【事例紹介】環境に優しい結束バンド「FibreStrap」の可能性
持続可能な製品が求められるなか、スウェーデン生まれで包装業界にて20年以上携わっていた3人により創設されたEVLR International AB社が開発した「FibreStrap(ファイバーストラップ)」が「European Green Award 2024」を受賞し、注目を集めています。この製品は、従来のプラスチックでできている結束バンドの代替品として、環境保全に貢献できると期待されています。
今回は「FibreStrap」の現状(AsIs)と将来性(To Be)について、「※Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」を使って分析します。
※サーキュラリティデッキについての解説記事はこちら。
「FibreStrap」とは?
「FibreStrap」は、85%以上が再生可能な北欧産の木繊維を使用した結束バンドです。
この製品は強度がありながらも生分解性を持ち、使用後はコンポストすることによって2,3ヶ月ほどで土に還ります。「FibreStrap」は、欧州と米国で設計・製造されており、使用されている木繊維は森林およびトレーサビリティの認証基準(FSC認証)に準拠したものを使用しています。また、木繊維でできていることから耐久性が心配される「FibreStrap」ですが、以下2つの臨床実験を経て商品化されています。
①1000時間にも及ぶ直射日光の照射
②336時間、76°の熱の耐久
さらには、1つのバンドで12kgの荷物を吊り下げることが可能のため、耐久性に優れているという一面もあります。
「FibreStrap」がもたらす効果・影響
「FibreStrap」がもたらす効果・影響は多岐にわたります。
①持続可能な選択肢を提供
「FibreStrap」は、バンド部と呼ばれる紐状の部分は99%スカンジナビア産の木材繊維から作られたクラフト紙でできています。また、固定の役割を持つヘッド部は20%が麻、30%がPBATと呼ばれるバイオ複合材料でできていることから従来のプラスチックでできた製品に比べて製造・廃棄時の環境負荷が小さいです。
②従来の製品と変わらぬ力を発揮
「FibreStrap」は、先述したように高い強度と耐久性を持っており、従来の結束バンドと比較しても機能面での差異はあまりありません。むしろ、自然に還る特性を持っていることから廃棄や焼却のコストの削減に貢献できます。
また、「FibreStrap」の普及は循環型経済への移行を加速させる一助となり、採用することで持続可能な社会の実現に向けた一歩となりうる存在です。
導入事例として、 ガラスアーティストのBaiba氏に対するアプローチを紹介します。2024年、EVLR International ABは「FibreStrap」を、Stora Ensoは完全にリサイクル可能なセルロースフォーム「Papira®」を提供しました。このコラボレーションにより、彼女の作品の輸送には従来の気泡緩衝材やプラスチックの結束バンドが不要になり、環境に配慮しながらも過剰包装や輸送中の破損のリスクも軽減されたそうです。
サーキュラリティデッキで分析・分類
「FibreStrap」には、どのようなサーキュラーエコノミー的要素が含まれているのか、「Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」を用いて分析・分類してみましょう。サーキュラリティデッキのカードは、5つの資源戦略×3つの階層で構成されます。
これらの頭文字を掛け合わせた51枚の戦術カードを用いて、現状(AsIs)ー 将来性(ToBe)軸、直接的(Direct)ー 間接的(Indirect)軸で分析・分類を行います。
現状(AsIs)ー 将来性(ToBe)軸では、「FibreStrap」の現状とさらなる企業発展につなげるために将来性の観点で分析します。直接的(Direct)ー 間接的(Indirect)軸では、その企業に対する利益が直接的か間接的かという観点で分析します。
今回は、現状(AsIs)- 将来性(ToBe)軸に焦点を当て、それぞれの事例分析の内容をみていきましょう。
「FibreStrap」の事例を、上記のサーキュラリティデッキを用いて分析した結果が以下の画像です。
サーキュラリティデッキ 現状(AsIs)分析
以下が、現状(AsIs)分析の結果の一例です。
サーキュラリティデッキ 将来性(ToBe)分析
今後、「FibreStrap」がさらなる発展を遂げるためには、どのような戦略を取り入れればよいでしょうか。以下が、将来性(ToBe)分析の結果の一例です。
ビジネスの将来性に関する考察
以上の将来性(ToBe)分析から、「①調達の現地化と地域経済の活性化」、「②複数企業による共創の可能性」、「③オンラインプラットフォームの活用」について考察してみます。
①現地での材料調達による地域経済の活性化
原材料の調達を現地化していくことは、持続可能なビジネスモデルを構築する上で重要な項目となってきます。なぜなら、地域での材料調達は、輸送による環境負荷を削減するだけではなく、土地ごとの気候に適応可能な製品の開発にも繋げることが可能であると考えられます。
② 廃棄された木材から「FibreStrap」を生み出す
林野庁によると、林地残材・間伐材は年間約800万トン発生しています。この林地残材・間伐材や使用済み木材繊維を有効活用することで、環境負荷の削減と経済的価値の創出を両立させる革新的なアプローチが可能です。この取り組みは、林業、製紙業、繊維産業、物流業など多様な分野の企業が協力し、それぞれの専門知識や技術を結集させることで実現します。そのためにオンラインプラットフォームを活用し、協業のしやすい環境作りをすることが必要になります。
これにより、資源の有効活用と環境負荷の低減という新たな付加価値を持つ製品として、ライバル企業との差別化を促進できると思います。
③さまざまな層へのアプローチ
オンラインプラットフォームを通じて「FibreStrap」を販売することは、今後の市場拡大において重要な戦略です。
現在、こちらの製品は事業者向けの販売が主となっていますが、デジタルマーケティングの活用により、多様な顧客層にアプローチし、製品の認知度向上を図ることができます。また、廃棄された木材から「FibreStrap」を生み出すためにもオンラインプラットフォームを活用してさまざまな業界と繋がりを持つ必要があります。このように、オンラインプラットフォームの活用は、「FibreStrap」にとって持続可能な成長を実現するための強力なツールとなりうるでしょう。
まとめ
今回ご紹介したEVLR International ABの「FibreStrap」、いかがでしたでしょうか?
一時的な使用にもかかわらず、大量生産・大量消費・大量廃棄が繰り返されているプラスチック製結束バンドの代替品として、名乗りをあげた「FibreStrap」が「European Green Award 2024」を受賞したことにも頷けます。
メンバーズの「9割の人が知らない循環経済」シリーズでは、今後も最新の事例・アワードを紹介していきます。
サーキュラーエコノミーにご興味を持っていただいた皆さま、ぜひお気軽にこちらまでお問い合わせください。
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