2050年にチョコレートが食べられなくなる?!(後編)
▼ 2050年にチョコレートが食べられなくなる?!(前編)はこちら
前編では、チョコレートを作るために必要なカカオ豆について、2013年のピーター・レデラッハ氏らの研究で「カカオの生産拠点であるガーナとコートジボワールの294箇所のうち、2050年には89.5%の場所においてカカオの生産適応性が低下する可能性が高い」との見解が出されていること(※1)。
また、カカオを取り巻く問題には気候変動問題が大きな要因を占めていますが、児童労働などでカカオ生産者が負のスパイラルに陥っていることもあり、チョコレートが将来食べられなくなるかもしれないということをお伝えしました。
こうした状況に対して、後編では「カカオ2050年問題と共創による社会的価値の創出」をテーマに、自社ビジネスのステークホルダーとの共創で社会的価値を創出し課題解決を目指す2社のお取り組みを紹介します。
カカオ農家の持続可能性を追求/ネスレ
まずは、キットカットで有名なネスレのお取り組みをご紹介します。
ネスレでは、収入向上プログラムと題し、政府/NGO/その他カカオ業界関係者とともにカカオ農家の生活を向上させ、子どもたちが安全で健全な環境で学び成長できる機会を提供しています。具体的には、新たに森を開墾することで環境を破壊しないよう「アグロフォレストリー農法*」を導入しつつ、単位面積当たりの収量を上げることを支援しています。
新しい農法への移行期間中は農家世帯につき最初の2年間、最大1,000スイスフラン(約15万円)の収入をカカオの販売量に応じてではなく固定で提供します。また、通常とは異なり、家計や育児を担う農業従事者の配偶者にも報奨金を提供し、女性のエンパワーメントや子どもの就学も支援しています(※2)。
ネスレは、自社だけが利益を生み出すサプライチェーンの形態ではカカオが食べられなくなってしまうことを真摯に受け止め、カカオ農家と共創することで自社ビジネスとカカオ生産の持続可能性を追求し、社会的価値を創出しているのです。
あなたの「おいしい」を、だれかの「うれしい」に。/imperfect
続いて、チョコレートに関連して特徴的な活動を行う日本企業を紹介しましょう。
チョコレートブランド「imperfect」は、世界の食と農を取り巻く様々な社会課題を世界の不完全(imperfect)の1つと捉え、「たとえ不完全(imperfect)でも自分たちにできることから取り組み、世界と社会を少しでもよくしていこう」という想いのもと、消費者とともに社会課題の解決を目指しています。
「Do well by doing good.プロジェクト」では、商品を購入するとimperfectが展開する農家とともに世界の食と農を取り巻く社会課題の解決を目指すプロジェクトに投票することができ、もっとも多くの票を集めたプロジェクトの促進にコミットしています。
たとえば、2023年3月現在では、環境・教育・平等をテーマに、「森を再生し、地球とカカオを守ろう!」「ミツバチと共存して作物を育てる養蜂を学ぼう!」「女性たちが学びの機会を得て、活躍できる社会を!」の3つのプロジェクトが募集されています(※3)。
買い物という日常のなかでごく自然に社会課題を知ることができ、かつ投票するというアクションを体験できることで、消費者に強い印象を与え、協力を促しています。
日々の買い物に問いを立てる
私たちは、つい目に入ったパッケージや値段で商品を判断しがちですが、その商品に必ずストーリーがあります。そのストーリーが、カカオが採れなくなる未来につながってしまうのか、それともずっとチョコレートを食べられる未来を作ることにつながるのか。カカオを使った商品を見たときに、2050年問題を思い出して、どのようなストーリーでその商品が作られているのか、立ち止まって考えてみましょう。
※1:Predicting the future climatic suitability for cocoa farming of the world’s leading producer countries, Ghana and Côte d’Ivoire
※2:ネスレ プレスリリース
※3:Do well by doing good.投票プロジェクト
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