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「電力の民主化に向けて役割を果たすのが再エネであり私たちの会社である」みんな電力:Social Good Company #64

※この記事の情報は2021年05月24日メンバーズコラム掲載当時のものです

「顔の見える電力TM」をコンセプトに、電力の民主化を目指すみんな電力。2050年 カーボンニュートラル社会の実現に向けて、現在の日本社会の課題や電力会社として取り組むブロックチェーンを活用した社会変革などに関して、インタビューの機会をいただきました。

  • 中央集権型の電力ビジネスを分散型の民主的なビジネスに変え、その担い手となる

  • デジタル技術によって新しい電力ビジネスを創造する

  • DXに挑戦し再エネの提供を通して、生産者とつながり、お客さまと共に企業価値を高める

<インタビューにご協力いただいた方>
みんな電力 COO 専務取締役
三宅 成也 さま
<プロフィール>
名古屋大学大学院(電気工学)修了、神戸大学大学院(MBA)修了。2007年まで関西電力 原子力部門にて13年間勤務。その後、アーサー・D・リトル、KPMGコンサルティングにてコンサルタントの経験を経て、2016年よりみんな電力へ参画。小売電力事業の責任者として、ブロックチェーンP2P電力プラットフォームの開発などに取り組む。

● 他電力会社との違いやみんな電力さんの提供価値から教えていただけますか?

私たちは、生産者と利用者をつなげることが提供価値であると考えています。電力を売っているというよりも、生産者と利用者とをつなげるため、そのプラットフォームを作り、皆さんにその場を提供しています。そうした場を提供していることが私たちの価値です。再生可能エネルギー(以下、再エネ)を提供している会社のイメージを持たれていますが、従来の電力小売業の定義には当てはまりません。

事業のスタートは、「電気を選べる楽しさを提供したい」という想いからでした。創業当初から、電力を選べる自由を提供する、誰もが生産者になって生産者も豊かになる、電気を安くしたり便利にすることで、電力にイノベーションを起こすの3点をポリシーとしています。

みんな電力 Webサイトより

また、私たちはほかの小売業の電力会社の方々に、私たちが仕入れた電気を卸すこともしています。現在は、誰もが利用可能な、SaaS型のCIS(Customer Information System)を構築中です。私たちが目指す分散型電力は、いろいろな場所でいろいろな人が電気をつくることになります。それは、中央集権型の電力ビジネスが、民主的な分散型のビジネスに変わることになりますが、私たちは、それを実現するための担い手になりたいと考えています。

今後は、自治体や企業、個人が電気をつくるようになります。そうした人たちがプラットフォームに参加し、自由に電気を売れるようにする。売り手と買い手が自由につながる仕組みを構築しています。

● 日本政府も2050年のカーボンニュートラル宣言に続いて、2013年比で、2030年の温室効果ガス46%削減の目標を掲げました。目標達成には、再エネの導入比率を上げることが必要です。どのようなことが課題であると考えますか?

促進のための要因と取り除くべきハードルの2つに課題があると思っています。

促進のための課題としては、電気を使う方々の意識が大きいと思います。そうしたなか、企業の再エネへの意識は確実に高まっています。ESG投資の拡がりにより投資家の関心も高まり、すでに多くの企業の方々は経営課題として、経営者自らが率先して、私たちを選んでいただいています。

一方で、個人の意識は非常に遅れています。電気を使うことと地球環境と関係していることが結びつきにくく、わかりづらいということがその要因です。

私たちの最近の調査では、環境に配慮した商品を選びたいという人も、全体の3割程度まで占めるようになりました。若者を中心にSDGsへの関心が高まっていますが、国や私たちも含めて、その意識を今後は行動につなげていくことが必要です。私たちの取り組みをきちんと伝えることにより、その価値を理解していただけるお客さまも少しずつ増えていると感じています。再エネを選ぶことは、環境に配慮した行動であること、また、手軽に電力会社の切り替えができることをより多くの人に知ってもらえるよう、私たちも努力したいと思います。

● 個人が電力会社切り替えの行動につながらない要因はほかにどのようなことが考えられますか?

再エネを指向する新電力を選ぶことが気候変動対策にもつながる、と理解されていないことに加えて、再エネ電力会社の契約には、太陽光パネルを設置したり、工事が必要になると思っていたりすること、また電力会社を替えることで電気料金が高くなると考えているお客さまも多いと感じています。

エコバックやマイボトルを持つことよりも、再エネの電力会社に替えた方が、CO2削減に大きく貢献できることをこれからも伝えていきたいと思います。最近では、テレビCMもスタートしました。まずは会社を認知していただくこと、電力会社を替えることはCO2削減に貢献できること、簡単に切り替えができることをCMで伝えています。

みんな電力 Webサイトより

丸井グループさんとの「エポスプラン*」では、検針票をスマホで撮影し、必要な情報をオンラインで入力することで、簡単に電力会社の切り替えができることをアピールしています。

*自然エネルギー100%で電気料金の一部が森林保全に使われる、エポスカード会員向けの電力プラン。みんな電力と丸井グループにより、2020年9月よりサービス提供。

● 新電力のCMと言えば、価格メリットやお得感を訴求するCMで占められています。

そうしたメリットがこれまでの新電力会社の価値でした。しかし、私たちは価格面のメリットは一切訴求していません。そうした会社とは立ち位置が異なります。

● 一方で、国内の再エネ比率拡大には、どの様なことが求められますか?

