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【事例紹介】もしコップまで食べられたなら?:丸ごと食べられるエコ容器 「Ello Jello」

私たちの日常生活に欠かせない「プラスチック」。

便利さの裏側には、環境問題という深刻な影が潜んでいます。海洋に流れ込むプラスチックごみは、海洋生物や生態系に悪影響を及ぼし、地球温暖化の一因ともなっています。

しかし近年、そんな現状への対策として、Evoware(イーヴォウェア)が開発した食べることができるコップ「Ello Jello(エロジェロ)」が注目されています。

もし一時的に使用されるプラスチックのコップが、食べられるものだったなら?

今回は、このEdible Packaging (食べられるパッケージ)の「Ello Jello」を題材に、「※Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」を使用して現状(AsIs)とさらなる将来性(ToBe)について解説します。

※サーキュラリティデッキとは、サーキュラーエコノミーに向けた新しいアイデアやアクションを特定するフレームワークを、カードデッキにしたものです。サーキュラリティデッキについての解説記事はこちら

Edible Packagingとは?

インドネシアの企業Evowareが開発したコップ「Ello Jello」は、Edible Packaging (食べられるパッケージ)として設計されていることが特徴です。

そもそもEdible Packagingとは、食品を包むために使用される包装材で、消費者が食べることができる素材で作られたものを指します。これにより、従来のプラスチック包装の代替として、環境への影響を軽減することが期待されています。

Evowareのほかにも、イギリスの「Loliware」では、グルテン・糖・遺伝子組み換え不使用の100%植物ベースで食べられるストローやカップを製造・提供しているなど、Edible Packagingは、環境問題への具体的な解決策として、世界中で注目されています。

「Ello Jello」のここが凄い

Ello Jello(参照:https://rethink-plastic.com/home/product/ello-jello-cup )

見た目は従来のプラスチックカップと変わらず、普通のカップのように使えるEvowareの「Ello Jello」。この商品の長所は主に以下の2つです。

①環境への負荷を軽減

海藻由来であることから丸ごと食べることができゴミにならず、100%生分解性のため、廃棄しても30日間以内で自然に還ります。また海藻の採取もカップの製造もインドネシアで行うため、原材料などを遠隔地から輸送する必要がなく、環境への負荷を軽減しています。

②地元の産業に貢献

この商品により、インドネシアの海藻農家たちは新たな産業ができ、収入や雇用創出に繋がった実例があるそうです。理由は、「Ello Jello」が小規模製造しやすい点にあります。Evowareは「Ello Jello」の材料となる粉末をカップの型とセットで販売しており、一定のロット数は必要なものの、個人でも「Ello Jello」を作ることが容易になっています。そのため、産業や雇用に繋げやすく、地域産業の一助となっているのです。

リサイクルではなく最初からゴミを出さず、地域経済にも貢献しているこの商品は、環境でも経済面でも持続可能なライフスタイルを後押ししています。

サーキュラリティデッキで分類・分析

サーキュラリティデッキとは

「Ello Jello」には、どのようなサーキュラーエコノミーの要素が含まれているでしょうか。メンバーズが活用しているサーキュラリティデッキを用いて分析・分類してみました。

実際にサーキュラリティデッキを用いて分析した結果が以下の画像です。今回は現状(AsIs)ー将来性(ToBe)軸に焦点を当てて、それぞれの事例分析の内容をみていきましょう。

