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「CSV経営…。ワクワクしながら社長やってる?」——メンバーズ社長に聞いてみた【後編】

本記事は、脱炭素DX研究所*外部研究員を務める八木橋パチさんによる寄稿記事です。脱炭素DXカンパニーを擁するメンバーズの高野明彦社長へのインタビューを2部に分けてお届けします。前編をご覧になられていない方はぜひこちらからどうぞ。後編では、メンバーズ高野社長の「人」を大切にする経営や社長としての野望に迫ります。
*「脱炭素DXカンパニー」および「脱炭素DX研究所」とは

「人」|鎌倉投信の投資先に。「優れた企業文化、人財を活かす企業」

パチ:ところで今回、高野さんに絶対に聞きたいことがあるんです。でもその前に…。

鎌倉投信さんの「結い2101(ゆい にいいちぜろいち)」*へのご参画、おめでとうございます!!

これは本当にすごいことです。十数年にわたって鎌倉投信さんに全幅の信頼を置き、ファンを続けてきた者として、メンバーズが彼らの「いい会社」に加わったことが心から嬉しいです。ほんっとうにすごい。心から祝福します。

*鎌倉投信の投資信託「結い2101」は、お客様から託された資産の長期的な成長と、社会の持続的発展の両立のために、事業性と社会性を兼ね備える「いい会社」に投資する投資信託です。投資先の選定は徹底的な目利きにより行われ、業績だけにとらわれず、社員とその家族、取引先、顧客・消費者、地域社会、自然・環境、株主など、会社に関わるすべての人を大切にし、持続的で豊かな社会を醸成できる会社だけに投資しています。

高野:パチさんにそんなふうに喜んでいただけて嬉しいです。そして鎌倉投信さんからのご評価も大変光栄で、同時にその期待に応えなければと身の引き締まる思いです。

パチ:いや本当にすごい。鎌倉投信さんの月次運用報告資料(「結いだより」)が家に郵送されてきているのですが、メンバーズのロゴと高野さんの写真が掲載されているのを目にして、思わず「マジかー!」と声をあげてしまいました。「どうしたの?」とパートナーにびっくりされました(笑)。

ただ一方で、鎌倉投信さんの投資先に選ばれるということは、その目利きにかなうだけの「いい会社」であり続けることを宣言するようなものです。聞きたいことというのは、嬉しい反面、相当なプレッシャーというか、覚悟もあったのではないかと思うのですが。

高野:覚悟…それは考えたことなかったですね。でも、たしかにそうかもしれません。

鎌倉投信さんとは以前からつながりはあったんですが、投資先として改めてお考えいただけるという話になり、あのすてきな鎌倉の古民家の本社に私も伺い、いろいろお話しさせてもらいました。

ちょうど、メンバーズの株価も底に近いタイミングで、短期的なリターンを求める株主さまたちが離れていくであろうことは分かっていましたし、メンバーズの本質的なバリューを理解してくれる「応援投資」をしていただける相手を探していたところでしたから、お話自体とてもありがたいものでした。

対面でお話しするパチさんと高野社長

パチ:古民家ではどんな話をされたんですか?

高野:背伸びしたかっこいい話は一切せず、ありのままを、ありのままにお話しさせていただいた感じです。

業績は良くありませんでしたが、そんななかでも、自分たちの本質的な価値がまったく損なわれていないことと、ここから再び回復することには自信がありましたから。

もちろん、成長に向けて大きな期待を寄せていただいているからこその投資であることは重々理解しているつもりです。ただやはり、投資があろうとなかろうと、CSVという本業を通じた社会課題解決の取り組みや、社員の幸せを中心に置いた経営になんら変化があるわけではありません。それは基本戦略ですから。

そこをぶらす気は皆無ですし、ぶれるとも思っていません。

パチ:インタビュー後、決定・発表まではどれくらいの期間がかかったんですか?

高野:私がインタビューを受けたのは1年半ほど前だったかと思います。そのときに「社員にもインタビューしたい」と言われて、パチさんにも懇意にしていただいている脱炭素DX研究所の我有さんと、それからもう1人彼女と同期の社員がインタビューを受けていました。でも、いったいどんな話が行われたのか、中身についてはまったく知らないんです。

パチ:鎌倉投信の「いい会社」の分類は、「人・共生・匠」の3つに分かれていますよね。メンバーズは「人|優れた企業文化を持ち、人財を活かす企業」として選ばれています。

この「人」って、3つの中で実は1番移ろいやすいものじゃないだろうかと思うんです。技術力やオペレーションの巧みさなどは、一度確立したらすぐに失うものではありません。でも人の素晴らしさや企業文化は、一つの出来事でガラガラと崩れていきかねない…。

つまり、メンバーズは、そうしたことのない、芯の通った優れた企業文化と人が輝く職場であると認められたわけです。改めて、心からおめでとうございます。素晴らしい!

高野:ありがとうございます。

社会に対して価値を創出しそれを提供していくことは、人を通じて行われるものだと思います。ですから、人を大切にする、社員を大切にすることはこれからも変わりません。それが軽んじられることは決してしません。

そもそも、社員のエンゲージメントやモチベーションが下がっていったら仕事の成果は上がりませんよね。それは常に意識し、理解して行動しています。

【鎌倉投信の視点】(鎌倉投信ホームページより)

鎌倉投信では「人」のテーマでメンバーズに投資しました。同社の競争力の源泉は高度な専門性を持ったデジタルクリエイターです。同社の採用基準では、ミッション・ビジョン・コアバリューに対する共感度が最も重要視され、CSV経営に共感した人財が集まっています。メンバーズの社名の由来は、「MEMBERSHIP(組織に対する参加意識、全員参加型経営)」です。これからも同社の人財が主体性を持って会社を牽引し、顧客とともに、「社会課題の解決」と「利益創出」を同時に実現する「共通価値の創造」を推進し続けることを期待しています。

社長としての野望|CSV経営が最も企業価値を高めることを証明したい

パチ:高野さんがこれだけは譲れないもの、絶対に死守すると決めているものってありますか?

