見出し画像

【事例紹介】ゴミ拾いでコーヒーが無料!サステナブルな観光を楽しむ「CopenPay(コペンペイ)」の魅力

みなさん旅行はお好きですか?観光地と言えば、京都や鎌倉ですよね。

観光客の急増は、国内への経済効果をもたらす一方で、地域の環境や住民生活に悪影響を及ぼすことがあります。そんななか、注目される成功事例がCopenPay(コペンペイ)です。「CopenPay」は、持続可能な観光モデルとして世界的な普及が期待されています。

今回はこの「CopenPay」を分析し、循環経済(サーキュラーエコノミー)に向けた新しいアイデアやアクションを考察してみます。分析には「※Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」というツールを使用します。

※サーキュラリティデッキについての解説記事はこちら

「CopenPay(コペンペイ)」とは?

近年、観光客が集中することによる騒音・ゴミ問題や、遺産・景観の破壊など、いわゆるオーバーツーリズムが問題視されています。この課題に対し、ヨーロッパ各所では罰金を科したり、禁止する政策を講じたりと様々な対策をしています。

そんな中、ポジティブな策をとって成功している事例が「CopenPay」です。

「CopenPay」は、2024年にデンマークのコペンハーゲンで生まれたプロジェクトです。観光客にゴミ拾いや環境低負担な交通網の利用、ボランティア活動などをしてもらう代わりに、無料のランチ提供や、博物館などの体験ができる特典が与えられる仕組みとなっています。このプロジェクトは、観光客と地域住民の関係を強化しながら、コペンハーゲンを持続可能な観光地としての位置付けを確立しようと試みています。

参加している自治体(コペンハーゲン内)は24以上あります。それらの自治体が第1弾(2024年7月15日から8月11日まで)で展開したプロジェクトを、カテゴリ別にすべてまとめてみました!

飲食(自転車・公共交通機関の利用)

1. 自転車でコペンハーゲンを観光するとコーヒーが無料
2. 自転車または公共交通機関で屋上テラスに来るとアルコール含む冷たい飲み物が無料
3. 自転車または公共交通機関を利用するとオーガニックビールが無料自転車または公共交通機関で屋上テラスに来るとアルコール含む冷たい飲み物が無料
4. 自転車または公共交通機関を利用するとアイスクリーム無料
5. 自転車または公共交通機関を利用して入場券を購入すると、アイスクリーム無料
6. 徒歩、自転車、地下鉄のいずれかでコペンハーゲン美術館に来館するとコーヒー 1 杯無料
7. 自転車または公共交通機関でフリーランド博物館に来場すると環境に優しいコーヒーが 1 杯無料
8. 徒歩、自転車、または公共交通機関を利用すると朝食が割引

飲食(その他)

10. 農園でボランティアをするとベジタリアンランチが無料
11. MACA博物館に来館し、マイボトルを持参するとコーヒーまたは紅茶が無料
12. 45分間指定の公園でゴミ拾いをするとコーヒーとデニッシュペストリーが無料

アクティビティ

13. 自転車または公共交通機関を利用すると電気ボートの 65 分間ツアーが無料
14. 自転車でのガイド付きツアーが無料
15. 自転車または地下鉄でコミュニケーション博物館エニグマに来場すると入場料割引
16. 徒歩または自転車で地下アートホール、「シスターネルン」に来場すると入場料無料

環境活動(清掃)

17. 特定のエリアでゴミ拾いをするとオーガニックの手作りの食事が無料18. サーフィンクラスを予約して30分間ビーチ清掃をおこなうとランチ無料19. カレン・ブリクセン博物館で庭園を1時間お手入れすると入場料無料
20. プラスチックゴミをデンマーク国立美術館に持ち込むとワークショップ体験ができる
21. 徒歩、自転車、地下鉄を利用すると1時間クルーズ体験無料(乗船中網で川清掃)

環境活動(その他)

22.自転車または公共交通機関を利用すると追加のスキー時間20分無料
23.カヤックで川のごみ収集を体験し、SNSにシェアすることでレンタル料金無料
24.持続可能な行動をとることを誓約すると、ドンキーバイク45分間乗車無料

その他のアクティビティ(有料)

25. 5kmランニングしながら現地ガイドが環境に優しい街の見どころを紹介(1人20ユーロ)
26. 船長と楽しくお話しながらゆったりとボートツアー体験(1人400デンマーククローネ)

すべてに目を通すと、下記3点が特に多い印象です。
・徒歩、自転車、公共交通機関、地下鉄のいずれかを利用すると特典がもらえる(14プロジェクト)
・コーヒー1杯無料(6プロジェクト)
・コペンハーゲンの土地を活かした川でのボート体験(4プロジェクト)

「CopenPay」公式サイト(参照:https://www.visitcopenhagen.com/copenpay)

サーキュラリティデッキの分析結果

この興味深いサービスには、どのようなサーキュラーエコノミー的要素が含まれているのでしょうか?メンバーズが採用するサーキュラーデザインを用いて分析・分類してみましょう。

使用するツールは「Circularity DECK(サーキュラリティデッキ)」です。

サーキュラリティデッキの構成(参照:https://www.members.co.jp/services/csv/circularity-deck.html)

これらの頭文字を掛け合わせた51枚の戦術カードを用いて、現状(AsIs)ー 将来性(ToBe)軸、直接的(Direct)ー 間接的(Indirect)軸で分析・分類を行います。

