見出し画像

【事例紹介】3D都市モデルプロジェクト「PLATEAU (プラトー)」をサーキュラーエコノミーの観点から分析

さまざまな領域でDXが進む中、国土交通省によって始まった3D都市モデルプロジェクトであるPLATEAU(プラトー)が注目を集めています。
今回はこの「PLATEAU」を分析し、循環経済(サーキュラーエコノミー)に向けた新しいアイデアやアクションを考察してみましょう。分析には「※Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」というツールを使用します。

※サーキュラリティデッキについての解説記事はこちら

「PLATEAU (プラトー)」とは?

「PLATEAU」は、2020年12月に国土交通省によって始まったプロジェクトです。都市空間を3Dで再現する「3D都市モデル」の整備と活用を進めることで、まちづくりのDX化を目指します。そして、高度な都市計画の策定や都市活動の詳細なシミュレーションが可能となり、持続可能なまちづくりの実現が期待されます。

現在では、主にまちづくりにおける環境施策が進められており、ヒートアイランド現象の軽減、効率的な太陽光発電の導入に向けた取り組みなどがあります。

3D都市モデルを活用した熱流体シミュレーション(参照:https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc23-25/)

「PLATEAU (プラトー)」がもたらす効果・影響

「PLATEAU」は、GIS(地理情報システム)の概念も包含したプロジェクトです。日本各地の3D都市モデルデータをオープンにし、標準化されたフォーマットで記述しています。これにより、開発に関する知識の共有やデータ間の連携が可能です。

具体的には、建物や街路の3次元形状をCGモデルで再現し、それに名称や用途、建設年などの情報を付与します。すると、3D座標データに建築物の用途や建築年が含まれ、詳細な情報に迅速にアクセスできるのです。このように、さまざまな連携や応用が可能です。

2027年度までに約500都市の都市空間を3Dモデル化するという目標を掲げ、将来的には全国の都市の整備を目指しています。今後も整備範囲の拡大を進め、さまざまな分野での課題解決に活用される予定です。

サーキュラリティデッキで分析・分類

「PLATEAU」には、どのようなサーキュラーエコノミー的要素が含まれているのか、メンバーズが採用するサーキュラーデザインツールを用いて分析・分類してみましょう。使用するツールは「Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」です。

サーキュラリティデッキとは、5つの戦略×3つの階層で構成される51枚の戦術カードです。このツールを使用して、現状(AsIs)ー拡張性(ToBe)軸と、直接的(Direct)ー間接的(Indirect)軸で分析を試みています。

上記のサーキュラリティデッキを用いて、「PLATEAU」の事例を調査分析した結果が、以下の画像です。今回は現状(AsIs)ー拡張性(ToBe)軸に焦点を当てて、それぞれの事例分析の内容をみていきましょう。

デッキを使い「PLATEAU 」を分析

サーキュラリティデッキ 現状(AsIs)分析

以下が(AsIs)分析の結果の一例です。

NB1:環境配慮につながる選択肢を提供する
位置情報データに気象環境データや樹木データなどのあらゆるデータを連携させることで、新しい建築や交通といった都市の形を実現します。

CE2:複数企業による共創を実現する
「PLATEAU」では標準化された規格を用いることによって、あらゆる自治体や企業などとの共創を可能にします。

IP2:デジタル化・仮想化を検討する
「PLATEAU」は、3D化、可視化、データプラットフォームそのものです。都市全体の見える化を促進します。

IB3:製品の状態、場所、可用性を追跡する
「PLATEAU」を用いて、カーボンニュートラルの推進システムや、地域エネルギーマネジメントシステム、壁面太陽光発電のポテンシャル推計などの開発が進んでいます。

このように、「PLATEAU」は3D都市モデルを用いてデータを可視化することで、さまざまな自治体や企業との共創による持続可能なまちづくりを推進しています。

サーキュラリティデッキ  拡張性(ToBe)分析

では、今後「PLATEAU」がさらなる発展を遂げるためには、どのような戦略を取り入れればよいでしょうか。以下が拡張性(ToBe)分析の結果の一例です。

CE1:地域内で廃棄物から製品への循環ループを構築する
都市モデルに廃棄物・リサイクル品などの場所や量データを反映させることで、そのエリアでの廃棄物・リサイクル品の管理が最適化されます。

