」では、着なくなったお洋服を3着持参すると、店内のお好きなお洋服を3着まで持って帰ることができる新しいサービスを提供しています。

これからのファッション業界には、まずファッションと気候変動が密接にかかわる問題であることを生活者に伝え、気候変動に配慮した商品を提供すること、そして、どの商品がどのように気候変動に配慮しているのかを生活者にきちんと伝えることが求められます。
どの商品がどのように配慮されているかを伝えることができれば、生活者が配慮された商品を購入し、その商品を周りの人にすすめ、そうした購買行動がさらに広がるという好循環が生まれるでしょう。

※今回紹介した、2022年度のCSVサーベイ調査結果のフルレポートは、以下からダウンロードいただけます。

ライター:中村 優花
2020年メンバーズ新卒入社。大手銀行のユーザー調査の業務や、企業とNPOの共創プロジェクトに従事したのち、現在は企業の社会課題解決型マーケティング支援を担当。関心のあるテーマは、「気候変動」「自然の保全」「生物多様性」など。

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