中央集権型から分散型で電力をつくることが必要です。分散して電力をつくることは、多様な人が参加することになります。そのためには、電力の民主化はとても重要で、その役割を果たすのが再エネであり、私たちの会社であると考えています。

また、洋上風力発電や地熱発電など、日本の再エネ導入のポテンシャルはとても高く、日本の地熱発電技術は多くの国々で導入されています。日本政府もそうした情報を正しく発信すべきです。

● 政治が果たす役割は大きいですね。

まさにそうです。JCLP*のような団体に参加して提言を行うことはとても重要です。すでにメンバーズさんにはシステム開発でご協力を頂いていますが、今後は、同じJCLPの正会員として、一緒に再エネの情報発信していきましょう。

*JCLP
Japan Climate Leaders Partnership、日本気候リーダーズ・パートナーシップの略称。持続可能な脱炭素社会への移行を実現し、1.5℃目標の達成を目指す、日本独自の企業グループ。

● 社会を変えるという点では、みんな電力さんはエネルギー・イノベーション企業を標榜しています。イノベーションを起こす上でデジタルやDXが果たす役割を教えてください。

エネルギー業界のDXは遅れていると感じています。また、DXは業務系に対して語られることが多いのが現状です。しかし、DXは、単なるデジタル化ではなく、ビジネス・トランスフォーメーションである必要があります。つまり、業務改善や効率化ではなく、ビジネスを根本から変えていくことが求められますが、そうした変革にデジタルは欠かせません。

私たちは、エネルギーの供給元を分散化することにより、多数のプレーヤーが同時に取引に参加できることを目指していますが、その実現にはデジタルが必須となります。その仕組みをデジタル化、自動化して分かりやすく提供する「ENECTION 3.0」を次のビジネスの柱にしようと考えています。

みんな電力 資料より 「再エネ普及拡大プラットフォーム ENECTION 3.0」

● 新しいプラットフォームの提供により、電力の提供者と利用者をマッチングするということですね。

仕組みはとてもシンプルです。みんな電力が扱う全体の電力の発電・受電を予測し、優先順位を付けて発電者と利用者を結びつける、つまり発電した電気がどこで使われたのかを取引後にトレースする仕組みです。これまで、発電した電気がどこで使われたのかを知ることはできませんでしたので、それを把握しようということです。

あらかじめ設定された料金に従って発電者と利用者がつながることで、誰にいくら支払うのかも決まります。プラットフォームに参加する人は、こうしたルールで取引を行うことになります。そうしたトレースの仕組みを実現するため、ブロックチェーンがその役割を果たしています。

すでに企業のお客さまには、発電所を特定して電気を買っていただいています。企業にとっては、「この発電所から電気を買っている、この発電所や地域を応援している」ということが言えることになります。

● 新しいプラットフォームの提供に期待しています。さいごに2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、個人や企業の方々へのメッセージをお願いします。

人々の意識は簡単に変わりません。そういった意味では、2050年までの時間は限られています。地球温暖化対策は、1人ひとりが今すぐ行動に移さないと脱炭素社会の実現は難しいでしょう。そのためには、私たちも含めて、ビジネススタイルやライフスタイルを変える必要があります。

私たちがソーシャル・アップデートと呼んでいる考え方なのですが、みんな電力は電力会社という枠にとらわれることなく、皆さんのライフスタイルをより良いものへ変え、あらゆる社会課題を解決する会社になりたいと考えています。

再エネの促進ということでは、繰り返しになりますが、電気を使う側の意識がとても重要です。原子力や化石燃料由来の火力発電を否定するよりも、再エネの電力会社を使う人が増えるように、私たちを認知していただき、良いサービスを提供することで利用者が増える社会をつくりたいと考えています。

また、企業にとって、脱炭素社会に向けたこの転換点は大きなチャンスです。会社のあり方を考える、新しいビジネスを創るということでは、とても重要な時期です。

今後、企業が再エネを使うことは必須となるでしょう。私たちのお取引企業は、一歩先に進んでいる方々です。ほかの企業の方々も関心を持ち、そうした流れにあることを理解していただきたいと思います。再エネの提供を通して、生産者とつながり、地域への貢献を通して、企業の方々と一緒に企業価値を高めるための取り組みを進めていきます。

ライター:萩谷 衞厚
2015年5月メンバーズ入社。様々なCSV推進プロジェクトを担当、2018年よりSocial Good Companyの編集長、2022年度からは、アースデイジャパンネットワークの共同代表を務める。

※この記事の情報は2021年05月24日メンバーズコラム掲載当時のものです

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