デッキを使い「Ello Jello」を分析

サーキュラリティデッキ 現状(AsIs)分析

以下が(AsIs)分析の結果の一例です。

SP1:分解・再組立が容易なデザインにする / SB6 既製品や部品の別用途利用を目指す
可食で100%生分解性であるため、ゴミを出しません。

CP2:できる限り単一素材でデザインする
「Ello Jello」は海藻のみで構成され、複合素材は不使用。

RP3:無害な素材を使ったデザインにする
海藻は無害で水生生物の生息地を作り、CO2を吸収し、海岸線を浸食から守ります。

IE1:オンラインプラットフォームを通じて販売する
オンラインでの販売を行っており、生産量が可視化できます。

サーキュラリティデッキ 将来性(ToBe)分析

今後、「Ello Jello」をさらなる発展に繋げるために、どのような戦略を取り入れればよいでしょうか。以下が将来性(ToBe)分析の結果の一例です。

IB1:製品利用時データを活用し循環デザインに役立てる
オンラインプラットフォームで製品の利用データを収集し、生成AIを活用しながら販売数予測を行い余剰生産を防いだり、改良や新製品の開発に役立てたりすることで、持続可能なビジネスモデルを実現します。

NB3:調達の現地化を進める
「Ello Jello」を包装する箱も同地域で製造したものにすれば、現地化を進めることができます。

IE3:オンラインプラットフォームを使いノウハウを共有・共創する
他国の海藻が豊富に採集できる場所で、技術やノウハウを転用することが可能です。

SP5:アップグレード可能なデザインにする
無味無臭の現行商品から、異なる風味や形状のものにアップデートできるという選択肢を、消費者に提供することができれば、様々なシーンで使用される機会が増加します。

CE2:複数企業による共創を実現する
食品業界以外の企業や分野と連携すれば、新規ビジネスとして展開可能です。

以上のToBe分析から、日本でビジネス展開した場合の将来性について考察してみます。

日本でのビジネス将来性についての考察

日本でEdible Packagingを調査してみると、まだまだ事例数は多くありません。先ほど提示したサーキュラリティデッキ「CE2 複数企業による共創を実現する」に絞り、「Ello Jello」やその技術を用いた、日本でのビジネス将来性のあるアイデアを皆さんにご提案します。

①ペット製品業界:ペットフードやペット用おやつの包装をペットが安全に食べられるパッケージ

日本のペットフード市場規模は2024年に55億8,000万米ドルと推定されています。日本のペットフード会社と協働しながら、環境に配慮してペットフレンドリーなパッケージ製品の提供をすることで、ペットの命を守ることもできます。

②医療品業界:薬が腸まで届き薬の効能が高まるグミ状のカプセル

高齢化が進む日本において、薬の重要性は上昇しています。薬品を取り扱う会社と協働し、オブラートよりも薬の味を感じずに飲みやすく、腸まで届き薬の効能を高める商品を考案できるのではないのでしょうか。

③行政:災害時の栄養補給・ゴミ削減策

災害大国と言われる日本。食品会社や製薬会社と行政が協働し、市販の栄養機能食品と同等の栄養価を含んだ「Ello Jello」を配布することにより、避難者の水分補給と栄養補給を効率よく叶え、避難所で溢れがちなゴミも減らすことが可能かもしれません。

プラスチックカップの代替品(参照:https://x.gd/SJHtM )

まとめ

今回ご紹介したEvowareの「Ello Jello」、いかがでしたでしょうか?

環境問題に対する意識が高まる中、食べられるカップとしての機能は、私たちの生活を変え、持続可能な社会を実現できる可能性を秘めています。まずは私たち自身から、環境配慮型商品を日常で使ってみるなど、行動を変えていきたいものですね。

アイデアを通して社会課題・環境問題を解決したい企業の方、サーキュラーエコノミーにご興味を持っていただいた方は、ぜひお気軽にこちらまでお問い合わせください。

ライター情報:板橋 ニ智香
株式会社メンバーズ 脱炭素DX研究所所属
大学では地域や産学官連携の課題解決型デザインを学び、案件で実践的な経験を積む。
デジタルマーケティングとクリエイティブの力で、社会課題や企業が持つ課題を鮮やかに解決すべく、メンバーズに入社。
リスティング広告やメルマガをはじめとしたマーケティング業務に携わりながら、ロゴやアイキャッチなどのデザイン制作を担当。
関心のあるテーマ「サーキュラーデザイン」「マーケティング」

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