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脱炭素経営実現に向けたアプローチ #6 関係性を考える・・Scope3削減と循環経済とDX

「Scope3削減」と「循環経済」

ここで「Scope3削減」と「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の関係性について触れようと思います。2つの間には極めて密接な関係があります。

まず、それぞれの言葉についておさらいしましょう。
Scope3とは、企業が行う業務活動やサプライチェーンにおいて発生する温室効果ガス(GHG)の排出量を指します。循環経済とは、資源の消費や廃棄物の排出を最小限に抑え、資源を循環させることで、持続可能な経済を実現する経済システムのことです。従来の経済システムでは、資源を使い捨てにしていたため自然環境への悪影響や資源の枯渇が進んでしまいました。それに対して、循環経済は「資源を効率的に利用し廃棄物を再利用することで、資源を枯渇させずに維持しながら経済成長を実現する」ことを目指しています。

下の図表をご覧ください。
Scope3の上流工程におけるGHG排出量を減らすために、あなたならばどのように考えますか?

環境省・経済産業省 「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定に関する基本ガイドライン」より作成

多くのひとは、現在調達しているモノのGHG排出量を測定し、より排出量の少ないものに変えるという考えにとらわれるかもしれません。調達する「量」はそのままで、GHG排出量という「質」を変えることに注目した施策ですね。その発想でScope3を減らすことも必要ですが、「質」だけでなく「量」を減らすための発想力が重要となってきます。

例えば、循環型の製品設計によって、廃棄物の発生を抑え、素材のリサイクルや再利用を進めることはその1つです。また、サプライチェーン全体での資源の効率的な利用によって、GHG排出量を削減することも可能でしょう。

また、リースビジネスやリサイクルビジネス、シェアリングエコノミーなども例として挙げられます。これらのビジネスモデルは、製品のライフサイクル全体を考慮し、廃棄物や排出物の「量」の削減につながるため、Scope3削減にも貢献することになります。

循環経済の考え方を取り入れたScope3削減の取り組みは、企業にとって持続可能な発展を目指すうえで重要な要素となるのです。

「Scope3削減」と「DX」

次に「Scope3削減」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」についてです。Scope3削減におけるDXの貢献度と存在意義は大きく、以下のように考えられます。

  1. データの可視化による作業効率向上
    Scope3測定時の苦労を思い出してください。この測定作業を定期的に繰り返す必要もあります。また改善具合を確認するためにも、DX技術を用いることで、サプライチェーンや商品・サービスに関する膨大なデータを収集・可視化するプロセスを構築し、作業の効率性を高めることが可能です。

  2. デジタルトランスフォーメーションによる業務プロセスの改善
    DX技術を導入することで、業務プロセスを改善し、Scope3の排出量を削減することができます。例えば、遠隔地のスタッフ同士のオンラインミーティングやデジタル文書管理によって、往来する書類の減少につながります。

  3. 新たなビジネスモデルの提供
    DX技術を活用することで、新たなビジネスモデルを提供することができます。例えば、製品・サービスのライフサイクル全体を考慮した、サステナブルなビジネスモデルの提供が可能になります。

  4. 企業間をまたいだエコインダストリアルの構築
    DX技術を活用することで、企業間でのデータの共有や協調によるエコインダストリアルの構築が可能になります。これによって、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減につながる取り組みを進めることができます。

以上のように、DX技術を活用することで、Scope3削減に向けた取り組みがより効果的かつ効率的に進めることができ、企業の持続可能な発展に貢献することができます。

■脱炭素経営実現に向けたアプローチ シリーズ

#1 脱炭素の基礎知識「GHGプロトコル」
#2 Scope3測定する場合の課題は何か
#3 Scope3を測定しない企業のリスクは何か?
#4 Scope3測定に向けた心構え
#5 Scope3測定&改善に向けたプロジェクト化
#6 関係性を考える・・Scope3削減と循環経済とDX


ライター情報

数藤雅紀
株式会社メンバーズ 脱炭素DXカンパニー
循環経済&サスティナビリティ推進 ラボ所長
ケンブリッジ大学経営大学院循環経済プログラム修了、Global Compact Network Japan サーキュラーエコノミー分科会幹事。もと山一證券。金融・デジタル・DX・循環経済を得意とする。
Note:https://note.com/suto410
Facebook:https://www.facebook.com/Sutoh/


*この記事の情報は 2023年5月メンバーズコラム掲載当時のものです。

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