2050年にチョコレートが食べられなくなる?!(前編)
カカオ豆を原材料とし、忙しい毎日のなかでほっとやすらぎの時間をくれるチョコレート。今ではスーパーやコンビニなどで簡単に手に入りますが、「2050年にチョコレートが食べられなくなるかもしれない」と言われていることをご存知でしょうか。
この記事では、「カカオ2050年問題」とは何かというところから、持続可能なチョコレート生産を目指すために必要なことなどを前編と後編にわけてお届けします。
「カカオ2050年問題」とは
2013年、ピーター・レデラッハ氏らの研究で「カカオの生産拠点であるガーナとコートジボワールの294箇所のうち、2050年には89.5%の場所においてカカオの生産適応性が低下する可能性が高い」との見解が出されました(※1)。理由は菌や虫など様々確認されていますが、そのなかでも気候変動が大きな要因の1つを占めています。
カカオは「カカオベルト」という言葉がある通り、限られた生育条件のみ栽培が可能と言われています。具体的には、下記のような条件が存在します。
平均気温が最低18℃、最高32℃(平均気温約27℃)
湿度が70-80%
高度30-300m
年間降水量が1,500 - 2,500mm
土壌のpHが中性からやや酸性(pH5.5-7)
最低気温が18℃とされるのは、カカオの種子(カカオ豆)に含まれるココアバター(油分)が18℃以下になると固まってしまうという性質を持つためです。固まってしまうと樹木全体に栄養分が行き渡らなくなり、生育が難しくなります。そのため、カカオの生育には、なるべく低地で気温が一定であることが良いとされています。
2015年に採択された気候変動に対するパリ協定では、2030年までに2010年比で温室効果ガス排出量を45%削減し、世界共通の長期目標として産業革命以降の気温上昇を2℃以内に抑える目標を設定。さらに、1.5℃以内に抑える努力を追求することが明記されました。それにもかかわらず、 国連の世界気象機関(WMO)が発表した報告書(※2)には「2022年から2026年までの5年のあいだに気温上昇が1.5℃を超えてしまう可能性は50%近くある」という記載があり、チョコレート業界に衝撃が走っています。
カカオ問題には生産農家の倫理的な問題も・・・
またカカオを生産する農家に着目すると、倫理的な問題も大きな障壁となります。主に児童労働とカカオの買取り価格がその要因です。児童労働とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことを指します。
シカゴ大学の研究によると、西アフリカのコートジボワールとガーナは、世界のカカオの60%以上を生産している二大生産国ですが、2018時点でカカオ生産に関連した児童労働の割合は2008年比で14ポイント増加しました(※3)。ここにカカオ買取り価格も関わってくるのですが、生産者は小規模な農家が多くカカオ豆の買取り価格も低く抑えられており、生産者はなかなか貧困から脱却できません。そのため、結果的に子どもたちを学校に行かせることもできず、児童労働がなくならないという負のスパイラルから抜け出せない状況なのです。
チョコレート業界は、こうした多くの課題を残しています。後編では、持続可能なチョコレート生産を目指す企業の例と、私たち消費者が持つべき視点をお伝えします。
▼ 2050年にチョコレートが食べられなくなる?!(後編)はこちら
※1:Predicting the future climatic suitability for cocoa farming of the world’s leading producer countries, Ghana and Côte d’Ivoire
※2:WMO Global Annual to Decadal Climate Update for 2022–2026
※3:Assessing Progress in Reducing Child Labor in Cocoa Growing Areas of Côte d’Ivoire and Ghana
その他:日本チョコレート・カカオ協会 カカオ豆とは
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