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脱炭素経営実現に向けたアプローチ #5 Scope3測定&改善に向けたプロジェクト化

 「割り切って」測定に望む覚悟はできましたか?
では、具体的な測定に向けた施策についてお話しましょう。重要な施策は、次の3点です。

  1. 信頼のおける第三者機関の選定と利用

  2. プロジェクト化

  3. 人材調達と教育


1. 信頼のおける第三者機関の選定と利用

Scope3の測定に第三者機関を利用することで、企業には以下のような利点があります。

パイロット役としての安心感:
経験値のない状態でのScope3測定はかなり難易度が高いといえます。経験値の豊かな第三者機関は、貴社のScope3測定において頼りになるパイロット役となります。

信頼性の向上:
Scope3に関する排出量データの検証・妥当性の確認に独立した第三者機関を利用することで、企業はサステナビリティ報告の信頼性と確実性を高めることができます。これにより、ステークホルダーとの信頼関係を構築し、企業のレピュテーションを高めることができます。

正確性の向上:
第三者機関は、排出量を測定するための専門的な知識やツールを有していることが多く、より正確なデータを得ることができます。これにより、企業は排出量を最も大きく削減できる分野を特定し、二酸化炭素排出量の削減目標をより意欲的に設定することができます。

ベンチマークデータへのアクセス:
第三者機関は、さまざまな企業や業界のベンチマークデータにアクセスできるため、排出削減や持続可能性報告のベストプラクティスに関する貴重な知見を得ることができます。

法規制の遵守:
規制当局が排出量報告要件を満たすために、第三者機関による排出量データの検証を企業に要求する場合があります。最初の段階から信頼のおける第三者機関を活用することでその手間が省くことが可能です。企業の財務情報における税理士・会計士のような位置づけといえます。

2. プロジェクト化

Scope3測定のためのプロジェクト設計は、以下のようないくつかのステップを踏むことになります。

プロジェクト設計:
プロジェクトの範囲(境界線、排出源、関係者)を定義する。排出量を測定するために必要なデータを特定し、データ収集手順を確立する。

データ収集:
標準化された透明性の高い方法で、サプライヤー、顧客、従業員など、関連する情報源からデータを収集する。データの正確性と信頼性を確保するために、データを検証し、妥当性を確認する。

測定値算出:
社会的に認知されたGHG算定方法を用いて排出量を算出する。一貫した透明性のある換算係数と算定境界を適用する。

報告書作成:
排出源、削減機会、目標に対する実績など、排出量測定の結果を伝達する報告書を作成する。報告書が正確で、透明性が高く、利害関係者が利用しやすいものであることを確認する。

継続的な改善:
排出量削減目標の設定、改善機会の特定、長期的な排出量削減戦略の実施など、継続的な改善のための計画を策定する。

測定において、会社全体、つまり包括的な測定によりマクロ的な測定をまずは実現し、改善に向けて大きな比率を占める事業や製品に対してLCA(ライフサイクルアセスメント)に代表されるミクロ的な測定を行う必要がでてきます。

*LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品の一生を通じた環境影響を定量評価することで、自社の環境配慮設計(エコデザイン)に客観的な根拠と信頼性を与えます。サステナビリティが求められる時代に導入が期待されるイノベーティブな新技術、例えば、電気自動車、再生可能エネルギー、水素、バイオ素材等について、研究・技術開発段階から社会実装までを想定したサステナビリティ環境負荷削減への貢献量の評価を実現します。

Scope3測定のためのプロジェクト設計は複雑なプロセスになる可能性があり、専門知識とツールが必要になります。経験値が高まるまでは、Scope3の測定経験を持つ第三者機関に協力依頼することになります。ただ第三者機関に丸投げするわけにはいかず、プロジェクト推進するうえで企業スタッフの調達と教育が必要となります。

3. 人材調達と教育

Scope3の測定には、社内のさまざまな機能や部門にまたがる多様なスキルや専門知識が必要です。Scope3の測定に必要な社内人材の主なスキルには、以下のようなものがあります。

サステナビリティに関する専門知識:
持続可能性に関する問題や戦略をよく理解している人は、Scope3測定のイニシアチブを開発・実施するのに役立ちます。GHGプロトコルなどの関連するフレームワークや基準に精通し、排出削減戦略の経験もあることが望ましいといえます。

データ管理:
Scope3データの収集と管理は複雑なプロセスであるため、強力なデータ管理スキルを持つ人材が必要です。異なるデータソースやフォーマットを扱うことができ、データ分析や可視化の経験も必要です。

サプライチェーンマネジメント:
Scope3の排出は、サプライチェーンの活動に起因することが多いため、サプライチェーンマネジメントに精通した人材は、排出源の特定と排出削減戦略の実行に貢献することができます。また、サプライヤーと協力してデータを収集し、排出削減の機会を特定することも必要となります。

コミュニケーションと利害関係者の関与:
Scope3排出量のデータを伝え、ステークホルダーを巻き込むことは、信頼を築き、行動を促すために重要です。コミュニケーションとステークホルダーとのエンゲージメントのスキルが高い人は、排出量データと削減戦略を効果的に伝えるレポートやプレゼンテーションを作成し、排出量削減イニシアチブにステークホルダーにも参加を促すことが重要となります。

株式会社メンバーズからの提案

Scope3測定を進めていく施策3点に対して、株式会社メンバーズでは2023年4月に「脱炭素DXカンパニー」を創設し、企業のScope3測定・改善を支援するスタッフを派遣する体制を整えました。

また、信頼のおける第三者機関として、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)と提携しました。SuMPOは、2019年に設立された持続可能な(サステナブル)経営の推進を図ることを目的にした団体で、環境と経済を同時に実現する持続可能な経営の推進を目指し、企業や自治体などが持続可能な経営を行うための支援や認証制度の提供などを行っています。また、LCAを軸に、サステナブル経営や事業のコンサルティング業務をはじめ、LCA算定ソフトウェアMiLCA、LCA算定の元になるデータベースIDEAの開発/運用、環境ラベルプログラム「エコリーフ」を運営しており、商品やサービスに対して環境性能評価を行い、認証マークの付与を行っています。

株式会社メンバーズの脱炭素DXカンパニーの全スタッフはSuMPOのLCA基礎研修受講者です。
Scope3排出量の測定は、大規模で複雑なサプライチェーンを持つ企業にとって、複雑で時間のかかる作業となります。メンバーズの脱炭素DXカンパニーのスタッフは、貴社スタッフの一員として活動することで、企業のScope3測定を支援していきます。

■脱炭素経営実現に向けたアプローチ シリーズ

#1 脱炭素の基礎知識「GHGプロトコル」
#2 Scope3測定する場合の課題は何か
#3 Scope3を測定しない企業のリスクは何か?
#4 Scope3測定に向けた心構え
#5 Scope3測定&改善に向けたプロジェクト化
#6 関係性を考える・・Scope3削減と循環経済とDX


ライター情報

数藤雅紀
株式会社メンバーズ 脱炭素DXカンパニー
循環経済&サスティナビリティ推進 ラボ所長
ケンブリッジ大学経営大学院循環経済プログラム修了、Global Compact Network Japan サーキュラーエコノミー分科会幹事。もと山一證券。金融・デジタル・DX・循環経済を得意とする。
Note:https://note.com/suto410
Facebook:https://www.facebook.com/Sutoh/


*この記事の情報は 2023年5月メンバーズコラム掲載当時のものです。


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