CE2:複数企業による共創を実現する
現時点では、自治体や企業との連携が中心です。一般ユーザーを巻き込んだビジネス展開の可能性があるでしょう。

RE4:持続可能なエコシステムの構築と維持を実現する
炭素量を算定している事業者から炭素排出量のデータを、林業や国から森林の面積などのデータを、都市モデル上に反映することで、エリア全体での炭素収支を可視化することができます。

IE5:オンラインプラットフォームによるエコシステムを運営する
人間社会をより詳細に記述できる技術であるため、人間社会と人工知能がともに依拠できる『共通基盤(=Common Ground)』の発展に寄与できます。

このように、「PLATEAU」は新たな領域の企業とコラボレーションしたり、一般ユーザーを視野に入れたビジネスを展開することで、より多くのステークホルダーが参加するプラットフォームとなるでしょう。

ビジネスの拡張性に関する考察

以上のToBe分析を元に、5つの領域における拡張性について考察してみます。

①不動産業界への拡張性

災害シミュレーション結果を不動産サイト/アプリに反映させることができれば、ユーザーは災害リスクの観点からも住まい探しを行える可能性があります。駅から離れていて人気のない土地でも、災害リスクが低いことがわかれば需要が高まると考えられます。
また、地図アプリと組み合わせて3Dモデルで案内ができれば、2次元情報からは経路が分かりにくい、駅周辺などでも迷いにくくなるでしょう。

②金融業界への拡張性

「PLATEAU」のデータを活用して居住地の災害リスクを定量化・可視化し、新しいリスク管理手法を導入できれば、災害リスクを考慮した保険商品の設計や不動産評価の精度が高まるでしょう。

③小売業界への拡張性

3D都市モデルを活用して店舗のデジタルツインを作成すれば、店舗設計や商品配置の最適化を図ることができます。そして、顧客の動線分析や在庫管理をリアルタイムで行うことで、顧客体験の向上も期待できます。

④農業への拡張性

農地のデジタルツインを作成し、農業の効率化を図ることができます。たとえば、地形、気候条件、土壌データを統合すれば、作物の成長予測や最適な作付け時期、必要な水量などを算出できます。また、地域の農産物の生産と消費を最適化するネットワークを構築することで、地産地消も促進されるでしょう。

⑤脱炭素社会の実現に向けた可能性

別の観点として、「PLATEAU」のモデルを発展させれば、炭素量の収支をエリア全体で可視化できるでしょう。たとえば、炭素量を算定している事業者から炭素排出量データを、林業や国から森林面積のデータを提供してもらい、3D都市モデルに取り込みます。そして数値によって色を変えれば、企業やエリア全体での炭素排出量の可視化が可能です。これにより、投資の判断がしやすくなる、「都市ごとの炭素削減量」という新たな指標ができ政策の可能性が広がるなど、脱炭素社会の実現に近づくことができます。

まとめ

今回は、3D都市モデルプロジェクトである「PLATEAU」について分析と考察を行いました。

「PLATEAU」の取り組みは、あらゆる都市開発の可能性を広げるだけでなく、脱炭素やサステナブルな地域社会の実現にも繋がります。特に、一般ユーザーを巻き込んだ機能や災害・環境以外の領域との掛け合わせでは、さまざまなビジネスの可能性があるでしょう。

サーキュラーエコノミーにご興味を持っていただいた皆さま、ぜひお気軽にこちらまでお問い合わせください。

ライター情報:木村 琉玖
株式会社メンバーズ CSV本部 脱炭素DX研究所所属
大学では経済経営学部に所属し、経済学や経営学を体系的に学ぶ。
大学のゼミで社会課題を学んだこと、大学外の活動で就活メディアの運営に携わったことから、社会課題×デジタルマーケティングを取り扱うメンバーズへ入社。
現在は社内の脱炭素アクションの運営に関わりつつ、サスティナブルや循環経済をテーマにした記事を執筆している。

▼この記事を読んだあなたへのおすすめ

▼ セミナー/ホワイトペーパー(無料公開)


≪ メンバーズへのお問い合わせはこちら

この記事が参加している募集

新着記事や最新のセミナー/イベント情報などをタイムリーにお知らせしています。