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【事例紹介】端材が“オンリーワンな製品”になる「DEL DÍA」の分析

ファッション製品をつくる際に生まれる「端材」。大量生産となれば、この端材も大量に発生してしまいます。そんななか、アメリカのアウトドアブランドである「Cotopaxi(コトパクシ)」は、端材から作った“オンリーワン”な製品ラインナップ「DEL DÍA(デルディア)」を展開しています。

今回はこの「DEL DÍA」を分析し、循環経済(サーキュラーエコノミー)に向けた新しいアイデアやアクションを考察してみましょう。分析には「※Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」というツールを使用します。

※サーキュラリティデッキについての解説記事はこちら

「DEL DÍA」とは?

「DEL DÍA」とは、サステナブルな製品デザインと社会貢献を融合させたアウトドアブランド・Cotopaxiが手がける製品ラインナップの一つです。Cotopaxiの信条である「Do Good」には「貢献」の思いが込められており、製品のライフサイクル全体にエシカルな基準を取り入れたり、収益の1%を貧困対策や地域開発に寄付したりする企業活動を行っています。

「DEL DÍA」のアイテムイメージ(参照:https://cotopaxi.jp/collections/del-dia)

「DEL DÍA」がもたらす効果・影響

「DEL DÍA」のすべての製品は、他社の大量生産で生まれた端材(リパーパス素材)を使用して製造されています。本来廃棄されるはずだった素材を再利用しているため、サーキュラーエコノミーに則った取り組みといえるでしょう。

また「Del Día」は、「工場で働く従業員が職人としての力を発揮できる製品を作りたい」というアイデアから生まれているため、アイテム一つひとつの配色はすべて職人に委ねられており、1つとして同じデザインの製品はありません。

このように、「Del Día」はエコフレンドリーかつオンリーワンなアイテムなのです。

サーキュラリティデッキで分析・分類

「DEL DÍA」には、どのようなサーキュラーエコノミーの要素が含まれているのか、「Circularity Deck(サーキュラリティデッキ)」を用いて分析・分類してみましょう。サーキュラリティデッキのカードは、5つの資源戦略×3つの階層で構成されます。

サーキュラリティデッキの構成(参照:https://www.members.co.jp/services/csv/circularity-deck.html)

これらの頭文字を掛け合わせた51枚の戦術カードを用いて、現状(AsIs)ー 将来性(ToBe)軸、直接的(Direct)ー 間接的(Indirect)軸で分析・分類を行います。

現状(AsIs)ー 将来性(ToBe)軸では、「DEL DÍA」の現状とさらなる企業発展につなげるために将来性の観点で分析します。

直接的(Direct)ー 間接的(Indirect)軸では、その企業に対する利益が直接的か間接的かという観点で分析します。

今回は、現状(AsIs)- 将来性(ToBe)軸に焦点を当て、それぞれの事例分析の内容をみていきましょう。

「DEL DÍA」の事例を、上記のサーキュラリティデッキを用いて分析した結果が以下の画像です。

デッキを使い「DEL DÍA」を分析

サーキュラリティデッキ 現状(AsIs)分析

以下が、現状(AsIs)分析の結果の一例です。

NB1:環境配慮につながる選択肢を提供する
廃棄される素材から作られた製品であるため、消費者は製品選びの中に環境配慮につながる選択肢が増えます。

SB1:既製品や部品の再利用化を目指す
他社が作った製品の端材を再利用する仕組みを確立しています。

SP4:感情的耐久性を備えたデザインにする
いくつもの端材を組み合わせた製品であるため、一つひとつがオンリーワンのデザインです。そのため、所有者に感情的耐久性をもたらしています。

CB1:廃棄品から部品や素材を再利用・販売する
他社の大量生産で生まれた高品質な端材を再利用しています。

サーキュラリティデッキ 将来性(ToBe)分析

今後、「DEL DÍA」がさらなる発展を遂げるためには、どのような戦略を取り入れればよいでしょうか。以下が、将来性(ToBe)分析の結果の一例です。

NP1:環境負荷の少ない原材料を用いるデザインにする
現時点では一般的な端材を素材としていますが、バイオマス素材やリサイクル素材などの環境に良い素材を原材料として利用できれば、さらなる炭素削減に貢献できます。

SB6:既製品や部品の別用途利用を目指す
インテリアや別のファッションアイテムにおいても、「端材からオンリーワンな製品」をテーマに、同様の取り組みができるでしょう。

SP3:標準化と互換性を考慮した設計にする
製品を構成するパーツを標準化し、交換システムを確立できれば、メンテナンスや修理が容易になるでしょう。

IB2:製品寿命に関わるデータを追跡する
交換システムを整えると、製品のパーツごとに使用年数・壊れやすさなどのデータを取得でき、さまざまな活用が見込めます。

ビジネスの将来性に関する考察

以上の将来性(ToBe)分析から、2つのビジネス展開について考察してみます。

①同社におけるビジネス展開
まず、製品を構成するパーツを側面、背面、全面などのように規定し、標準化します。そして、それぞれのパーツごとに交換できるメンテナンスシステムをサービスとして提供すれば、製品寿命が長くなり、ユーザーの買い替えを減らすことができます。

さらに、このような交換システムを整備できれば、製品のパーツごとに使用年数や壊れやすさなどのデータを取得できます。これによって、パーツの素材や強度を変えたり、同業他社にデータを販売するなどの活用が可能です。

②他業界におけるビジネス展開
「DEL DÍA」の事例を知ると、大量生産の過程で生まれた端材(リパーパス素材)を用いたビジネスの可能性をうかがうことができます。

繊維メーカーや規模の大きいファッションブランドの工場では、生産過程で多くの端材が日々生じています。このような端材を廃棄するのではなく「素材」として収集し、活用できる企業へ提供、あるいは自社でサステナブルな製品ラインナップを展開することが考えられます。

また、端材が生まれるのは、ファッションアイテムだけではありません。たとえばインテリア業界でも、製品を生産する過程で木材の端材などが生じます。これらを同じように組み合わせれば、オンリーワンなデザインのインテリアアイテムを作り出せるでしょう。

このように、他業界でも端材利用の可能性はありますが、端材の収集には当然手間やコストがかかることも事実です。それでも、「DEL DÍA」のように端材に価値を見出している企業が存在することは、今後端材の活用方法を模索する企業にとって、とても良い参考になるのではないでしょうか。

まとめ

今回ご紹介した「DEL DÍA」はいかがでしたでしょうか?

端材からオンリーワンな製品を生み出すビジネスモデルは、環境や消費者にとって有益でありながら、さまざまな領域で応用できます。今後は「DEL DÍA」以外にも、同様の事業を展開する企業が増えていくでしょう。端材を利用したサーキュラーなビジネスには、今後も目が離せません。

サーキュラーエコノミーにご興味を持っていただいた皆さま、ぜひお気軽にこちらまでお問い合わせください。

ライター情報:木村 琉玖
株式会社メンバーズ CSV本部 脱炭素DX研究所所属
大学では経済経営学部に所属し、経済学や経営学を体系的に学ぶ。
大学のゼミで社会課題を学んだこと、大学外の活動で就活メディアの運営に携わったことから、社会課題×デジタルマーケティングを取り扱うメンバーズへ入社。
現在は社内の脱炭素アクションの運営に関わりつつ、サステナブルや循環経済をテーマにした記事を執筆している。

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