【事例紹介】酒類・ワイン業界における循環型パッケージ「ecoSPIRITS」
脱炭素へ向けた活動や循環型パッケージの開発が世界中で進むなか、シンガポールの会社Proof & Companyは、酒類およびワイン業界における使い捨てガラス容器の問題に対し、再利用可能な容器である「ecoSPIRITS(エコスピリッツ)」を提供しています。
今回はこの「ecoSPIRITS」を題材に、「※Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」を使用し、現状(AsIs)とさらなる将来性(ToBe)について解説します。
※サーキュラリティデッキとは、サーキュラーエコノミーに向けた新しいアイデアやアクションを特定するフレームワークを、カードデッキにしたものです。サーキュラリティデッキについての解説記事はこちら。
「ecoSPIRITS」とは?
普段、私たちは生活の中で、ビールをはじめとする飲料の瓶を大量に使用しています。2020年には、世界で約700億本もの使い捨てのガラス製スピリッツやワインボトルが廃棄されました。この状況を打破するため、欧米では循環型パッケージシステムを導入する企業が増えています。
なかでも、Proof & Companyは、酒類およびワイン業界のサプライチェーンにおける使い捨てガラスの廃棄物を、ほぼすべて排除することを目指し、サーキュラーエコノミーにおける蒸留酒の革新的な流通サービス「ecoSPIRITS」を開発しました。
「ecoSPIRITS」のシステムと循環社会への貢献
「ecoSPIRITS」の仕組みは簡単です。
このシステムには以下のメリットが挙げられます:
①ガラスボトルの削減
「ecoTOTE」1つで1,000本のガラスボトルが不要になり、ボトル1本あたり550gの二酸化炭素排出量を節約できます。さらに、衝撃や改ざんに強く、約100サイクルにわたる再利用が可能です。
②梱包・輸送コストと炭素排出量の削減
ガラスと段ボールの廃棄物を95%削減し、包装と配送による炭素排出量を60〜90%減少させます。
「ecoSPIRITS」は2024年時点で、約3,000の会場パートナー、約200のスピリッツとワインのブランドパートナー、27カ国で市場を展開しています。具体的には、スミノフ、ゴードンズ、キャプテン・モルガンなどのブランドと提携し、クルーズ船や航空サービス向けにも循環型パッケージが導入されています。
サーキュラリティデッキで分析・分類
「ecoSPIRITS」には、どのようなサーキュラーエコノミー的要素が含まれているのか、メンバーズが採用するサーキュラーデザインツールを用いて分析・分類してみましょう。
使用するツールは「Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」です。サーキュラリティデッキとは、5つの戦略×3つの階層で構成される51枚の戦術カードです。このツールを使用して、現状(AsIs)-将来性(ToBe)軸と、直接的(Direct)-間接的(Indirect)軸で分析を試みています。
「ecoSPIRITS」の事例を、上記のサーキュラーデッキを用いて調査分析した結果が以下の画像です。
今回は、現状(AsIs)-将来性(ToBe)軸に焦点を当て、それぞれの事例分析の内容をみていきましょう。
サーキュラリティデッキ 現状(AsIs)分析
まずAsIsでは、NE1、 NB1、 NP2、SP1、SE1、CE2、CB2、CB3、IE1の戦術カードが実践されていることがわかりますね。ここでは、主要な5カードについて解説します。
サーキュラリティデッキ 将来性(ToBe)分析
今後、「ecoSPIRITS」がさらなる発展を遂げるためには、どのような戦略を取り入れればよいでしょうか。以下が将来性(ToBe)分析の結果の一例です。
ビジネスの将来性に関する考察
以上の将来性(ToBe)分析から、販売モデルの進化として「①他業界への拡張」、「②個人市場への展開」、「③スマホ連携によるカスタマイズ強化」について考察してみます。
① 他業界への拡張
CE2の要素を活用し、酒類・ワイン業界以外の大手メーカーや地域の中小企業、スタートアップとの連携を通じて、地域経済の活性化や資源の効率的な利用ができそうです。
②個人市場への展開
SP1の要素を取り入れ、消費者向けの分解・再組立が容易なデザインや、返却・再利用に対するインセンティブを導入することで、消費者を巻き込むビジネスモデルを構築することが可能になります。これにより、個人レベルでの持続可能な選択が促進され、環境負荷の低減につながります。
③スマホ連携によるカスタマイズ強化
IB1の要素を取り入れることで、ユーザーのスマホとサーバーを連携させたユーザーカスタマイズ機能や、アプリを通じたコンテンツやコミュニティ機能の導入が可能になります。
まとめ
今回ご紹介したProof & Companyの「ecoSPIRITS」、いかがでしたでしょうか?酒類・ワイン業界を超え、消費者を巻き込むサーキュラーエコノミーの挑戦として、期待が持てますね。
サーキュラーエコノミーにご興味を持っていただいた皆さま、ぜひお気軽にこちらまでお問い合わせください。
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