高野:う〜ん…私がなんのために社長をやっているかと言えば、社会に対してでっかく貢献するためです。そのために社長に就任しましたし、それをやり続けると決めています。ですから、そこを目指さずに経済的成長だけを目指す気はさらさらありません。

「経済的成長」を使って、社会へでっかく貢献しようとし続けること——。そこは譲れないですね。

パチ:たとえばですが、「社会にでっかく寄与するために社員はしばらく我慢してくれ。1年間は何も言わずに黙ってやってくれ」とかはあり得ますか? これはちょっと意地悪な質問かな…

高野:自分の野望のために社員を、あるいは誰かを犠牲にするようなやり方を取る気はまったくないです。そういう構造を社会からなくしたいからメンバーズという会社の社長をやっています。

基本的に、真面目に頑張っている人は、みんな報われてほしいし、幸せになってほしいんですよ。ただ「経営を成り立たせるためにボーナスはちょっと辛抱してくれ」なんてことが絶対にないとは言い切れないです。もちろん、そんなことが起きないようにするつもりですが。

パチ:もしかしたら、高野さんの奥深くには社会に対する「怒り」のようなものも存在しているんですかね?

高野:怒りですか…。たしかに、私は誰かの犠牲の上で誰かが得するというような構造や価値観がすごく嫌いです。「アンチ既得権益」ですね。

メンバーズが気候変動という問題に取り組んでいるのも、大いにそれが関係しています。だって、気候変動問題ってそういうものじゃないですか。先進国が得をして途上国が大きな被害を被っているという構造であるとか、現役世代が利益を享受して罪のない将来世代の利益を搾取するであるとか。

そういうのがとても心地悪いんです。それを打破していく道筋を付けたい。

パチ:こちらの記事で、脱炭素DX研究所所長の我有さんが「実は『脱炭素』という言葉があまり好きじゃありません。脱するべきは炭素というより、炭素に依存している社会構造そのものだと思っています」と発言されていますよね。

脱炭素DX研究所所長・我有さんへのインタビュー記事

パチ:まさに今の話につながるなと思うんです。搾取構造を変えなければ不幸な目に遭わされる人は減らないし、社会課題は生み出され続ける。脱炭素を考えるうえで切り離せない電力供給の視点からも、「東京が地方・地域を搾取している」みたいなところもありますよね。

そして技術革新にすごく期待していて、「早晩、カーボンキャプチャー技術でCO2を減らせるようになるから、それで万事OK」と主張される方たちもいます。高野さんはこの辺りはどう見られていますか。

高野:あの手この手をフルに活用して脱炭素に立ち向かわないと、パリ協定が目指す世界の年間平均気温の上昇を1.5度、あるいは2度以内に収めることはできないと思っています。

ですから、CO2をダイレクトに減らすなどのテクノロジーという「オプション」も持ち続けるべきだと思いますし、模索を続けるべきだとは思います。

パチ:ただ、それに全面的に依存するというのは…

高野:それはないですよね。「気候変動は抑えたけれど格差は更に大きく広がりました」って、そんな話じゃ意味はないです。それで良いわけないですよね。

仮に今この瞬間、気候問題が解決されたら日本も世界もそれで幸せになれるのか、と言ったら、そうじゃないじゃないですか。経済格差は広がり続けているし、戦争も拡大しています。

短絡的な結論に飛びつくのではなくて、何を目指してのイノベーションなのか、その目的はなんなのかというのは常に意識していたいです。

パチ:最後に、高野さんの言う「でっかく貢献する」を改めてもう少し詳しく教えてください。

高野:CSV経営こそが社会に正のインパクトを与えることであり、社会にでっかく貢献することである。CSV経営こそが、でっかい社会変革へとつながり大きなリターンをもたらすレバレッジである。——これを証明したいので、CSV経営を計画し実行しています。いわばそれこそが私がビジネスの世界に身を置き、社長をやっている理由であり「野望」です。

メンバーズは幸いにも多くの大企業クライアントに恵まれ、すてきな株主・投資家に恵まれ、優秀な多くの社員に選んでいただき、社会にはファンになっていただいているステークホルダーの皆さまがいます。こうした方々は、メンバーズに期待を寄せてくれているわけですよね。

ビジネスの現場で、CSVを実践しDXやGX・SXの成功事例を増やしていくことが、その期待に応えることだと思います。「試してみたけどうまくいかなかった…」ではなく、成功して、後に続こうという会社を増やしていけるかどうか。メンバーズにかかっている部分は少なくないと思っています。

でっかく社会が変わって、「メンバーズのおかげでいい社会になったな」と思っていただけるようになりたいですね。

ライター情報:八木橋 パチ
コラボレーション・エナジャイザーとして、日本アイ・ビー・エムを中心に、持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちとさまざまな共創活動を取材・実践・発信中。メンバーズとは未来デザイン・ワークショップやイベントの共創を2018年から定期的に行っている。合言葉は #混ぜなきゃ危険

以上、パチさんによるインタビューシリーズ第2弾はいかがでしたか?真面目で誠実に社員に向き合ってくれる高野さんですが、実はとても熱いハートの持ち主です!2025年もメンバーズ社員一同、お客さまや社会への貢献を目指して邁進いたします。次回のインタビュー記事もお楽しみに!

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