「CopenPay」の事例を、上記のサーキュラリティデッキを用いて分析した結果が以下の画像です。

デッキを使い「CopenPay」を分析

本記事では現状(AsIs)- 将来性(ToBe)軸に焦点を当ててご紹介します。

サーキュラリティデッキ 現状(AsIs)分析

まず、「CopenPay」の、現状(AsIs)分析の結果の一例です。

NB1:環境配慮につながる選択肢の提供
「CopenPay」はサステナブルツーリズムを選べるよう、観光客に選択肢を提供します。

CE2:複数企業による共創を実現する
「CopenPay」は、飲食店や自治体、博物館など24の自治体、企業との共創を実現しています。

IE5:オンラインプラットフォームによるエコシステムを運営する「CopenPay」は、Webサイトを使ってサステナブルツーリズムのシステムを構築しています。

「CopenPay」は公共交通機関や自転車の利用を促したり環境活動を促すことで、参加者にはインセンティブが提供されます。そのため、観光客はお得に楽しく観光しながら、現地の環境負荷を抑えることができます。

サーキュラリティデッキ 将来性(ToBe)分析

今後「CopenPay」がさらなる発展を遂げるために、どのような戦略を取れば良いでしょうか。以下が、将来性(ToBe)分析の結果の一例です。

NB1:環境配慮につながる選択肢を提供する
自転車や公共交通機関に加え、電動モビリティLUUPを増やすことでユーザーに新たな視点と選択肢を与えることができます。

RE4:持続可能なエコシステムの構築と維持を実現する
今後このプロジェクトが長期的に維持され、デンマークだけではなく他国にも広がれば、持続可能なシステムが構築され、サステナブルが促進されるのではないでしょうか。

IP3:データ取得が可能なデザインを付加する
どのくらいの人数が参加しているのか、プロジェクト別に可視化することで他の観光客の意識も高まり、サステナブルツーリズムを促進するきっかけになるのではないでしょうか。

IP2:デジタル化・仮想化を検討する
観光アプリと融合してチケットなども全てデジタル化することで紙資源削減に繋がります。そこでポイントが貯まる制度や支払いなどもできれば気軽に観光を楽しめます。

IE3:オンラインプラットフォームを使い、ノウハウを共有・共創する
元々のSNSを使用したプロジェクトはありませんが、ユーザーにSNS投稿で拡散してもらう代わりに飲食店や自治体の食事やグッズを提供するなども考えられます。

分析の考察(オーバーツーリズムの課題と日本導入案)

近年、オーバーツーリズムによるトラブルが世界的に社会問題となっています。

オーバーツーリズムの課題Top5をAIに聞いてみたところ、下記の内容が結果として出てきました。

  1. 環境への影響
    自然環境の劣化や生態系の破壊が進む。例えば、トレッキングコースの侵食や野生動物の生息地への影響。

  2. 地域住民の生活への影響
    住民が観光客による騒音や混雑、インフラの負担に悩まされ、生活の質が低下する。

  3. 安全問題
    混雑による事故やトラブルが増加し、観光客や地域住民の安全が脅かされる。

そこで、「CopenPay」のアイデアを少し変えて日本にも取り入れれば、これらの問題を解決できるかもしれません。

たとえば、神奈川県鎌倉市では、観光客が多すぎて歩道に人が溢れ、地元の小学生が車道側を歩くという問題が生じています。その問題に対して、京都市と同じ自転車の貸し出しをしてゴミ拾いや商店街のお手伝いをすることで、海外からの需要の高い、人力車の体験などが割引でできるようになるなどが考えられます。

ゴミ分別・リサイクルに力を入れている、徳島県の上勝町でも適用できると推測します。

現地にあるゼロウェイストセンター(ゴミ収集所)に出向き、ゴミの分別をボランティアで手伝うとゼロウェイストセンターに隣接されたホテルのオリジナルメニューが無料または割引というプロジェクト...なんていかがでしょうか?

このように、有名な観光地だけでなく、地方にも適用できるということが分かります。

まとめ

「CopenPay」の第1弾の結果は、ホームページによると現在分析・評価中とのことで、また来年に復活するとのことです。

観光業界全体が持続可能性を重視する中で、このプログラムは、日本にも組み込むことでオーバーツーリズムの解決の一助となるのではないでしょうか。メンバーズでは、このようにデッキを用いて課題と将来可能性を導き出し、さまざまな問題解決をサポートしています。

日本のオーバーツーリズムを抱えている自治体の皆さん、サーキュラリティデッキにご興味を持っていただいた皆さん、ご連絡お待ちしております!

詳細はお気軽にこちらまでお問い合わせください。

ライター情報:葛籠貫 華歩
株式会社メンバーズ 脱炭素DX研究所所属大学では環境問題、社会問題の基礎を総合的に学習。フェアトレードサークルで代表を務め、その活動が認められ大学側および区から受賞。ソーシャルビジネスに興味があり、メンバーズに入社。趣味はエコアクションをするとお金がたまるアプリでポイ活すること。コンテンツ発信の運営とサーキュラーエコノミー記事制作を担当。関心のあるテーマ「ソーシャルビジネス」「オーガニック」「地方創生」「貧困」

▼この記事を読んだあなたへのおすすめ

▼ セミナー/ホワイトペーパー(無料公開)


≪ メンバーズへのお問い合わせはこちら

新着記事や最新のセミナー/イベント情報などをタイムリーにお知らせしています。